第832話 〈リザラン亜種〉戦決着! 金箱確定ドロップ!




「ヘイトを稼ぐわよ。――『シールドフォース』! 『オーラポイント』! 『ガードスタンス』! 『シールドスマイト』! 『挑発』!」


「ガララララ!!」


 いつもなら自分が倒されたときも考え、最初のヘイト稼ぎはスキル2回に抑えているシエラが、最初から全力でヘイトを取りにいった。

 じゃんじゃんヘイトを稼いだおかげで〈リザラン亜種〉が吠える。


 ここまで一気にヘイトを稼げればシエラを無視することはできない。まあ、『完全魅了盾』を初撃で受けているので最初っから無視は出来ないのだがそれはともかくだ。


〈リザラン亜種〉はその足に特化した体型(?)を活かし、シエラにダッシュすると、2メートルほどジャンプして短い足で踏みつけにきた。

〈リザラン亜種〉のスキル、『ダッシュでペッタン』だ。


「『城塞盾』!」


 シエラが防御スキルを発動して盾で受ける。

 シエラは『衝撃吸収』スキルのおかげでまったく動くこと無く攻撃を受け止めていた。

 さすがだ。


「バフを掛けるわよ!」


「俺たちも攻撃開始だ!」


「了解しました」


「ん!」


 いつも通りラナがバフを掛け、俺が正面、エステルとカルアが側面に散り、一当てする。

 それに反応し、囲まれたときに起こるパターン、〈リザラン亜種〉の『リザード大回転蹴り』という回転しながらキックする周囲範囲攻撃をかましてきた。

 どう見てもその短い足より尻尾の方がリーチが長くて厄介なのだが、それは言わないお約束なのだ。最初このスキルの技名を知ったときはどのスキルの事かまったく分からなかったのは良い思い出。


〈リザラン亜種〉の足にスキルエフェクトが集まり、足を警戒していたエステルが避けた直後に尻尾を食らってノックバックしていた。うむ。仕方ない。


「し、尻尾に気をつけてください! 油断なりません!」


「おけ。『スターブーストトルネード』!」


「ガラララララ!!」


 短い足で攻撃すると見せかけて尻尾で攻撃するなんてなんて奴だ。多分〈リザラン亜種〉も意識してないんだろうなぁ~。


「『属性剣・氷』!」


 通常の〈リザラン〉が〈氷属性〉に強い青なのに、亜種であるこいつは〈氷属性〉に弱い。

 MPを温存しながら攻撃し、厄介な足(尻尾)に気をつけつつダメージを重ねていき、そのHPが半分を切ると、〈リザラン亜種〉の体に変化が現れた。


「ガラララララ!!」


「! 何か様子がおかしいわ!」


「ん、ん? 体、金色、多くなった?」


「第二形態かもな」


 俺はその現象を知っているが、それっぽく伝えるだけに止めた。

〈リザラン亜種〉の体の黄土色の部分が少なくなり、金色の部分が多くなって、金色のエフェクトもまたちょっと強くなった。第二形態である。


 ここからはスキルも大きく変化するんだ。


「ガーッラァァァァァ!!」


「ブレス!? 『カバーシールド』!」


 今まで武闘派で攻めていた〈リザラン亜種〉がいきなり炎を吐いた。

 まずは安全確保のためシエラが全員を小盾でカバーする。


「アタッカーは警戒! 一旦距離を取るぞ!」


「はい!」


「ん!」


 攻撃パターンが明らかに変化したときは様子見のためにアタッカーは距離を取る。

 初見の敵では何が起こるか分からないので、こうして立ち回りを教える意味でエステルとカルアに指示を出した。


 俺は〈リザラン亜種〉の行動パターンを熟知しているが、〈嵐ダン〉の攻略が終わればメンバーチェンジが待っている。

 今のうちに俺が居ない場合の初見ボスの立ち回りを教えておきたかった形だ。


「ガララララ!」


「明らかに、さっきよりパワーアップしているわね」


 先ほどの『ダッシュでペッタン』を再びガードしたシエラだったが、そのダメージに警戒を強めた。なんと先ほどの2倍近くのダメージが出ていたのだ。

 実は今の攻撃、似ているが正確には『ゴールドダッシュでペッタンコ』というスキルだ。

『ダッシュでペッタン』の上位スキルだな。ほら、金色度が増してる。


「ガララララ!」


〈リザラン亜種〉はさらに『ゴールドラッシュ』、『金ピカの鱗防御』、『大回転ゴールデンキック』(尻尾)など、金を意識したスキルが多くなった。全てがパワーアップしている。

