第855話 上級レアイベント発生、徘徊型ボス襲来!




 上級下位ジョーカー攻略のキーアイテム、その全てが手に入った。

 ホクホクだ。

 これでダンジョン攻略がまた一歩先に進むな!


 さて、喜んでばかりもいられない。

 この55層のキーアイテムを取ったということはあいつらが来るからだ。

 ほら、『直感』が騒ぎ始めたぞ。


「ん!! 何か、来る? 『ソニャー』!」


「え!? 急にどうしたのカルア!?」


 いきなり耳をピンと立てて振り向いたかと思うと耳の後ろに手を翳し、索敵系スキル『ソニャー』を使うカルアに驚いて聞くラナ。

 カルアは『直感』持ちだ。この気配を察知したか。


「戦闘準備だ! シエラ、先頭を頼む」


「! わかったわ」


「もう、いったいなんだって言うの。ここは救済場所セーフティエリアよ!?」


 カルアの索敵の結果を待たずして俺は指示を出す。

 一気に全員の緩んだ空気が引き締まり、シエラを先頭に、ラナが後方に素早く配置に付いた。


 ラナの言うとおり隠し部屋の中はモンスターの進入できない救済場所セーフティエリアだ。だからモンスターは入ってくることはできない。

 そして俺たちもここから攻撃することはできない。救済場所セーフティエリアからの攻撃は大きくダメージが減退され、ほとんどダメージが通らなくなるからだ。


 故に、俺たちはすぐにここから外に出ることにした。


「ん、大きいの、来てる、多分ボス。うん、真っ直ぐこっち来てるっぽい」


「ボスが来てるのカルア? エリアボスなの?」


「いや、十中八九、徘徊型だな」


「徘徊型ですか!?」


 カルアの索敵により、やはりボスが近づいてきていると判明する。

 そして俺にはそれに心当たりがあった。

 間違いなく徘徊型だと確信している。


 理由はタイミングだ。

 俺たちが攻略・・に必要なお宝をゲットしたタイミングだった。

 攻略を邪魔するのは徘徊型と〈ダン活〉では決まっている。

 そしてゲーム〈ダン活〉時代もここのアイテムをゲットすると徘徊型が襲ってくるイベントがあったんだ。俺たちはこれをレアイベントと呼んでいた。


 中級ダンジョンからはレアモンスターが登場したように、上級ダンジョンではレアイベントが発生するようになる。

 内容はいくつか種類があるのだが、主にお宝に関係してボスとバトルする系統のイベントが多い。

 お宝を守護するボスに挑戦したり、逆にお宝を取ったところを襲われたりとかな。勝てばお宝をゲットし、持ち帰ることが出来る。


 今回は〈嵐ダン〉に眠る10個全ての救済アイテムをゲットしたために、怒った徘徊型が問答無用で襲い掛かってくるレアイベントだな。強制バトルになる。

 これがすごくって、普通徘徊型は下層しか行き来できないはずなのに、救済アイテムを取る順番によっては5層にあるランク1とランク2の救済アイテムを取った瞬間に上層に出現し、襲ってくることもあるのだ。故に偶然ではなく、イベント。それもレアなイベントだ。


 このレアイベントで戦うことになるボスは中々に厄介なボスが多く、危険度が高い。とはいえ〈嵐ダン〉は一番やさしいレベルなので徘徊型1体だけだ。しかも倒すと確定で〈金箱〉をドロップするので倒すことを全力で推奨する。


 だが他のダンジョンだとレアイベント推奨LVが攻略推奨LVを超えてくるので、最初は〈転移水晶〉で逃げること推奨だけどな。ランク10なんかレアイベント推奨LV上級職60とかになってくるんだよ(六ツリ開放レベル)。攻略推奨LVは29なのに。


 というわけで徘徊型ボスが襲ってきます。

 返り討ちにしてドロップの〈金箱〉も奪い去っていきましょう!


