第598話 勝利の余韻。連合最初の陥落はどこから?




「勝ったぞー!!」


 上級職【カリバーンパラディン】に就くラムダ君が退場していったところで俺は思わず叫んだ。


 いやあ、いいバトルだった。

 楽しかったぁ!

 まさか1年生のこの時期に上級職、しかも高の中の【カリバーンパラディン】が居るとは思わなかった。


 思い出すのは【カリバーンパラディン】のユニークスキル『エクスカリバー』、そして【勇者】のユニークスキル『勇者の剣ブレイブスラッシュ』とのぶつかり合い。

 あの高揚感、あの衝撃、思い出すだけで顔がにやける。


 なんだあれ、むちゃくちゃ心躍ったんだけど!

 充実感と感動がすごい。いやあ、すんごい!

 あのぶつかり合い、とても言葉では言い尽くせない! 勇者テンションマックスだ!

 もうどんな敵が現れてもテンションの赴くままに突っ込んでしまいそうだ。

 パナいわぁ。


 だって【カリバーンパラディン】だぜ? 何しろどんなゲームでも大体人気上位に君臨する【聖騎士】の上級職だ。非常に優秀で〈ダン活〉でもその例に漏れず人気の高い職業ジョブだった。


【カリバーンパラディン】の魅力は強力なタンクとアタッカーの素質にある。

 五段階目ツリーや六段階目ツリーになると自分の周囲に聖属性のフィールドを張れるようになったり、聖の力で味方への罠や環境に非常に強い耐性を得ることができたため、上級ダンジョンではタンクとして引っ張りだこだった。


 ユニークスキルが攻撃寄りなので察しているかもしれないが、【カリバーンパラディン】はタンクだけではなくアタッカーとしてもかなり優秀だ。強力な攻撃スキルをいくつも覚えるためダメージディーラーのアタッカーとしても育てることが出来る。

 もちろんその時もホーリーフィールドを張れるため、アタッカーとして育てた場合も上級ダンジョンではよく使われていた。


 彼はアタッカー寄りの構成だったな。タンクも出来るのでアタッカー兼サブタンクかな?

【カリバーンパラディン】はどのように育てても強いので初心者にはオススメな職業ジョブだった。

 もちろんベテランにもオススメだ。むしろ初心者に勧められるほどの強力な素質を持つ【カリバーンパラディン】をベテランが育てたらどうなるか? とんでもないものが出来上がるぞ。俺も良く育てたものだ。


 しかし、この充実感はそれだけではないな。

 今回、あの【カリバーンパラディン】だけではなく、ほかにも中々に強い二人の援護要員もいたことが充実感に拍車を掛ける。


 中々鋭い攻撃だった。あれ、優秀だ。

 特にあの双剣使いの女子なんて、俺が一番嫌がるタイミングを計って攻撃してきたからな。マジ回避できなかった。あれは相討ち覚悟で倒すしかない。相討ち狙いで来られるって厄介なんだ。


 砲撃男子は完全に牽制要員だったな。遠距離狙撃攻撃なんて勇者には効かない。

 スキルの発動さえ分かってしまえばサイドステップである程度回避は可能だ。気が付かなくても『超反応』が仕事をするため被弾する可能性は低い。

 そして俺のリズムを崩した上での【カリバーンパラディン】の攻勢だ。あの連携、とても良かったぜ。


 今回の決め手は【救世之勇者】の『クールタイム軽減LV10』、そして『勇気ブレイブハートLV10』だ。

 この『クールタイム軽減』が非常に強力なスキルで、LV10の時クールタイムを半分にまで減らしてしまうパッシブスキルである。半分? ああ、聞き間違いじゃないぞ、本当に全スキルと魔法のクールタイムが半分になるのだ。


 さらにそれだけではなくLV10になると、1戦闘1回制限や、1試合1回制限のある〈スキル〉〈魔法〉の上限をプラス1回にしてくれる効果も付くのだ。つまり、俺は〈拠点落とし〉中に『勇気ブレイブハート』を2回使うことが可能となる。マジ半端ない。


 あの三人の連携がとても良かったために俺は切り札の『勇気ブレイブハートLV10』を使い、まず一番手ごわい相討ち狙いの双剣女子を退場させ、次に砲撃男子を退場させた。


 ラムダ君は俺にスキルが効きづらいと看破していたので通常攻撃で攻めてきたのは良かったが、それに囚われすぎて後手に回ったのが敗因だったな。いや、後手に回らざるを得なかったのか。

 おかげで二人が退場する隙を作ってしまった形だ。


 しかしだ、二人の退場を無駄にせず、あのタイミングで『審判の剣ジャッジメントセイバー』で俺を討とうとしたのは良かった。

 普通ならヒットしていたな、クリティカルでダウンを取られてもおかしくはないタイミングだった。まさに勝利の一撃。かっこいい。だが普通のタイミングなら、だ。


 今回ユニークスキル『勇気ブレイブハート』中、AGIが2.8倍に上がっていた俺だ。残念ながらあのタイミングでも迎撃が間に合う。

 結果、クールタイムが半減され、明けたばかりの『勇者の剣ブレイブスラッシュ』を叩きつけられて返り討ちにされてしまった。


勇者の剣ブレイブスラッシュ』のクールタイムはユニークスキルの中でもダントツで短く、LV5の時点で180秒だ。『クールタイム軽減LV10』のおかげで90秒で再使用が可能となる。


 おかげで『勇者の剣ブレイブスラッシュ』での対応が間に合い、さらに『勇気ブレイブハート』も加わったユニークスキル二つが乗った一撃で迎撃したのだ。

審判の剣ジャッジメントセイバー』は強力なスキルではあるがあくまでスキル。ユニークスキル2つ相手には太刀打ちできず、撃ち負けた形だな。


 改めて自分のHPを見る。

 5割強しか残っていなかった。半分も削ってくるとは、やはりあの三人が優秀だったというのが分かるな。


「――『オーラヒール』! んじゃ、行くか!」


 パメラとリカの相手も、ラムダが退場した衝撃から復帰できずやられてしまったようだ。

 自分のHPを回復させてっと、さて〈51組〉の攻略、その続きと行こうじゃないか。


 そう思ったところで東にある〈12組〉拠点を見る。

 予定通りの展開。

 そこにはエステル、ラナ、そしてメルトたち〈8組〉の手によって〈12組〉拠点が陥落するところだった。


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