第700話 〈妖精ダン〉突入!春のダンジョンには妖精長!
俺たちが〈中上ダン〉に現れると、なんだか注目を集めてしまう。いつもの事だ。
しかし、なんだか日に日にざわめきが大きくなっている気がするな。
「お、おい、あいつらの証を見てみろ。増えてる。証が2つに増えてるよ!」
「しかもありゃ〈鉄獣ダン〉と〈鬼ダン〉じゃないか!?」
「俺らも手を焼いてる〈鉄獣ダン〉と〈鬼ダン〉を1年生ギルドがもうクリアしたって言うのか!?」
「さすが勇者君のギルドだわ!」
「相変わらず先頭の勇者君が素敵!」
「連れてるのはみんなあのクラス対抗戦で活躍したメンバーたちね。上級職5人パーティだなんて……羨ましいわ!」
「1年生でこれなら3年生になる頃には中級上位ダンジョンが全てクリアされそうな勢いだわね」
「俺、まだ一つもクリアしたことがないんだが?」
「〈夏ダン〉で日に焼かれながらガンバレ」
「そんなー」
「ランク1のクセして〈夏ダン〉の環境がむちゃくちゃしんどいんだが?」
「がんば?」
「くっ〈鬼ダン〉行くには戦力が足りない!」
「LVリセット組が多くて戦力が低下しているから仕方ないわよ」
「うおー、友よ早く戻ってこい! さもないと後輩に抜かれるぞー!? とてもマジで!!」
受付を済ませていたらそんな声が聞こえてきた。
どうやらLVリセットの弊害でパーティ構成が崩れたギルドが多くいるようだ。
そういうときはダンジョンではなくクエストを多くこなすといいぞ。QPをゲットして〈道場〉を周回するんだ。(プレイヤー思考)
まあ、その〈道場〉は現在使用出来ないんだけどな。
「みんなお待たせ。手続きが済んだから早速〈妖精ダン〉へ行こうか」
「〈妖精ダン〉、楽しみね! 聞けば雪が見られるって言うじゃない!」
「雪エリアは寒そうですよラナ様。ですが、一度は行ってみたいですね」
「私は春の桜エリアや秋の紅葉エリアに行ってみたいわ」
「ん。秋エリアは食材豊富って聞く。行ってみたい」
これから行くのは四季のあるダンジョン。このリアル世界は夏も冬もあるが、ダンジョンの風景はまた違った趣がある。自然が豊かなのだ。
ラナ、エステル、シエラ、カルアがそれぞれ思いを吐露する。みんな四季の見所を堪能するつもりだな! 俺も堪能してやるぜ!
そして俺たちはそのままダンジョンに潜った。
――――〈四季の妖精ダンジョン〉。
春から始まり下層に行くほど季節が変わる摩訶不思議なダンジョンだ。
上層の1層~10層はおだやかな春の気候。
新緑の若葉が芽吹き、地面では黄色と白の様々な草花が咲きほこり、ダンジョンに来る者を歓迎してくれる。
奥の方には一部桜が咲き乱れているエリアもあるな。あとで行ってみたいなぁ。
ここは環境が大きく変化するダンジョンである。出てくるモンスターも四季に関係したモンスターが登場する。
見た目のおだやかさに油断していると痛い目に遭うからな。気をつけないといけない。
しかし、今だけはこの景色を堪能しよう。それほど美しい景色だった。
「綺麗な場所……」
「風が心地良いわね」
ほら、ラナが心奪われて超素直な気持ちを吐露しているぞ。
シエラの上品さが眩しいです。
みんな思い思いに景色を堪能し、そろそろいいかという所で声を掛ける。
「そろそろ探索に向かおうか?」
「うん。たっぷり鑑賞したわ!」
「満足よ」
「はい。たっぷり堪能いたしました」
「綺麗なところだった」
みんな英気を養えたようだな。あのカルアですら綺麗と口にするくらいだ。
これからの探索にもみんな心をときめかせているのを感じるな。
「良し、では出発だ」
「「「「おお~」」」」
これからどんな美しい光景が待っているのか、そんな期待を体現するかのようにみんなの返事は気合いが入っていた。
歩いて数分で第一モンスター発見。
「これが妖精?」
「上層に出現する〈はぐれ妖精〉だな。はぐれと付いているクセに単独で現れたところを見たことは無いんだが……」