 俺たちが外へ飛び出すと枯木のような風景のフィールドの奥から、落ち葉をまき散らしながらダッシュしてくる大型のモンスターを捉えた。接触まで時間は無い。


「ん! あれ!」


「『四聖操盾しせいそうじゅん』! 『守陣形しゅじんけい四聖盾しせいたて』!」


「ラナはシエラがヘイトを取るまで待機! シエラ、あいつは弓を持ってる。遠距離攻撃してくるぞ!」


「見えてるわ!」


 ボスが落ち葉を巻き上げながら接近してくるので見えにくいが、微かに弓が見える。

 しかし、シエラ、あれ見えんの? まだ30メートルは先なんだけど。

 しっかりと盾を構えて油断なく見つめるシエラが頼もしい。


「何あれ? 2体いる?」


「いえ、あれは騎乗している、のですか? なんですかあれは?」


 ラナとエステルもそれを視界に収めるが、そのモンスターの形容しがたい姿に疑問を浮かべるだけだった。


 何しろボスは2体居た。1体はエステルの言うように何かを乗せている騎獣型。しかしその姿が異様、何しろ四足二手を持つトカゲ型モンスターだったからだ。その見た目はトカゲ版のケンタウロスとでも言おうか。

 ヤモリの手を持ち、四足で駆け、2本の手で2メートル級の槍を持っている体長4メートルを越す騎獣トカゲだった。


 そしてそれに騎乗するのはリザードマン系の戦士。

 ヤモリの体の背中に乗り、弓を持ち、すでにこちらに向けて構えている。


 俺は〈幼若竜〉を使い即『看破』を発動した。


「『看破』の結果が出たぞ。やはり徘徊型ボス、――〈リザーロス〉だ!」


 騎兵型のボスモンスター、〈リザーロス〉。

 俺たちの攻略を邪魔しに来た徘徊型ボスだった。


「シャアアアア!」


「! 『インダクションカバー』!」


 初手は〈リザーロス〉。トカゲを走らせながら矢を放った。一矢しか放っていないにも関わらず八本の矢に分裂して襲う『八矢の術』だ。

 それをシエラはすぐに『インダクションカバー』で対処する。


「先に攻撃してくるなんて。『オーラポイント』! 『シールドフォース』!」


「『回復の願い』! 『守護の大加護』! 『病魔払いの大加護』! スピード上げるわよ! 『迅速の大加護』!」


「ラナ、耐魔も頼む!」


「分かったわ! 『耐魔の大加護』!」


 シエラが少し動揺しつつもヘイトを取ると、ラナがシエラを回復し、防御力、状態異常耐性、素早さ、魔防力のバフを掛ける。


「シャアアアア!」


「『カバーシールド』!」


「遠距離攻撃! ならば接近しましょう、私は左から行きます!」


「ん! 右!」


「俺は正面からだ! 『ライトニングバースト』! 『サンダーボルト』!」


「シャアアアア!」


 相手も遠距離攻撃ならこっちも遠距離攻撃だ。


 相手の〈リザーロス〉が続いて弓矢で攻撃してくる。その威力はまるでバリスタだ。騎獣トカゲは俺たちに真っ直ぐ進んできたルートをやめて俺たちから見て左へ回り込むように走り出した。移動砲台ということだな。


 変則的ではあるが戦闘が開始され、シエラがトカゲへ向かって走る。

 エステルが落ち葉を舞い上げながら〈蒼き歯車〉を走らせ、進行方向の正面へと回り込まんとした。

 右から接近したカルアは後方から回り込む形になったな。


 俺は遠距離攻撃を発射。

〈リザーロス〉のアホみたいな威力の矢によって『ライトニングバースト』が相殺されてしまったが、本命は〈四ツリ〉である『サンダーボルト』よ。

 これは直撃して、まずボスのHPを削った。


「シャアアアアア!!」


「ね、ねえ、なんか怒ってないかしら? もう怒りモードなの?」


「なんでだろうな?」


 はて? どうしてだろうね? とすっとぼけてみるが多分俺たちが持ち帰ろうとしているレシピを取り戻そうとしているんだと思う。ちなみに怒りモードではない。

 ゲーム時代、このレアイベントで負けるとゲットした救済アイテムたちは全て奪われて、宝箱に戻ってしまう仕様だった。

 リアルではどうなるのか、ちょっと気になるが、それで全滅するわけにはいかない。


「ゼフィルス行ってきなさい――『獅子の大加護』!」


「おうよ――『ソニックソード』!」


 ラナに『獅子の大加護』を掛けてもらうと、俺は『ソニックソード』を使って突っ込んでいった。


 シエラが十分に接近することに成功し、〈リザーロス〉が弓を仕舞い、長い槍を取りだした。


 騎獣トカゲと共に二槍流(?)がシエラを襲う。


 こいつらはHPバーが一つしかないが、騎乗したモンスターまで武器を使って攻撃してくるアグレッシブ過ぎるボスなんだ。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る