第619話 机の中に手紙が!? こ、これは! 決闘戦?




「おはよう~。――おお?」


 月曜日、久しぶりに感じる授業を受けるべく教室に入った所、なんだかやたらと机に齧り付いて勉強をしている四人組がいた。

 言わずもがな、〈天下一大星〉のメンバーたちだ。

 例のクラス対抗戦では、活躍出来たような、出来なかったような、微妙なポジションだった。


 だからだろう、来たる臨時テストに向けて猛勉強していると思われる。心の中で応援を送っておこう、がんばれ~。

 こいつらはなぜか声に出して「がんばれ~」と言うと怒るのだ。

 プライドが高いからかな? 例のクラス対抗戦より、あげて美味しい〈天プラ〉さんとか呼ばれ始めているが。


 そんな光景を見つつ、他のクラスメイトたちに挨拶しながら自分の席に座って机の中を確認すると、変な物が見つかった。


「果たし状?」


 はて?

 取りだしてみた手紙っぽいそれには、表にそんな文字が書いてあった。

 真っ白の、それこそ汚れ一つ無い純白な封書の表には、達筆な筆遣いで見事に「果たし状」と書かれていたのだった。古風すぎる。


 果たし状とは果し合い、つまり〈決闘戦〉がしたいという意味になる。どこかのギルドが〈エデン〉に〈決闘戦〉をしたいと申し出てきたのだ。

 しかし今時机の中に手紙で知らせてくる人がいるとか、驚いたわ!


 俺は一度首を捻り、裏っ返す。

 良かった。宛名は書かれていないが、差出人は自分の所属を書いてくれていたようだ。

 そこに書かれていたのは、


 ――〈テンプルセイバー〉。


 ふむ。

 確か、つい最近Cランク落ちした元Aランクギルドで、最近落ち目だと何かと話題にされているギルドの名だったな。

 うちのギルドとは、ほんの少し縁がある。

〈エデン〉メンバーの1人、アイギスが〈テンプルセイバー〉の下部組織ギルド〈ホワイトセイバー〉の元所属だったのだ。


 とはいえ今のところ〈エデン〉と〈テンプルセイバー〉自体との交流は皆無なので、いきなり果たし状を送られてきてもよく意味が分からない。これが〈決闘状〉であれば、「ねぇねぇ〈決闘戦〉しない?」みたいなお誘い的な意味になるが、〈果たし状〉だと「決着を付けよう、この〈決闘戦〉でな!」みたいな意味になる。それはそれでかっこいいが、しかし〈テンプルセイバー〉と決着? 何か白黒つけなくちゃいけない事柄があっただろうか? はて?



 ふむ、とりあえず手紙を読んでみよう、果たし状を貰ったことなんて初めてなので、ちょっとワクワクする気持ちで封を開け――ようとした所で、


「皆さんおはようございます~」


 我らが担任のフィリス先生登場。

 少し新任という雰囲気が抜けてきたかな? と思うほど最近はスーツが板に付いてきている。美人の先生だ。


 残念だが果たし状の確認はまた後でにしよう。


「あ、そうだゼフィルス君」


「はい。何でしょうフィリス先生?」


 果たし状を仕舞った所で、フィリス先生から声が掛かった。


「学園長先生がお呼びなのですが、放課後は時間ありますか?」


「学園長先生が、ですか?」


 はて? なんの用だろう? 心当たりがありすぎて分からないな。


 クラスの、というか〈エデン〉メンバーの視線を集めつつ俺は考える。

 今日の放課後はギルドで集まって昨日ゲットした〈芳醇な100%リンゴジュース〉の試飲会を開催することになっていた。ラナからすごい圧の視線を感じる。

 結局昨日、どうせなら全員で集まってから飲もうという事に決まり、試飲会は今日になったという経緯があった。


 とはいえ〈芳醇な100%リンゴジュース〉の試飲会をするため行けません、というのは断る口実としては弱いので俺は頷くしかない。


「いいですよ」


「よかったわ。では放課後〈学園長室〉行ってくださいね」


「分かりました」


 フィリス先生に頼まれては仕方がない。

 後でラナを宥める方法を考えておかなければならないな。

 次の休み時間の予定を考えつつ、そうしていつも通り授業が始まった。




 チャイムが鳴って放課後。


 結局ラナを宥めるのと、学園長呼び出しの理由を問い詰めるシエラたちの対処で休み時間は常に〈エデン〉メンバーに囲まれ、果たし状は読めなかった。残念。


 机の中から取りだした果たし状を、とりあえず忘れないようにポケットに入れておき、そのまま学園長室へ向かう。


 ちなみに試飲会は俺が学園長室から戻り次第開催予定とした。

 そう時間は掛からないだろう。多分。


 でも時間が掛かるとラナが拗ねるため、今回は〈セグ改〉で向かう。

 学園長室があるのは学園の中心地に建つ〈ダンジョン公爵城〉、通称〈中城〉の中だ。

 校舎から〈中城〉までは少し距離があるからな。


 今回呼ばれたのは俺一人だったため、久しぶりに〈セグ改〉に乗って風を切って進む。

 もちろん安全運転だ。少し注目を集めてしまった気がする。


 5分くらいで到着した。

 相変わらず見事なお城だ。


 門番さんに学園長に呼び出されたことを告げると、すぐに通された。

 え? 顔パス? 俺も有名になったものである、参っちゃうぜ。……冗談だ。


「ようこそお越しくださいました。学園長室へご案内いたします」


 前にも見たことのあるメイドさんに連れられて、今度は寄り道せず真っ直ぐ学園長室へと案内される。

 学園長室のドアをメイドさんがノックし「学園長、ゼフィルス様をお連れいたしました」と言えば、中から「うむ、入るといい」と声が届く。


 久しぶりに中に入ると、そこには意外な人物がいた。


「あれ? ユーリ先輩?」


「やあ、ゼフィルス君、昨日ぶり」


 ソファーに座って居たのはラナのお兄さんでもあるユーリ先輩だった。

 昨日会ったばっかりで近いうち連絡すると言われたばかりだが、早速会ってしまった。


 学園長の呼び出しとはユーリ先輩関連の話だろうか?


 そう思った所で学園長室の奥のデスクから声が掛かった。


「こんにちは、ゼフィルス君。呼び出しに応じてくれてありがとう」


「あ、学園長先生、こんにちは」


 ユーリ先輩に気を取られて学園長のことをうっかり忘れていた。

 とりあえず、無難な学生の挨拶をする。


「うむ、立ち話もなんじゃ、かけたまえ」


「では、失礼いたします」


 学園長に促され、ユーリ先輩と対面の、いつも座っているソファーに座る。


 はてさて、何の用でしょう?




 ――――――――――――――

 後書き失礼します。

 小説02巻についてお知らせです!(新情報・見所!)


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 マリー先輩視点、

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 でお送りする予定です!


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 02巻では新しくシエラ、ラナ、エステル、カルア、リカ、のステータスが記載されます。ステータスにはキャラのラフ画が載っています。みんな素晴らしいイラストですので必見です!


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 あとは、カルアとリカのカットされた職業ジョブ発現条件とかも載ってたりしますね。


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