第658話 南東方向激突戦、伏兵展開、切り崩しからの攻勢
――【一騎当千】の五段階目ツリースキル『
中距離の連打スキルだが、その連打の数が半端ではない。本当に千発放っているかのような超連打。
スキルの発動時間が長く、その間常に攻撃を放ち続ける。最初から最後まで、何の抵抗もしていないとまず戦闘不能になると言われる強スキルだ。
これをダウン中に食らえばまず助からない。そんな攻撃。
五段階目ツリーの攻撃をなぜ使えるのか? と思うかもしれないがなんて事は無い。
スキルは
普通なら五段階目ツリーが開放されるのは上級職LV30。
『
「うおおおおお!!」
レナンドル先輩がまさにスキルを発動し吠えた瞬間、こちらもリカが四段階目ツリーで開放された防御スキルを発動する。
「――『
――『制空権・刀滅』は防御スキル。
名称の通り、空中からの侵入者を撃退するスキル。
この空中とはリカの攻撃範囲、刀が届く範囲、つまり間合いだ。
『制空権・刀滅』とは、発動中のリカの間合いに入った攻撃を、入ってきた端から全て叩き落とす防御スキルなのだ。
これがどういうことかというと、
「はあああ!!」
「な、なにぃ!?」
レナンドル先輩が驚くのも分かる。
高速の槍がリカの間合いに入った瞬間、リカの刀が反射で振るわれ槍を弾く、息もつかせぬ間に再度槍が間合いに入った瞬間、また即反応した刀が槍を再び叩き落す。それが繰り返されるのだ。何度も何度も。そしてリカには届かない。
傍目で見れば、超速の
秒間で十数発の突きが放たれ刀で弾かれる、複数の火花と金属音が飛び交い、激しい攻防が繰り広げられていた。
「おおお! すげぇ! テンションが上がる!!」
思わず感動につぶやいてしまったぜ。リカとレナンドル先輩の激突、超かっこいい!
そして、結果は一目瞭然。槍の攻撃全てがリカへ届く前に、否、むしろ間合いに侵入した瞬間、瞬時に叩き落とされている。
レナンドル先輩からしたらおそらく切り札だったのだろう攻撃が防がれ、驚愕に目を見開いていた。
リカは【先陣の姫武将】。
攻撃だけではない。防ぐ一芸にも
今までの単発防御スキルではない。これが上級防御スキルだ!
一度発動してしまった『
ヒーラーを屠るチャンス!
「『オーラヒール』!」
俺は感動しつつもすぐにリカを回復。先ほど受けたダメージを回復する。
「ここで伏兵を展開だ! ルル、パメラ、アイギス、行くぞ!」
「あい、なのです!」
「了解デース!」
「はい!」
「ノエル、ラクリッテ、シェリア、ここを頼んだ!」
「任せてね」
「は、はい! が、がんばります!」
「お任せください」
〈テンプルセイバー〉は1名がユニークスキル発動中で動けず、2名がリカに吹っ飛ばされ、1名がリカと対峙中。これ、ほとんど先陣のリカの戦果です。相手に隙が出来た今が攻撃する最大のチャンスだ!
全メンバーを展開して攻勢に出る!
「な!」
急に出てきた伏兵に〈テンプルセイバー〉メンバーに動揺が走った。
「歌っちゃうよー! 『プリンセスアイドルライブ』♪」
ノエルがユニークスキルを発動。音楽BGMが流れ強力なバフが掛かっていく。
「行ってきてください〈氷精霊〉。『エレメントリース』! 『精霊召喚』〈火精霊〉! 『古式精霊術』! 『大精霊降臨』! 『イグニス』! ――イグニス様、お願いします」
「――――」
シェリアは遠距離魔法が意味をなさないので『エレメントリース』で〈氷精霊〉を貸し出しリカのVITを上昇させて援護。さらに〈火精霊〉を呼び出し、『大精霊降臨』でイグニスを降臨させた。
イグニスは接近戦型、そのままシェリアはイグニスを【クルセイダー】の彼へ放つ。
ラクリッテはシェリアやノエルを守るタンクだ。頼れるタンクがいると前衛が自由に動ける。
「ここから先へは行かせんぞ!」
「押し通る!」
【闇落ち騎士】の彼が俺たちの前に立ちはだかった。
なぜだろう、彼らが巨城へ攻め込もうと押し通ろうとしてきたはずなのに、いつの間にか立場が逆転している件。よくある事だな。
