第830話 〈宝箱〉ラッシュ! 救済アイテム超ゲット!
「やったわねエステル」
「エステルナイス! お疲れ様だ!」
「はい! やりました!」
エステルがシエラ、俺の順にハイタッチ。
続いてカルアとラナにもタッチする。
上級ボスをあっさりと倒した。
これが意味することは大きい。
これで上級ダンジョンを攻略出来るという証明になっただろう。
エステルたちも自信が付いたはずだ。
「エステル本当に強くなったわね。ダメージ量も上がってたし、防御力もとても上がってたわ。そして何よりスピードね! でもボスに衝突したときは心配したわよ」
「はい。私も驚きました。まさかこれほど違うとは。ですがもうあのような衝突はしません」
ラナが喜びながら見違えたエステルを褒め、エステルも自分の装備を見下ろしてから胸に手を当てて答えた。
「それに私の能力がかなり向上したのはラナ様のバフのおかげもあると思います」
「そうね! バフって地味だと思っていたけれど、ゼフィルスとカルアの攻撃もかなり効いていたもの。バフの効力があれほど上がるなんて思わなかったわ!」
強化とは戦闘をする上で欠かせないポイントだが、バッファーはやや地味だ。
ラナはしっかりバフを切らさないよう立ち回ってくれるが、本当にバフが役に立っているのか、その効果に懐疑的な部分が少しあったのだろう。
しかし、今回明らかにダメージ量が増えているのを実感して、ラナのバフに対する認識は大きく変わったらしかった。
「いや、ラナのバフにはいつも助けられてるぞ? もちろんこれからも頼りにしてる」
「ふっふん、任せてよ! じゃんじゃんバフを掛けてあげるからね!」
こうして腕試しも兼ねたボス戦は終了し、お待ちかねの宝箱。
「今回は〈銀箱〉なのね! なんだか上級に来てから〈木箱〉をあまり見ない気がするわ」
「それもこれも〈幸猫様〉と〈仔猫様〉の『幸運』のおかげだな!」
元々上級ダンジョンは〈木箱〉がドロップする確率が低くなる。
約62%と言ったところだ。そして〈銀箱〉が28%、〈金箱〉が10%になる。
しかし、〈幸猫様〉〈仔猫様〉の『幸運』、そして〈
「〈銀箱〉の中身は何かしら? エステル、開けてみて」
「はい。では開けさせていただきます」
今回はローテーション的にエステルが開けるようだ。
パカリと開くと、そこにあったのは、装備を強化する上で必須の〈装備強化玉〉だった。
「わ、強化玉だわ! でもすごい数ね! 中級とは大違いだわ!」
「50個はありますね」
正確には〈装備強化玉×56個〉だな。
上級に入ると途端に装備の強化値が増えるので、それに合わせたのか、上級に入るとこんな所までドカンと増える。
ラッキーだぜ!
「回収回収~!」
「ねぇゼフィルス、それ使うの? 使っちゃうの? 私たちの新しい装備に!」
「ん? ああ、いや。まだまだ使わないぞ。これは行き詰まった時まで確保しておくんだ」
「ええ~」
できれば最終装備に全部突っ込みたい。それまでは溜めて置きたいのだ。
しかし、強力な新装備をさらに強化してみたいラナは少し不満そうだった。
ラナの装備は十分強化したはずなので許してほしい。
「良し。回収完了、門を潜るぞ! 今度は11層だ!」
「まあいいわ! 今の私たちなら上級も敵じゃないもの! ――みんな! 上級ボスなんてけちょんけちょんにしてやるのよ!」
「「「「おおー!」」」」
ってラナ、それ俺の役目!? 思わず参加しちゃったじゃないか!?
でもいいか。俺もたまには「おおー」と言う側で参加だ!
