第814話 一日目が終わり、二日目開始! 王女の威光。
珍事件以降も、俺たちは自由時間に遊んだり、仕事時間に仕事したりと、充実した時間を過ごした。
うむ。何しろ学園全体イベントだ。見て回る場所が多くて困るぜ。自由時間が足りないなこりゃ。
自由時間は割と知り合いに出会う機会も多かった。
リカが自由時間を使い〈剣刀大会〉に出場して多くの上級生をなぎ倒していたり、タバサ先輩の臨時ヒーラー講座で下級生たちに女神先生と呼ばれていたり。
あとぐるぐるメガネを取って素顔になったキールとバッタリ出会ったときはマジで驚いた。
お前誰だと言いたくなったよ。同じ班のラクリッテとノエルと一緒に行動していなければ誰だかわからないほどの変わりよう。所謂イケメンというやつだったんだ。
俺はキールのことを雰囲気イケメンと思っていたのだが、まさかだったわ。
雰囲気イケメンから雰囲気を取ったらただのイケメンだ。あれ? そうだったっけ? そんな心境だったよ。
そんなこんなで学園祭初日は終わった。リーナは大満足といった雰囲気で、色々と楽しかった様子だ。もちろん一緒に遊びまわった俺もとても楽しかった。ナギも満足そうにしてリーナと話している。
「みな、今日は大変助かった。夜は体をゆっくり休めてくれ。では、お疲れ様でした!」
「「「お疲れ様でした!」」」
一度〈秩序風紀委員会〉の詰め所に戻ってお疲れ様。
すると、なぜか先ほどの満足そうな雰囲気から一転、リーナもナギも悲しそうにする。
「終わってしまいましたわね……」
「う~ん、楽しい時間ほどすぐ過ぎちゃうよね~」
「まだまだ初日だぞ? 後2日もあるんだからそんながっかりしなくてもいいんじゃないか?」
何しろ大きなイベントほど後半に控えているからだ。俺は後半が楽しみで仕方が無い。
「それは、そうなのですが。ゼフィルスさんと同じ班なのは今日までではないですか」
「明日も明後日もこのメンバーだったら良かったのにね」
「なるほど、そういうことか」
嬉しいことを言ってくれるなぁ。
リーナとナギは俺と回ることが出来なくなることを悲しんでくれていたらしい。
ちょっと照れくさいな。
チームは毎日チェンジする。
本当なら固定チームを作っておいたほうが効率が良いのだが、ここは学園、俺たちは学生。
これも学びの一環としていろんな人と組み、経験を積ませるのが狙いのようだ。
そのため、初日はリーナとナギのチームだったが、明日には別のチームとなってしまう。
それを残念がってくれるのは素直に嬉しいというものだ。
「今日は楽しかったよリーナ、ナギ」
「わたくしも、とても楽しかったですわ」
「うん! 仕事も滞りなく、大成功だったしね!」
「それじゃ、ここで解散だ。リーナ、ナギ、明日明後日も頑張れよ?」
「もちろんですわ。ゼフィルスさんも頑張ってくださいまし」
「そっちもね~、お疲れ様~」
こうして初日の学園祭は終わり、リーナとナギと別れ帰宅したのだった。
一夜明け、学園祭2日目。
今日のメンバーはというと。
「今日はよろしくねゼフィルス! めいっぱい遊ぶわよ!」
「いや、仕事もしようぜラナ」
「ふふ、ラナ様はゼフィルス殿と一緒に遊べるこの日を楽しみにしていたのですよ」
「ちょっとエステル、それしゃべっちゃダメなやつじゃない!」
「別にいいじゃんかラナ。俺も今日を楽しみにしてたぞ? 自由時間はめいっぱい遊ぼうな!」
「え? うん、そうね。今日は楽しみましょ!」
「くすっ、お供させていただきます」
というわけで2日目のチームはラナとエステルである。
ラナはさすが、学園祭を楽しむことに重きを置いているな。エステルはいつもの様子だ。俺とラナのやり取りが面白いのかくすりと笑ってる。
王女様に警邏の仕事なんて任せていいの? むしろ護衛が付く側じゃないか? と思うかもしれないが学園祭は一応学園の授業。
授業の一環という扱いなので問題は無いそうだ。ちゃんと護衛役のエステルはチームに入っているしな。
とはいえなぜラナがここまで仕事をスルーして遊ぶ気満々になっているのか。
その理由を俺はもう少し考える必要があったかもしれない。
「お、おいあれ」
「おお、あれはまさしくラナ殿下」
「お美しい。まさに聖女様だ」
「ありがたやありがたや」
ラナが国民的有名人という事実を、俺はこのときほど実感した事は無かった。
警邏の仕事で巡回をするだろ?
周りは諍いなんかまったくせずにラナに頭を下げたり拝んだり、なんかお礼を言ったりしている。
はっきり言って、ラナが歩いているだけで平和そのものだったのだ。
な、なんもすることがねぇ!
「あれは勇者君!? それにラナ殿下よ! 本物!」
「〈秩序風紀委員会〉のお仕事中ですか! おお、なんとご立派な」
「うう、勇者と聖女が揃う場を見られるなんて、なんて運がいいの」
「ありがたやありがたや」
そして俺まで拝まれる始末よ。俺、今日はなんもして無いのに?
ん? いや、なんか別の反応があるな?
「お、俺、ちょっとラナ殿下に握手を頼もうかな」
「あ、ちょっとずるいわよ! わ、私だって勇者君に握手してもらいたいのに!」
「わ、私はサインが欲しいわ。勇者さんと王女様のダブルサイン」
「確かに、大チャンスか? この機会を逃したらもう二度とご尊顔を拝見することすら叶わないかもしれないし」
「! よし、俺はダメ元で行ってみる!」
「ちょ、それなら私だって行くわ!」
「少々よろしいでしょうか?」
「私たち、こういうものですが」
「「!?」」
なんとなく『直感』が囁いた気がしてそっちを向いてみれば、黒装束の仮装をした人や女子の集団が来園者をどこかに連れて行くところだった。
どこかのアトラクションの客引きかな? 周囲の人たちがまったく気にとめていなかったので誘拐とかそういう事件性のあるものではないのだろう。
いやはや、ここまで効果が顕著な巡回(巡礼?)なんてそうそうないのではなかろうか。
俺たちが巡回するたびにお礼を言ったり、拝む人が増えている気がした。むしろサークルが出来ている?
そして事件らしい事件や、トラブル、ハプニング等がまったく無しで午前中の仕事を終えてしまう。
「平和よね! 警邏なんて仕事は本当にいるのかしら?」
「いや、どうなんだろう?」
いやほんと。こんなに人がいて何もトラブル無しとかすごい、どうなってんだ?
これが王女の威光なのか? 俺は今ほどラナが王女であると認識したことは無い。
みんな王女にひれ伏してるよ。
「さて! 仕事も終わり! これからは自由な時間よ! 遊ぶわよゼフィルス、エステル!」
「オーイエー!」
「はい!」
しかし、それとこれとは話が別。
遊ぶ時間は有限だ。ラナの宣言に俺は元気よく返事を返す。
ここからはお楽しみの時間だぜ!
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