「『ダークオブテンペストソード』!」
「『ライトニングバニッシュ』だ!」
〈闇属性〉を纏った飛ぶ斬撃の範囲攻撃の攻撃だが、俺も〈雷属性〉の単体攻撃をぶつける。
結果、相殺。
「『騎槍突撃』!」
「『巨大手裏剣の術』!」
攻撃の隙を突いてアイギスとパメラが攻撃を放った。下級職とはいえ、上級職に敵わないというわけではない。攻撃は通るのだ。
しかし、横から滑り込んできた者が【闇落ち騎士】を庇った。
「『カバーアクション』!」
先ほど吹き飛ばされ、回復して戻ってきた【聖騎士】の上級生だ。
シエラも得意とするカバー系を使い、かばうをしてきた。
ガキンと大盾で手裏剣を弾き飛ばし、続いてのアイギスの攻撃をすんでのところで防御する。しかし、防御スキルは手裏剣を弾いた時点で失っていたため、アイギスからの攻撃は通常のダメージだ。
そのダメージの大きさに驚愕する【聖騎士】の上級生。
「アイギス後輩か! まさか、これほどの力が!」
「全ては〈エデン〉のおかげです。私は〈エデン〉に所属し、強くなったのです! 『スラストゲイル』!」
「『ガードアクション』! ぐっ、ダメージが!?」
続いてアイギスの風を纏った突き攻撃。
防御スキルを合わせる【聖騎士】だったが、彼が覚えているアイギスとは似ても似付かない大きなダメージに驚愕を隠せなかった様子だ。
アイギスは〈エデン〉に入り〈姫職〉へと転職。すでにレベルもカンスト間近となり、以前のアイギスとは比べ物にならないほど強くなっている。
さらにアイギスの武器〈アーススパイラルランス〉には『貫通強化LV5』が付いていることも大きいだろう。防御スキルをいくらか貫通し、ダメージを通してしまう。
そしてこの『貫通強化』は【姫騎士】ととても相性が良い。
「行きます。ユニークスキル、『姫騎士覚醒』!」
攻撃が貫通するということは手数で攻めればいつかはHPが尽きてしまうということだ。
そして【姫騎士】には、スキルの手数を大きく上げるユニークスキルが存在する。
そのユニークが発動した瞬間、【聖騎士】の彼も目を見開きながらそれを発動していた。
「何!! くっ、ユニークスキル発動! ――『ビショップ』っ!」
アイギスが攻撃を開始しようとしたタイミングで、ギリギリ【聖騎士】のユニークスキルが発動する。
それは防御スキル。【堅固盾士】のユニークスキル『大防御』と同じような効果で、発動中はノックバック無効、状態異常無効、ダウン無効になるほか、ダメージを90%以上減少し、属性攻撃からのダメージ受けると吸収回復するという、ハイスペックなユニークスキルだ。
「『ロングスラスト』! くっ、厄介ですね」
アイギスは一発目を打ち込んだ瞬間、すでにダメージが多く入らないことに気がついたようだ。アイギスも「騎士爵」だ。そのユニークスキルがどんなものかも分かっているのだろう。
いくら『貫通強化』が付いていても、元々ダメージを90%カットしてしまう『ビショップ』相手では微妙だ。貫通しても20%~30%ダメージが増すだけでは【聖騎士】は倒せない。【聖騎士】には自己回復スキルがあることをアイギスは知っていた。
「ならば、『オーバードライブ』!」
「な! 俺を無視するだと!」
アイギスが向かったのは俺が抑えていた【闇落ち騎士】。
さすがにレベルがかなり高いのだろう。俺の攻撃でも今までの相手より断然ダメージが入らない強敵だった。
少し前まではヒーラーが回復していたためさらに倒しにくかったが、今はルルとパメラがヒーラーに躍りかかっているので倒すチャンスだ。
アイギスは【聖騎士】の上級生が倒せないことが分かると、『姫騎士覚醒』の効果が切れる前に対象を変えてきたというわけだな。
レナンドル先輩の方へ向かわなかったのは良い判断だ。多分、今のアイギスでは返り討ちにあっていた可能性が高い。
「アイギス後輩がそっちに行ったぞ! 気をつけろ!」
【聖騎士】の彼が忠告したことで俺に集中していた【闇落ち騎士】がアイギスに気がつく。
瞬間、バックステップで逃げようとするが、そうはいかないぜ?