現れたのは光の球に妖精の二対四枚の羽を持つ妖精種。
この〈妖精ダン〉で最も弱い〈はぐれ妖精〉というモンスター、の
うん、中級上位ダンジョンともなれば通常モンスターは基本は集団だ。単体で出てくるのは大型モンスターくらいのもの。〈はぐれ妖精〉は大型モンスターでは無いので当然集団で登場する。〈ダン活〉プレイヤーからは「全然はぐれてねぇじゃん!?」と毎回ツッコまれていたメジャーなモンスターだ。
主に体当たりか鱗粉スキルで状態異常にしてくるので、状態異常に耐性を持つタンクが挑発すれば楽勝。
「『インパクトバッシュ』!」
「――――!」
シエラが『
ノックバックしたり墜落するモンスターたちに俺たちもとどめを刺していく。
「どうだシエラ、浮遊モンスターは」
「少し捉えるのが難しいけれど、慣れれば問題無いと思うわ」
今回タンクのシエラがなぜ『
この〈妖精ダン〉に登場する妖精モンスターはほとんどが浮遊型だ。
浮遊型は飛行型とは違い地面から1メートルくらいのところで浮いているモンスターたちのことだ。高度はさほど高くは飛べず、飛んだとしても大体武器を伸ばせば
つまり近距離アタッカーでも届くモンスターということだ。
ただ、浮いているモンスターというのは珍しく、シエラは〈
だからまずはシエラを浮遊型に慣れさせる所から始めたわけだな。
「おっと、次が来なさったぞ。今度は〈フェアリー〉もいるな。
〈フェアリー〉種、人型に二対四枚の羽を持ち体長20cmほどモンスターの一種でイタズラ好き。花のモチーフにしているため愛らしい。
あと妖精は基本女型だ。男型もいるが
「
「わかったわ」
〈はぐれ妖精〉と〈フェアリー〉の混成集団と遭遇し、シエラが素早く前に出る。
そのまま全てのヘイトを取って立ち回り、俺たちも浮遊型を相手に通常攻撃で攻める。
「やっぱ浮いてると攻撃を当てにくいな」
「はい。それに対象が小さくて素早いのも当てにくいポイントですね」
「ん、手数で攻めれば当たる」
「カルアの武器は短剣だからな。短剣は当てやすそうだな」
逆にエステルの両手槍は当てるのが難しいようだ。しかも突きだと余計に当たらない。
「『シールドバッシュ』!」
「――――――!!」
「シエラサンクス。――エステル」
「『ロングスラスト』!」
シエラが『シールドバッシュ』で打ち落とし、ノックバックで動けないようにさせた〈フェアリー〉にエステルがズドンと決めた。
シエラの大盾は大きい分当てやすいようだ。ふむ、俺も盾攻撃を通常攻撃に加えてみる。
「お、当たった! んで、こうか!」
「――――!」
シエラを真似して盾で殴り、妖精が弾かれたところを剣で切り上げると、割と簡単に浮いたモンスターを捉えることが出来た。
なるほど、当てにくいなら当てる状況を作れば良いと。これは初めての試みだな。
ちょっと楽しくなってきたぞ!
こうして俺たちは普段とは違う趣のあるモンスター相手に練習を重ね、みんなだいぶ妖精との戦闘のコツを掴んできたところで先へと進んだ。
そしてまずは第10層。フィールドボス。
今回の中級上位ダンジョンは〈馬車〉を使わず、じっくり攻略しようと決めている。
なので10層フィールドボスもスルーせずに戦闘だ。
「ここの10層を守るのはボス妖精の〈妖精長〉。人型で槍を持ち、人より少し小さいくらいの大きさで飛行型、今までの妖精型モンスターより断然大きい体を持つため、地面に足を突いて戦闘したりもする」
付け加えると背中には二対四枚の羽を付けた男型のボスだ。
割とイケメンでかっこいいので倒すべし。
「魔法も使って上空から攻撃してくることもあるからそういうときはラナ、撃ち落としてやれ」
「任せてよね!」
それからいくつか作戦を伝え、初の妖精ボスへと挑戦する。
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