 さすが第二形態だ。

 とはいえ、俺たちの防御力は並ではない。

 おそらくエステルとカルアは新装備前であれば飛び込むのに躊躇したかもしれない威力の攻撃も、今ではラナの回復さえあれば恐るるに足りない。


 俺は相変わらず、〈ガラティン〉に〈氷属性〉を付与したまま削りまくり、〈リザラン亜種〉のHPが15%を切る。


「グ、ララララララ!!」


「また変わるわ!」


「今度は全身金色!?」


「金色になるほど強くなる、ですか。なるほど」


「眩しい」


「第三形態か! またパワーが上がるかもしれないぞ、全員警戒を怠るなよ!」


〈リザラン亜種〉の姿が黄土色から全身金色のキラキラボディに変わった。

 あまりのまぶしさにカルアが目を細めていた。

 あ、〈盲目〉状態にする『ゴールデンフラッシュ』が来るな。『ディフェンス』で防御しつつ『リカバリー』を準備しておこう。


〈リザラン亜種〉が金色に光る背中を見せるとピカッと光ってエステルとカルアが〈盲目〉状態になった。おいおい、2人とも新装備に『暗闇盲目耐性』あるのに〈盲目〉突破してきやがったよ。さすがは金ピカの第三形態だ。『盲目耐性貫通』が強い。

 俺は防御スキルで防いでいたのですぐにエステルを回復させる。


「眩しい!? こ、これは!?」


「にゃにゃ!?」


「『リカバリー』! ラナ、カルアに状態異常回復!」


「! 『浄化の祈り』!」


 ラナは距離があったのと、素のRESで受けきっていたようなのでカルアを回復してもらう。


「助かりました!」


「ありがとラナ」


 うむ、復帰が早い。シエラは当然のように状態異常なんて効かないしな。

〈リザラン亜種〉の攻撃はシエラがしっかり抑えられてる。

 行けそうだ。


〈希少ボス〉は〈徘徊型〉のようにダメージを負うと逃げることはしない。

 しかも〈レアボス〉のように一段強い訳でも無い。

 少し第三形態まであるボスというだけだ。

 まあ、第三形態がちょっと強いんだけどな。

 要は出会う方法の難易度が高いだけで、出会って上手くバトルをしてしまえばこっちのものというわけだ。


 おっとまたフラッシュ来た。って今度は全体攻撃が来そうだ。

 誰が〈盲目〉食らってもいいようにラナにはパーティ全体状態異常回復を使ってもらう。


「ラナ! 浄化の祝福を!」


「『浄化の祝福』!」


「ガラララララ!」


「何あれ!? 鱗が上に飛んだ!?」


「おそらく降ってくるぞ! シエラカバー!」


「『カバーシールド』!」


〈リザラン亜種〉の背中に生えていた鱗全てが上空に射出された。

 シエラの小盾が4人全員に届くと同時に、金の雨が降り注ぐ。

 これが〈リザラン亜種〉の全体攻撃、『ゴールドスケールシャワー』だ。

 なんともスケールの大きい攻撃!(違う)


「金のお恵みだー!」


「馬鹿なこと言ってないの。む、それはさっき見たわ――『カウンターバースト』!」


「ガラ!?」


「おっと大チャンス! 『ソニックソード』! 『聖剣』!」


 哀れ〈リザラン亜種〉。

 金の雨が降りしきる環境でシエラに『ゴールドダッシュでペッタンコ』をかまそうとしてカウンターを食らい、大きくノックバックしたところで俺が切り込みダウンを奪ってしまう。総攻撃だ!


「止めは私よ! 『大聖光の四宝剣』!」


「ガ……ララ――」


 総攻撃を仕掛け、良い感じにHPが残り僅かとなったところで残念ながらダウン復帰。

 しかし、あと少しなので遠距離攻撃さえ刺さればアウト。

 最後の一撃はラナが四つの宝剣をぶっ放して〈リザラン亜種〉にズドドドドンッと突き刺さり、HPはゼロとなってそのままエフェクトの海に沈んで消えたのだった。


 第三形態を十全に活かせなかった〈リザラン亜種〉よ、南無。


 そしてそのドロップだが、〈リザラン亜種〉が消えた後には〈金色〉に輝く宝箱が落ちていたのだった。


 そう、実は〈希少ボス〉は――〈金箱〉確定ドロップなのだ。




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