第854話 55層で猫ちゃん食べられる未遂事件発生!?
復活系アイテムの需要は非常に高い。その中でも強力な上級復活アイテムの素材を落とす〈精霊樹の成樹〉をゲットした。
復活とは戦闘不能状態を復帰させ、ゼロになったHPを回復させる。
つまりはHPバリアを張る行為だ。
リアルではどれほど需要が高いか、これだけでも分かるだろう。
以前から復活系の素材を落とす〈精霊樹の苗木〉は学園がとっても欲しがっていた。これはその〈成樹〉。素材を加工出来るのは今の所ハンナだけ。
さてどうしたものかな? ふはは!
しかし、とりあえずそのことは置いておこう。
今はダンジョン探索だ!
あれから俺たちは順調に下層へと下りて行き、47、49、52階層でエリアボスを撃破した。
50層では守護型のフィールドボスもしっかり倒してある。
ただ、未だに徘徊型が現れない。こうなるともしかしなくても上級ダンジョンから発生するレアイベントに関連して出てくるのかもという気がしてならない。
そんなことを考えつつ、俺たちは本日の目的地である55層へとたどり着いていた。
「あっちだ! あっちに俺の『直感』が反応している! カルアの黒猫ちゃんたち、ゴー!」
「「「にゃー?」」」
適当なことを言って目的地に誘導する。
この階層には例のランク9とランク10の救済アイテムがあるからな。
やっとここまでこれたぜ。
上層では倒木がチラホラありはしたがまだ新緑の森を形成できていた〈嵐ダン〉だが、下層に行くとその姿はどんどん変わっていき、55層では葉っぱが全て落ちた禿げた森という姿が形成されている。
強烈な台風がよく通る地域では木は倒れるのを防ぐために葉っぱを全部落としてしまうと聞くが、まさにそんな感じの光景だった。
おかげで下は落ち葉だらけである。落ち葉の
カルアの小さな黒猫ちゃんたちはすでに落ち葉に埋まり、顔だけ出したような状態だ。
これはこれで和む光景だ。
「和むわ」
「ええ、本当に」
「和みますね」
ラナ、シエラ、エステルが完全にやられていた。分かる。
「索敵する。落ち葉の中、警戒」
「「「にゃー!」」」
カルアの猫ちゃんたちは俺の言うことは聞いてくれなかったよ。カルアの忠実な眷属だし仕方ない。可愛いから問題ない!
猫ちゃんたちはもう落ち葉の中を潜るようにしてどこかに行った。時々頭だけ出して周りを見渡す姿がどうしようもなく可愛い。
「絵になるわ」
「落ち葉に埋もれながら頭だけ出す猫。これほど可愛いとは思わなかったわね」
ラナとシエラもハートを打ち抜かれてとても目で追ってる。
エステルも完全に目線が遠くへ行く猫ちゃんを見つめていた。行かないで、とでも思っていそうだ。
そしてこの55層では、カルアが感じたように落ち葉の中に隠れているモンスターというのが存在する。カメレオン型のモンスターだ。
「フシャーー!!」
「ギョロロロ」
「ん! 敵発見!」
「ああ! 猫ちゃんが!」
見れば舌を発射したカメレオン型モンスター〈タベレオン〉から猫が大ジャンプで避けていたところだった。このままでは食べられちゃうという認識がパーティメンバーで一致した。エステルが悲壮な声を上げたのを筆頭に、全員が動き出す。
「なんてことするのよ! 『大聖光の四宝剣』!」
「猫を食べようとするなんて許されることではないわ! 『
先に動いたのはラナとシエラ。いつになく強い口調で魔法とスキルを発動する。
飛んでいく光の剣四本と盾四つが容赦なく〈タベレオン〉に殺到した。
「ギョ、ロロロロ~!?」
そして光に貫かれまくって盾に滅多打ちにされ、〈タベレオン〉はエフェクトに消えていった。1体のモンスター相手にオーバーキルである。
「大丈夫でしたか。良くぞご無事で」
なぜかエステルが食べられそうになった猫を抱っこして頬をすりすりしていた。
くっ、この光景は尊すぎるぞ!?