「『聖剣』!」
「『ブラッディ――がはぁ!?」
一瞬の早業が炸裂。
『聖剣』は発動がむちゃくちゃ早いのだ。相手は迎撃しようとしてきたが、長い技名を言おうとしたのだろう、発動できずにこれが直撃した。
さらに付属効果で固まってしまう。『聖剣』が直撃すると、ごく短時間であるがノックバックに近い、固まるという現象が起こるのだ。
ダメージもそこそこ入った。
そこを突かないアイギスではない。
「『閃光一閃突き』!」
光属性の一突き。
【闇落ち騎士】は〈闇属性〉の鎧を装備すると補正でステータスが上昇する。
しかし〈闇属性〉の鎧は大体が〈光属性〉弱点なのだ。
「ぐはぁ!?」
大きくダメージが入ったな。
もちろん『姫騎士覚醒』状態のアイギスがこれで止まるはずが無い。
残り5秒ほどで9発の攻撃を叩き込んだのだ。
「『プレシャススラスト』! 『ロングスラスト』! 『トリプルシュート』! 『スラストゲイル』! 『ロングスラスト』! 『プレシャススラスト』! 『レギオンスラスト』! 『ロングスラスト』! 『閃光一閃突き』!」
「『闇斬り』! くっ、ああ!?」
「俺からもプレゼント! 『
「ああああ―――!?」
【闇落ち騎士】の彼はこの攻撃に対抗しようとするが、対抗しきれず、追加で俺の『
その後、1人のヒーラーを倒し帰ってきたルルと一緒に、俺とアイギスは『ビショップ』が切れた【聖騎士】の彼に躍りかかった。
「くっ、ギルドマスターは何やってんだ!」
「レナンドル先輩ならリカとラクリッテ、ノエルが全力で防いでるぜ」
「とう! 『ローリングソード』!」
「『騎槍突撃』です!」
「おおおお!?」
狙われた【聖騎士】が悲鳴を上げながら俺とルルとアイギスの相手をしてくれるが、さすがにヒーローと勇者と姫騎士を相手には荷が重い。
「くっ――『カバーアクション』!」
「行かせないのですよ! 『ロリータタックル』!」
「何!?」
【聖騎士】の彼がカバーを使いレナンドル先輩と合流しようとしたが、それをルルが攻撃して止めてしまう。実はカバー系は移動中に攻撃を受けると
今回、ルルの必殺おでこ頭突きは鎧に阻まれ相手の急所に入らなかったが、相手のスキルを失敗させることには成功した。
でも相手は鎧。ガツンッ! っていい音がしたけれど、ルルのおでこは大丈夫だろうか?
「び、ビックリしたのです!」
ちょっとおでこに両手を当てているルルが可愛いです。
大丈夫そうだった。
「ぐっ! 『ホーリーヒール』!」
【聖騎士】は耐えるためだろう。自己回復スキルでダメージを回復するが、回復に気をとられて隙だらけだぜ!
アイギスが行き、俺も行く。
「続いていきます! 『閃光一閃突き』!」
「じゃーん! 『ライトニングスラッシュ』!!」
「あががががっ!?」
「ルルも行きます! 『ロリータオブヒーロー・スマッシュ』!」
「!!」
大技3発直撃。
最後に放ったルルの突攻撃が見事に【聖騎士】を吹き飛ばし、彼の着地する瞬間を狙い、俺が追撃。
「『シャインライトニング』!」
「うおあ!!」
「やったのです! さすがゼフィルスお兄様なのです!」
【クルセイダー】の彼のユニークスキルが切れたことを確認して範囲魔法を放った。これが距離が離れ油断していた【聖騎士】に直撃、着地の瞬間だったので足を滑らせスリップダウンしてしまうのだった。
そこを逃す俺たちではない。
「アイギス、ルル、総攻撃だー!」
「はい! 大チャンスです!」
「あいなのですーー!」
いくら防御に秀でる【聖騎士】でもこれを受けきることはできず、総攻撃を受けた【聖騎士】の彼は退場していったのだった。
その直後、パメラがヒーラーの一人を倒し終え、帰ってくる。
「こっちも片付いたデース! 楽勝デス!」
「おし、ヒーラーは片付いたな!」
その報告と共に俺たちは次の目標へと向かう。
ダウンから復帰した【テンプルナイト】の上級生とレナンドル先輩はリカ、ノエル、ラクリッテによって抑えられていた。
【クルセイダー】の上級生、そちらはシェリアが『イグニス』を降臨させて足止めしている。
伏兵展開によってヒーラーを含む4人を退場させることに成功したぜ!
このまま全員を倒せるか、と思っていた所で、リーナから『ギルドコネクト』で連絡が届いた。
「『ゼフィルスさん、報告です! 西側では〈北西巨城〉は陥落し、メルトさんが退場いたしました!』」
それは、〈エデン〉で初めての退場者の報告と、巨城陥落の報告だった。
―――――――――――――
後書き失礼いたします。お知らせです。
待望の小説3巻とコミカライズ1巻の発売日が決まった事をお知らせいたします!
同月販売で
小説3巻の発売日は2022年9月10日!
https://kakuyomu.jp/users/432301/news/16817139555995101415
コミカライズは2022年9月1日です!
https://kakuyomu.jp/users/432301/news/16817139555994906935
また、本日よりTOブックスオンラインストアにて予約が開始されましたことをお知らせいたします!
特典など詳しくは近況ノートで!(イラストの添付有り)
宜しかったらご確認ください!
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