第701話 対決、10層フィールドボス〈妖精長〉!




 フィールドを進み、11層へ繋がる門のある大きく開けたエリアに出ると、そこには誰もいなかった。


「いや、いるな。上だ!」


「―――!」


 いるのは空中。


 上からはねばたかせ勢いよく飛んでくる。


 見上げるとそこには俺たちより少し小さめの、妖精の羽を背中に羽ばたかせ、耳がやや尖り、民族衣装のような物を着た男の子が確認できた。こっちにまっすぐ突っ込んでくる。


 いないと思わせての初手奇襲。わりと厄介な戦法の一つだ。初手で大ダメージを与えてくるし防御力や装備が弱いと初見殺しにもなりうる。 


 しかし、来るのが分かっているのなら打ち落とせば良いだけだ。

 俺は〈妖精長〉の姿を捉えると、すぐに二本指で差し、メンバーに伝える。


「ラナ!」


「『聖光の耀剣』!」


 こちらの一手目、遠距離攻撃で迎撃。

 奇襲対策の1つだ。〈妖精長〉の初手はその手に持つ槍での薙ぎ払い。

 勢いよく飛んできて槍を振り回し、また空中に戻っていく。盾でも防げるが、ここでボスを止めないとどのみち空中へと逃がしてしまうため撃ち落とすのが最善だ。


 ラナの単発攻撃『聖光の耀剣』が空中に完成し〈妖精長〉へその光の尖端を向けると勢いよく飛び、直撃した。


「――――!!」


「ナイス!」


 奇襲返し成功。

 ラナの攻撃に撃ち抜かれた〈妖精長〉は奇襲突撃中に迎撃されたことで墜落し、スリップダウンをしてしまう。


「いきなりの総攻撃チャンスだーー! 『ライトニングバースト』! 『ソニックソード』! 『勇者の剣ブレイブスラッシュ』!」


「『騎槍突撃』! 『閃光一閃突き』! 『戦槍せんそう乱舞』!」


「『フォースソニック』! 『スターブーストトルネード』! 『64ろくじゅうよんフォース』!」


「『大聖光の四宝剣』! 『獅子の大加護』! 『迅速の大加護』!」


「『オーラポイント』! 『シールドフォース』! 『挑発』!」


 いきなりの総攻撃だぜ!

 俺は魔法で一発目を放ってから『ソニックソード』で素早く近づきボッコボコにしていった。

 エステル、カルアも移動攻撃スキルでボコボコだ。


 ただ対象が小さいのが難点。

 俺、エステル、カルアで囲ってしまえばラナとシエラの攻撃スペースは無くなってしまうため、ラナは一発デカいのをかました後はバフに徹し、シエラはヘイト稼ぎに徹した。

 ラナが特大のヘイトを稼いでしまっているので、シエラもガンガン稼がなくてはならない。


 とはいえ、想定どおり。いきなり良いのが入ったな。


「――――!」


「起きるぞ! スイッチ!」


「『シールドバッシュ』!」


 そして、ボスのダウン復帰。

 アタッカー組が素早く下がると、入れ替わりにシエラが盾突撃で前に出る。


「――――!」


 ガツンとぶつかられた〈妖精長〉だったがダメージは多くない。ノックバックも僅かなものだ。しかし、これはシエラが前に出るのが目的なので問題は無い。

〈妖精長〉の槍が光り、目の前のシエラを攻撃し始めた。


「『城塞盾』!」


 シエラは無事ラナのヘイトを上回ったな。シエラが防御スキルで〈妖精長〉の攻撃を防ぎ始める。


〈妖精長〉が振り回す槍は2メートル弱もある長い槍だ。これをぶん回し、薙ぎ払い、相手との距離を稼いでくる。しかし距離を離されると飛行されるうえに、魔法攻撃で遠距離攻撃もしてくるため近距離で捌くのが正解だ。

 避けタンクとは相性が悪い相手だな。

 だが、盾タンクが張り付けば飛ばれることは少ないため俺たちのような近距離アタッカーでも対応できるのが良いところ。


 俺たちもヒットアンドアウェイで攻撃し、ダメージを稼いでいく。


「――――!」


「む、『数え槍突そうとつ』が来るぞ。シエラ!」


「『鉄壁』!」


 俺が警戒と要注意を指示していたスキルの一つだ。

〈妖精長〉がスキルを発動。槍を短めに持って突きの体勢を取ると、連続で同じ場所に鋭い突きを放ってくる。これには強い衝撃とノックバック効果があり、衝撃を受けて下がると〈妖精長〉は短めに持った槍を長めに持ち直しいてくる。また下がるとさらに長くなった槍が突いてくる。

 これの繰り返しで大きく距離を稼がれる他、直撃してノックバックすれば次の突きでノックバックダウンを取られかねない強力なスキルである。


 しかしシエラは、『鉄壁』スキルのデメリット「発動中は動けない」を逆手にとって攻撃のノックバックを全て耐える。いいね。


「今だ! 〈妖精長〉のスキルアクション中はチャンス! 攻撃を叩き込むんだ! 『ソニックソード』!」


「ん! 『スターバースト・レインエッジ』!」


「了解です! 『トリプルシュート』!」


 スキル発動中は無防備だ。シエラが受けてくれている間に俺たちが取り付いて攻撃を加えると、突如として〈妖精長〉の羽が光る。これは、周囲範囲攻撃!


「! 離れろ!」


「――――!」


「わっぷ!?」


「きゃ!」


 氷属性の周囲範囲攻撃、『フローズンボム』が〈妖精長〉の回りにばらまかれたのだ。

 氷の爆発に巻き込まれたカルアとエステルがダメージを負う。俺は一早く範囲外に逃げ出せたのでセーフだ。あれ、発動早いからな。カルアとエステルは逃げ遅れた形だ。


「『全体回復の祈り』!」


 すぐにラナのパーティ回復魔法が飛んで全員を回復。

 しかし、〈妖精長〉は空へと飛び立ってしまう。


 ダメージが蓄積するとこうして一定確率で空へと逃げ延びることがあるのだ。

 そして空から一方的な攻撃を開始する所だが、そうはさせない。


「ラナ、撃ち落とせ!」


「まっかせなさい! 『大聖光の四宝剣』!」


〈妖精長〉がまだ攻撃の準備を整えていないうちに攻撃を叩き込む。


「――――!」


「お、耐えるか。なら俺もプレゼントだ。『サンダーボルト』!」


「――――!?」


 一度墜落したため耐性を得たかな? ラナの四宝剣のうち2発を回避して2発が直撃したが、墜落はしなかったため俺が追加プレゼントをする。お、落ちてきた。

 魔法攻撃のシャワーを降らされると反撃する機会が減るので先手最善だ。


 相手が攻撃する前に撃ち落とせ!


 その後、落ちてきた〈妖精長〉だが二本足で着地したためダウンは取れず、残念。

 シエラが接近戦に持ち込んで魔法攻撃を封じつつ、ダメージを稼いでいき、最後は怒り状態となって飛び上がりかけたところエステルが『トリプルシュート』で討ち取った。


 宝箱は〈銀箱〉、中はレシピだった。これは後に〈妖精傭兵装備レシピ〉だと判明する。カルアが着ているやつのレシピだった。しかも全集ではなく腕と足のみしか書かれていないやつ。

 うーん、はずれ。

 これはマリー先輩も持っているレシピなので、売れるかなぁ?




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