その後、俺たちは階層門を潜り、11層へと突入した。
11層からはモンスターが一段と強くなる。
ランク1のここ、〈嵐ダン〉は言わば中級者が上級者になろうと懸命になる場所。
10層までは上級者になりきれていない中級者が力を蓄えるエリアだ。所謂チュートリアル。
11層からはモンスターも一層強くなり、主にトカゲ型モンスターが登場するようになる。これぞ上級モンスターという火力でプレイヤーに襲いかかってくるのだ。
ここで防御力が足りていないとすぐに全滅するので注意な。しかし、
「『ショックハンマー』!」
「ギャ!?」
「ナイスですシエラ殿、止めです。『閃光一閃突き』!」
「ギ……」
また哀れなモンスター、〈オヘビトカゲ〉は光に還っていった。
11層になって、モンスターも最弱の〈スライム〉系や〈モチッコ〉系が登場しなくなり、代わりに全長2メートル級のトカゲ型モンスターが跋扈するエリアになったが、俺たちのメンバーからするとあまり問題にならなかった。
「カルアの斥候は優秀だな!」
「グー」
俺が親指を立てるとカルアも親指を立てて返してくれる。
やっぱり斥候が優秀だと
「私、通常モンスター相手にあんなに回復が役立ったの初めてだったわよ。かなり強くなってきてるわね」
「だな。ラナも回復助かったぜ!」
「ほとんど継続回復にお任せだったけどね」
続いてラナともグーする。
ここのトカゲは結構弱攻撃を連発する。口から火を吐くし、尻尾がムチになって範囲攻撃してくるしで微妙にダメージが加算するんだ。
そこで役に立つのがラナの継続回復だ。
ラナはユニークスキルのおかげで回復を使うと継続回復状態になる。
おかげで弱攻撃でHPが減った先からどんどん回復するので、俺たちは多少のダメージを無視して攻撃し放題。
ダメージをほぼ無視して攻撃出来るので余裕で勝てちゃうと言うわけだな。
「シエラ、エステル。これ、ハンナ特製の〈エリクサー〉だ」
「ありがとうゼフィルス」
「ゼフィルス殿、ありがとうございます」
そしてMPが減ったときはハンナ特製〈エリクサー〉の出番。
これ1本で630もMPが回復してしまうやべぇポーションだ。
ハンナも『薬回復量上昇付与』がLV10となって、最近〈エデン〉用に作られた。
これの素材もまだまだいっぱいそこら辺に生えているので、採集も同時に行なう。これで今後もMPの心配は無い。
まさに盤石の布陣だ。
そして俺たちは14層まで進んでいた。エリアボスとはここまで会えずじまいで残念。
切り替えていこう。実は、ここに俺の目的の物があるのだ。もちろん隠し扉である。
「ん? ゼフィルス、どうしたの? あっち何かある?」
「おう、あっちに『直感』が反応してな。できれば行ってみたいんだ」
「むむむ、分からない。私と『直感LV』同じなのに、どうしてだろ?」
俺は定番化しつつある『直感』さんが囁いた戦法でカルアを誘導する。
カルアはLVが同じなのにどうしてと悩んでいるが、すまないとしか言えない。
カルアにモンスターとなるべく遭遇しないルートを探してもらい、その後一度の戦闘で目的地に到着する。
そこは5層の時と同じく、ただのでっかい樹木だった。
「ここだな。みんな離れていてくれ。――『
ズドンと一撃。樹皮が大きく吹っ飛び弾け、奥に何かの扉が現れたのだった。隠し扉見っけ!!
「あ、隠し扉! ゼフィルス、約束通り次は私の番よ!」
「おういいぞ。んじゃこれな」
俺はラナに〈扉の銀鍵〉を渡してやる。
前に約束したからな。
ラナが鍵穴にそれを差し込むと、ゴゴゴゴという音と共に扉が開かれた。
そして中にあったのは再び二つの〈金箱〉だった。特大報酬見っけーー!!
「「〈金箱〉!!」」
ラナとカルアが素早く反応する。前回はシエラとエステルが〈金箱〉を開けた。
ならば次の番は?
声を上げたと思ったら、いつの間にかラナとカルアがそれぞれの〈金箱〉の前に座っていた。
スタンバイ早っ!?
「ゼフィルス! 今回は私が開けるわ! 開けて良い!」
「ん! 私も開ける!」
「おう、いいぞ。良いのを当ててやれ」
「やった!」
「ん! ありがとゼフィルス」
もちろん宝箱を開ける役目は譲る。
俺はこの中身を知っているし、絶対必要だから取りに来たのだ。
さて、なぜこのランク1ダンジョンが最初の攻略に推奨されているのか。
モンスターが一番弱いし、攻略も簡単。だから最初に攻略すべき。
まあそうだ。間違っていない。
しかし、それだけじゃ無いんだよな~。
〈ダン活〉は上級ダンジョンから特殊な環境が行く手を阻む。
〈嵐ダン〉なら時々風が吹くし、〈霧ダン〉なら前が見えないし、〈山ダン〉なら山を登るのがとても大変だ。
しかし、5層の時も言ったが、救済アイテムというものが存在する。
そしてその10ある全ての上級下位ダンジョンの救済アイテムが眠っている場所こそ、この〈嵐ダン〉なのだ。
5層ではランク1とランク2の救済アイテムが登場した。
ではここは?
そう、お察しかもしれないが、この14層ではランク3とランク4の救済アイテムが眠っている。
まずラナが宝箱を開いて覗くと、そこにはランク4の救済アイテムが眠っていた。
俺はすぐに〈幼若竜〉を取りだして『解読』する。
「レシピね! ――えっと、〈海塗りのベール傘〉レシピ?」
それはランク4、〈冠水の島鳥ダンジョン〉の救済アイテム、〈海塗りのベール傘〉のレシピだ。
そしてカルアが次に開ける。
「ん? こっちもレシピ」
そこにはランク3〈山岳の狂樹ダンジョン〉の救済アイテム、〈山を越えるトラン・プリン〉のレシピが入っていた。
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