第666話 ゼフィルス先生が無事〈51組〉の担当に就任!?
「カタリナさん、無事再発現して良かったですわ」
「リーナさんが勇、いえゼフィルスさんを連れて来てくれたおかげよ。ゼフィルスさんにもリーナさんにもいくら感謝しても足りないわ」
両手をリーナの手に絡めて深く感謝の眼差しを向けるカタリナさん。
なんというか、尊い光景だ。
「カタリナってば猫被ってるよ」
「勇者、いえ、ゼフィルス君の前ですからね。さすがに本人の前ではあれは出さないでしょう」
後ろから付いてきていたフラーミナさんとロゼッタさんがこそこそ喋っていたが、俺の耳には入らなかった。
そのままカタリナさんが顔だけこちらに向け若干潤んだ瞳を向けて言う。
「ゼフィルスさんも、本当にありがとうございます。その、私、もうダメだと思っていましたの。皆さんが高位職になる中、私だけ取り残されてしまうものだと」
「そうならなくて良かったよ。今回は
本当は全
後ろから幽鬼のように俺に忍び寄るラミィ研究員の手前、たまたま知っていたという
「ゼフィルス氏、もう少し詳しい話を――」
「ああ、そういうのはまた今度ということで」
「今が〈転職制度〉の最盛期なのだよ! 今日問題が無ければダンジョン週間が終わる土日に〈転職〉が行なわれるのだ! 今が水曜日だから残り3日、時間が無いのだよ! ゼフィルス氏の知識を今ここで全て放出してくれたまえ!」
いや、何のための研究だよ。答えわかったら研究終わっちゃうじゃん!
熱く語るラミィ研究員には悪いが俺は全部を教える気はない。
せいぜいヒントを教えるくらいだ。
カタリナさんのは全部教えたわけではないし多分セーフだろう(アウト)。
とそこへ話に割り込まれたカタリナさんがラミィ研究員に抗議する。
「ちょっとラミィ研究員、今私が大事な話をしているので後にしてくださらない?」
「私の方が大事な話をしているのだよ!? これは学園を、いや世界を巻き込む非常に大事な問題なのだよ!?」
「いや、研究しろよ」
おっとつい本音がポロリと。
「ぐぬぬ。確かに今知った情報だけでもかなりの精査が必要だ。この〈転職制度〉に活かせるかというと確かに時間が、しかしゼフィルス氏の手を借りれば!」
「ではそっちの研究をしっかりこなしてからアプローチしてくださいですわ。ゼフィルスさんは忙しいのです」
おっとリーナもこっちに回った。
ラミィ研究員は「なぜこの大事がわからんのか」と歯ぎしりしていたが、その一歩も退かない姿を見て俺も譲歩することにした。
「ではこうしましょう。ラミィ研究員、〈51組〉の現在の高位職〈転職〉発現率はどのくらいですか?」
「ん? ふむ、現在高位職が発現している者はカタリナ嬢を含めて3名だ。残り26名に関しては現在様々な手法で発現条件を探っているが、未だ発現までは届いていない」
そうだろうな。
2年生、3年生は〈転職制度〉により高位職の発見数が非常に増えたらしい。
全体の4割にも上るそうだ。爆発的に高位職が増えている。
しかしその理由は条件の一つ〈○○してモンスターを○○体倒す〉系がクリア出来ていなかったせいだ。これをクリアしたために高位職が発現した者が増えたのだ。
だが1年生は4月の最後にやった実験のせいで、そもそも〈○○してモンスターを○○体倒す〉系を最初からクリアできている。
だから高位職の発現数が少ない。
学生数の4割が高位職、これがこの学園の現在の平均数というわけだな。
しかし、2年生、3年生に比べ1年生の高位職の伸びは乏しい。
そこで俺は提案する。
「では俺がその26人にこれだという訓練を施してみましょう。それで高位職が発現するかは分かりませんが――」
「是非頼む!! 第一回目から今日まで新たに発現した者は皆無だったのだ!」
速攻で食いついてきた。
どうやらここ数週間でラミィ研究員の薫陶を受けステップアップ出来た者は
まあそうだろうな。エリートになれる素養を持つ〈51組〉を担当して、何の成果もあげられませんでしたではラミィ研究員の今後が大変なことになることは想像に難くない。
とはいえカテゴリー持ちはそもそも高位職の難易度が高いので仕方のない面もあるけどな。
こうして俺は、学園の研究員の許可を得て、堂々と様々なカテゴリーが集まる〈51組〉のクラスを指導できるようになったのだった。
ふっふっふ。高位職が発現するか否かは分からない? それは嘘だ!
全員高位職を発現させてやるさ!
そしてゆくゆくは我が〈エデン〉に――ふははははは!!
ということで俺氏ゼフィルス先生のスパルタ指導がその日から始まった。
俺は〈51組〉の教室の教壇に堂々と立ち、クラスメイトたちが注目する中説明する。「カタリナさんは無事高位職が再発現出来ていた」そう説明すると教室内がざわめきに包まれた。
みんな口々に「カタリナさんよかったわ」「ぐすぅ、カタリナさんのお辛そうな姿は胸が痛みましたわ」など再発現を祝う言葉がカタリナさんに届けられた。
うむ、良かった良かった。良いことをした。
と、それだけでは終わらないんだった。
「もう一つ大事な話がある、数日の間だが、俺が〈51組〉の指導役に抜擢される事になった」
ざわめきが大きくなる。そりゃあそうだろう。
ここにはお嬢様やご子息様など貴族の子も多い。
故に「公爵」のラミィ研究員が配属されていたのだろうが、俺はそんな地位ないからな。
しかし俺は臨時教員で、実際この学園で教員として教鞭をとっている。それである程度は納得できるだろう。
「とはいえこの〈転職〉は人生に直結する大事な事柄だ。俺の指導に不満があるという人も居るだろう。もちろん俺だけではなくラミィ研究員の方へ教えを請うてくれても問題は無い」
そう言って説明するが、不思議と反発する意見は出なかった。むしろ好意的な感触が複数返ってきた。
「きゃ! 嘘、本当にゼフィルス先生の指導なの!?」
「やったわ! これは勝ちよ! わたくしたちも高位職の仲間入りよ!」
「俺、前回の勇者講演の応募に落ちてさ、ありがてぇ」
「俺もだ」
「俺なんか〈エデン〉の面接も落ちたんだぜ」
「クラス対抗戦でこの俺を打ち破った勇者の教鞭か。よかろう」
なんだか尊敬の眼差しまで感じるぞ?
そう思って首を傾げていたら隣に来たリーナが説明してくれた。
「ゼフィルスさんは大きな実績を持つ最強アドバイザーですのよ。今のご時世、高位職研究の最先端を行くのがゼフィルスさんだと思われていますわ。だからこそ、そんな方に教えを請えること自体、幸運であっても不運であることなんてあり得ません。それに、こう言ってはなんですがラミィ研究員の実績は皆無ですから」
ああ、うん。理解した。
え? 俺って高位職研究の最先端を行く人物って思われてるの?
確かに考えてみれば間違ってない。実績もカタリナさんの再発現をしたことで満たしているし、どうやら不満に思う学生は皆無だったようだ。
よし、ポジティブに考えよう。
好感触なら〈エデン〉に誘ってもオーケーがもらえるかも知れないからな。
さて、時間は有限だ。
さっそく誰がどのカテゴリー持ちで、どんな
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