「恐ろしい敵だった。ここ、とても危険」
「そうだな」
〈タベレオン〉は舌で捕まえた者を引き寄せガブッといったり氷の息を吐いて攻撃したりする。さすがに食べはしない、しなかったはずだが、俺は言わないでおくのだった。
そんな一幕もあり、さて猫ちゃんにこれ以上索敵してもらってもいいのか、という議題が上がりかけたところで突風が発生。
俺たちは〈風除けの指輪〉に守られているが他はそうは行かず、落ち葉が舞ってしまう。
すると、落ち葉の中から大量の〈タベレオン〉が。
「殲滅よ! 殲滅してやるのよ!」
「了承するわ」
「はい。ラナ様の仰せのままに」
「ん」
「お、おう」
ラナの即殲滅の声にシエラもエステルもカルアも異存は無いようだ。
俺は、まあいいか。
タベレオンの素材は装備を作るのに使えるからな。これだけいればそれなりの数が作れそうだ。
そして、殲滅開始。
「はあ! そのような攻撃は効きません――『ドライブ全開』! 『
「ギョロ!?」
「ギョロー!」
落ち葉が舞い上がる中疾走するエステルによって次々討ち取られていく〈タベレオン〉たちが哀れだった。
攻撃は避けられるか、当たってもエステルはそんなの関係ないとばかりに無視して殲滅。舌を伸ばしてエステルの腕を捕らえ引き寄せてくるも、その勢いを逆に利用されて槍で突き倒されるなどして、〈タベレオン〉がどんどん数を減らしていった。
俺たちもエステルに続いて〈タベレオン〉を残らず殲滅しながら進んでいるといつのまにか目的地に到着していた。
そこは樹齢数千年と言っても頷けるような巨大な樹木、の切り株だった。
「おお! ここだここ! ここからまた何か感じるぜ」
「鍵穴はどこかしら!?」
「ん!!」
ラナもカルアも慣れたもの。宝箱の存在が近いと分かってはしゃぐ。
「ここだ! 『
極太の木の幹をぶった切って破壊し、中の扉があらわになった。
ふはははは! これで
「私が開けるわ! 私に開けさせて!」
「おう、いいぞ」
気分良く〈扉の銀鍵〉をラナに渡すと、ラナは扉に鍵を差込みガチャリと開ける。
「開いたわ!」
「お待ちくださいラナ様、まずは中の安全を確認させてください」
「ん!!」
先に扉に入るカルアとエステルが何も問題ないと確認して、奥に鎮座する二つの〈金箱〉を発見する。
「今回もゼフィルスは開けないの?」
「俺はボスドロップの〈金箱〉だけでいいさ。さて、今回も〈幼若竜〉の出番かな!」
シエラの質問にそう返し、俺は自然を装って〈幼若竜〉を取り出す。
どうやら今回はエステルとカルアが開けることに決まったようだ。
ラナめ、最下層が近いから遠慮しているのか? これは最下層で激しい〈金箱〉争いの予感。気を引き締めなければ。
俺が密かに気を引き締めていると、カルアとエステルが〈幸猫様〉と〈仔猫様〉にお祈りをして、〈金箱〉を開く。
「これ、レシピだった」
「こちらもレシピです」
「〈金箱〉のレシピね! 装備かしら!?」
ラナが手を合わせてはしゃぐが、残念ながら装備ではないんだ。
俺は早速〈幼若竜〉で『解読』を行なう。すると、
「カルアの方は、〈鎮火の秘薬〉、そしてエステルのは〈鎮静の秘薬〉だな」
「聞いたことがないわね。新しい上級ポーションかしら?」
名前の感じからシエラがポーションを推察するが、似て非なるものだ。
これは人に使うポーションじゃない。
活発な活動を続けるダンジョンに使うポーションだ。
これを使えば、物理的に通れない道が通れるようになるんだよ。
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