第831話 発見。金色エフェクト輝く〈希少ボス〉!
ランク4〈冠水の島鳥ダンジョン〉は、一面とても浅い湖が広がるダンジョンだ。
深さは足首から
見通しは良いのだが、プレイヤーは水没している箇所を歩かなければならず、当然のように水に足を取られる〈マイナス環境〉を持っている。
要は移動速度が遅くなるのだ。
そしてここのモンスターは鳥型や飛行型などのスピード型。
モンスターから逃げられないダンジョンなのだ。
しかしそれを解決するのがラナが当てた〈海塗りのベール傘〉。
傘を差すとあら不思議、〈マイナス環境〉の影響を受けなくなるので普通に歩けるし戦える状態に早変わりだ。しかも上からだと傘の色が湖と同色に見えるためモンスターから狙われ難くもなる優れた性能を誇る
また、ランク3の〈山岳の狂樹ダンジョン〉は別名〈階ダン〉なんて呼ばれているが。その理由は階段のように各階層に
そして大体その崖の上に次の階層門があるので崖上りや山登り、あるいは一本道を進まなくちゃいけないダンジョンだ。下層に行けば行くほど、この一本道はキツくなっていく仕様だな。
そしてその救済アイテムとして存在するのは、そんな崖をひとっ跳びで登るトランポリン、〈山を越えるトラン・プリン〉だ。
これを考えた開発陣はここがリアル世界になるなんて考えもしなかっただろうな。うむ。
これ本当にリアルでも使えるのか? とても不安なアイテムだ。
ま、まあ、大丈夫だろう多分。後で試してみ、るか? うーむ。
そんな俺の悩みにラナの声が聞こえてくる。
「よく分からないけれど、こんなところに隠されていた〈金箱〉よ! きっと良い物に違いないわ! 後でハンナに作ってもらいましょう!」
「はい。どんなものなのか、楽しみですね」
「ん、楽しみ」
「それでゼフィルスは何をそんなに悩んでいるのかしら?」
「いや。なんでもない。多分大丈夫だろう……多分な!」
ラナたちがレシピの話題で盛り上がる。
俺は少々不安になるが、まあ最悪山から滑落してもHPのおかげで怪我は負わないのだし、大丈夫だろう。
そう思うことにした。
隠し部屋から出て攻略を再開する。
「この調子でどんどん進むわよー!」
「「「「おおー!」」」」
もう完全に俺の位置を奪ったラナ。俺は「おおー」側です。
ラナは後衛だというのにカルアの横に並んで先頭を歩くもんだから、エステルはさっきからハラハラしているぞ。
「ん、ん?」
「どうしたんだカルア? 敵影か?」
「ん、なんか、大きいモンスターいた。多分ボス。でも、金色」
「金色のボスだと!!」
カルアの『ピーピング』が金色のボスを発見した。
その報告に思わず叫ぶ。
「ゼフィルス、静かに、モンスターが集まって来るわよ」
「悪いシエラ。だが、仕方なかった。テンションが上がったんだ」
「……それは弁明なのかしら?」
「ふっふっふ、ボスを狩るぞ! ――カルア、ボスはどっちだ?」
「案内する、こっち」
カルアの案内に俺たちは物音を最小限に気を使いながら少し進むと、運が良い。金色のエリアボスを発見した。
このエリアボス、当然ながら普通の〈階層ボス〉とは異なる。
金色のエフェクトを振りまき、自身にも少し金色が入っているレアバージョンのエリアボス、〈希少ボス〉だったのだ。
見た目はこの14層の〈階層ボス〉、二足歩行で足が短いくせに走りに特化した〈アーマードリザードラン〉というボスの色違いだ。
〈アーマードリザードラン〉は青色だが、こいつは黄土色。そこにところどころ金色の模様が描かれている感じ。
名前はそのまんま〈黄土アーマードリザードラン〉(色違い)。
エリアボスがモンスター亜種なんて呼ばれているのは、この色違いで同じ姿のボスが存在するのも理由の一つだ。
〈黄土アーマードリザードラン〉、長いので俺たちは通称〈14層リザランの亜種〉や普通に〈リザラン亜種〉と呼んでいた。
〈リザラン亜種〉はどうやら体のお手入れ中のようで、体をぺろぺろ舐めていた。逆にばっちくなりそうだと思ったのは内緒。
「間違いなく〈リザラン亜種〉――あ~、〈幼若竜〉によれば〈黄土アーマードリザードラン〉と言うそうだ。間違いなく〈希少ボス〉だな!」
俺は〈幼若竜〉を抱っこしながら、さも今『看破』を使用したように言った。
〈幼若竜〉から鑑定結果の相手の名前が目の前に表示されているので嘘ではない。
「〈希少ボス〉! 確かエリアボスのレアボスなのよね?」
ラナが声を潜めながらもテンション高めに言った。
それに頷く。
「そうだ。エリアボスのように毎回階層にいるわけではなく、本当にたまに階層にいるのが〈希少ボス〉だ。その能力は通常の〈階層ボス〉を上回り、倒しにくい代わりに多くの経験値とドロップが美味しいと言われているボスだな」
〈希少ボス〉は報酬が良い。
これは初級ダンジョンから登場する〈レアボス〉や中級から登場する〈徘徊型〉と同じ理屈で、通常種のボスよりもエンカウントし辛く、討伐難易度が高いため報酬も高くなるという、倒せたら美味しいボスだ。
まさかエリアボスを発見するのも専用のスキルを使わなければ難しいのに、さらに出会うことが難しい〈希少ボス〉を発見できるとは!
これも〈幸猫様〉たちのおかげか!? 〈幸猫様〉は俺たちにやつを倒せと言っている!
帰ったらたくさんお供え物しなきゃ!
「もうこれは倒すしかないぜ!」
「大賛成よ!」
「大賛成」
俺の言葉にラナがテンション高めに喜び、カルアが片手を上げる無表情ポーズで大賛成した。
「私も構わないわ」
「今度のボスは強そうですね」
シエラとエステルもやる気だな。
俺はそれに頷き、指示を出す。
「よし、全員突撃だ! シエラ、まずはヘイトを取って逃がさないようにしてくれ!」
「任せて」
〈希少ボス〉はこちらを見つけると逃げる場合がある。
しかし、ヘイトをガツンと取ってやれば逃げる気が失せるのか、襲い掛かってくるのだ。それに、
「『
シエラのタゲ強制固定スキルは、〈希少ボス〉が逃げるのを防ぐにも有効なのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます