第791話 エリアボス戦! 第一層は〈エデン〉が担当!
一度〈上下ダン〉に戻ってアーロン先輩とダンカン先輩たちのパーティを組み直した後、俺たち〈エデン〉と〈サンハンター〉の合同パーティは〈エリアボス〉に向かってまっすぐ〈山岳の狂樹ダンジョン〉を進んで行った。
〈サンハンター〉ではアーロン先輩だけがこのダンジョンに入った経験があるらしく、他の6人は初めてでかなり気を張っている様子だ。
ミューとリャアナに至っては上級ダンジョン自体入ダン初めてだそうだ。
道中、俺がこのダンジョンの説明をしながら道なき道を歩いていく。
「どうしてゼフィルスは、ランク3、選んだの?」
「この〈山ダン〉を最初に選んだ理由はランク1やランク2のダンジョンよりもボス戦がやりやすいからだな。もちろんランク1の方がボスは弱いんだが、向こうだとダンジョンギミックでたまに事故が起きる。そうなると全滅する可能性がある。だが、ランク3ならダンジョンギミックがあの崖山にしか無いからボス戦では通常通り戦えるメリットがあるんだ。LVが育ってボス戦に慣れればこっちの方がやりやすいんだよ」
そんな感じにミューの質問に答えつつ、根っこの上を歩いていく。
索敵はカルアとエージェント猫3匹が頑張ってくれていた。
それに【モンスターバスター】のアーロン先輩もいる。
「……敵、発見。あっちに4体。こっち向かってくるって」
お、早速カルアが何かを発見したようだ。猫耳がピコピコ動いていた。
「よっし、俺たち〈サンハンター〉で処理するぜ。ダンカン!」
「あいよっと」
エージェント猫から連絡を受けたカルアが指さして言うとアーロン先輩が大剣を引き抜き、ダンカン先輩が大盾を取り出した。
ダンカン先輩はタンクのようだ。
「見えた。〈トラキ〉4体だぜ! 恐るるに足りん! ニャルソン、ジェイウォン、行くぞ!」
「にゃう!」
「ウォン!」
そう言ってジェイウォンに騎乗して飛び出すアーロン先輩、それに〈トラキ〉たちが向かおうとするが。
「へっへ、お前たちはこっちだ。――『タウント』オオオオ!」
ダンカン先輩の挑発スキルに〈トラキ〉たちがダンカン先輩の方へ向き直ると、そこへ騎乗中のアーロン先輩が頭上から降ってくる。そして大剣を〈トラキ〉の1体にたたきつけた。
「『モンスターインパクト』!」
「があああ!?」
「こ、こいつ、しゃべるぞ!」
「があああ!!」
「おらおら行くぜ! 『ウェポンローリング』!」
まんま樹木の〈トラキ〉が吠えるのに少し動揺するダンカン先輩だがすぐに平静を取り戻し、盾で受け止めると、アーロン先輩の大剣が大きく回転しながら〈トラキ〉たちを吹き飛ばした。
明らかにモンスターのHPの減りがデカイ。
さすがは対モンスター特化職。
【モンスターバスター】のスキルはどんな武器でも使えるぶん、打ち下ろし系やなぎ払い系が多い。剣専用スキルみたいな専用武器の制限が無い汎用スキルなので単純なスキルが多いが、ダメージがデカイのだ。
騎乗した状態のアーロン先輩が素早く動き、モンスターたちに攻撃して行く。攻撃がヒットしていくたび、モンスターたちがあまりのダメージの多さに面白いようにノックバックする。隙だらけだ。
そこへ他のメンバーが追撃し討ち取らんとするが、その瞬間、〈トラキ〉が奥の手を発動!
「「「「頭吹っ飛んだーー!?」」」」
「ぶあははははは! 『バスタークラッシュ』!」
〈サンハンター〉メンバーたちが目を丸くしてビックリし、奥の手を知っていたアーロン先輩は大爆笑していた。分かる。
とはいえ笑いながらしっかり〈トラキ〉を屠っていたが。
そうしてしばらく、〈トラキ〉の集団は全滅した。
戦闘開始から僅か1分くらいだ。初戦闘なのにこのタイム、やっぱり【モンスターバスター】の功績がデカイな。
それにあの大剣は――。
「ようゼフィルス、どんなもんだ?」
「強いなぁアーロン先輩。そのユニークスキルはちょっと羨ましいぜ」
「はっはっは! そうだろうそうだろう。俺もこいつは重宝している。【ハンター】職はいいぞ。俺のオススメだ」
良い笑顔で笑うアーロン先輩。本当に【ハンター】職が大好きなようだ。
確かに強い。しかし、モンスターしか相手に出来ないのは辛いんだよなぁ。
そのまま何度かモンスターに襲われつつ進み、アーロン先輩が確認していたという〈エリアボス〉を発見した。
「あれだ」
「間違いないな。1層の階層ボス、〈オニキヒツジ〉だ」
「インパクトのある見た目」
「あの棍棒、痛そうですよ?」
アーロン先輩が指差し、俺が頷くとミューとリャアナが目を細めた。
〈オニキヒツジ〉は鬼っぽい羊の―――木だ。1層にいる〈オニキ〉の亜種ボス的なモンスターだな。ヒツジの要素が加わってパワーアップしている(?)。
顔は鬼の強面で牙が鋭く、眉間から一本の鬼の角、こめかみから一本ずつ羊の角、計三本の立派な角が生えている。木だけど。
体は羊っぽくモコモコの綿で覆われ、二足歩行で右手と左手に棍棒を持っている。
怖い顔にモコモコの体。ミューの言葉通り、インパクトのある見た目だ。
それを前にして、アーロン先輩がこちらに振り向いた。
「それじゃ、まずはどっちが挑む?」
「じゃあ、最初は俺たち〈エデン〉が挑んでいいか? ここまで索敵しかしてないしな」
「いいぜ。噂の1年生ギルド〈エデン〉の実力、見せてくれ。周りのモンスターはこっちで受け持つぜ」
というわけで、最初は〈エデン〉がエリアボスに挑むことになった。
〈サンハンター〉には俺たちがボス戦中、他の通常モンスターが
これが1パーティならモンスター避けのアイテムを使うところだが、せっかく2パーティいるので露払いを任せることで役割分担だ。
俺は早速メンバーを集めて聞いた。
「みんな、先にエリアボスに挑戦するんだが、大丈夫か?」
「もちろんよ。少し退屈していたくらいだわ!」
「初めての上級ボスね。中級とは違う一面があるのかしら?」
俺の質問に本当に少し退屈そうにしていたラナが元気よく答えてくれる。
シエラも、タンクとして冷静にボスを見極めようとしていた。
何しろ、初めての上級ボスだ。前回はボス戦をせずに帰っちゃったからな。
しかも今回、初めての観客が居る。
さてさて、みんないつも通り動けるだろうか?
「とりあえずカルアは減ったMPを回復しておいてくれ。ほい」
「ん、ありがと。コクコク――」
カルアだけはここまでの道中でスキルを使ってMPが減っていたので〈MPハイポーション〉を使って回復させる。
ボス戦をするときは満タンが基本。
本当はあのボスの攻略法も教えてあげたいのだが、控える。上級だし。
とはいえ指示は出すけどな。
「さて、上級ボス初討伐に行くぞ!」
「「「「おおー!」」」」
「メェ~~~?」
「あの強面で、メェ!?」
俺たちが前に出ると、どう見ても鬼の顔面(木)にしか見えない強面が重低音の声でメェと言ったことにリャアナが思わずツッコんでいた。分かる。
「こいつは上級ボスだ、油断するなよ!」
「もちろんよ。『オーラポイント』! 『シールドフォース』!」
「バフいくわ! 『獅子の大加護』! 『守護の大加護』! 『迅速の大加護』!」
「ラナ、一応魔払いも頼む!」
「オッケー! 『病魔払いの大加護』!」
「メェーー!!」
準備万端だ。
挑発スキルを使ってヘイトを稼いだシエラに視線が向き、〈オニキヒツジ〉が鬼と羊の計三本の角を向けて突進する。
〈オニキヒツジ〉の大きさは4メートル。二足歩行でズドンズドン足音を鳴らしながらの突進だ。正直むちゃくちゃ怖い。
「『城塞盾』!」
しかし、さすがはシエラ。まったく臆することなく盾を構えた。
ズドンという衝撃音が響いたが、シエラはしっかり防御スキルでガードし、巨体を受け止めてしまう。マジファンタジー。
突進が止まってしまった〈オニキヒツジ〉にパーティが殺到する。いつものパターンだ。
「行くぞ! 『ソニックソード』! 『
「行きます! 『騎槍突撃』! 『閃光一閃突き』!」
「ちょん切る。『フォースソニック』! 『デルタストリーム』!」
「メェーー!!」
「下がれ!」
俺たちの攻撃に怒った〈オニキヒツジ〉が両手に一本ずつ持った棍棒を振り回す。
近距離攻撃でダメージを負ったとき一定確率で起こる『怒りの棍棒』だ。
これの最中は大人しく下がっておいたほうが良い。
「ま、大人しく待つなんてしないけどな。行くぜ新スキル――『太陽の輝き』! 『
下がると同時にスキル発動。
これは俺が手に入れた〈陽聖剣・ガラティン〉のスキル。
『太陽の輝き』はバフだ。自己バフの部類で攻撃力が大きく上昇する。
さらに『陽光剣現』は剣自体の攻撃力を上げる。
肉体と武器、両方でパワーアップできるのが〈陽聖剣・ガラティン〉の強みだ。
「『属性剣・火』! そんで食らえ! 炎と太陽の斬撃――『サンブレード』おお!」
「メェリャアアア!?」
『怒りの棍棒』中に下がってバフを掛けまくってパワーアップし、相手のスキルが切れた直後に飛び込んで斬ってやった。
『サンブレード』は攻撃スキル。しかも『陽光剣現』中は威力が上昇するという効果を持つ良スキルだ。
さらに〈オニキヒツジ〉は〈火属性〉に弱い。綿でモコモコな見た目しているしな。みるからに燃えやすそうだ。
太陽の光にプラス炎を纏った〈陽聖剣・ガラティン〉の一撃を受け、クリティカルが発生。
〈オニキヒツジ〉はひっくり返る形でダウンしてしまうのだった。
やっべぇ、超気持ち良い手応えだった!
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