第597話 ゼフィルスVSラムダ戦、決着!
爆音と光の奔流が荒れ狂った。
ユニークスキル同士のぶつかり合い。
その接触は一瞬だったが、とても長い時間のようでもあった。
結果は、相殺に近い。
ラムダとゼフィルスはあまりの威力に吹き飛ばされんばかりにノックバックした。
「――!!」
吹っ飛びながらもラムダは体勢を立て直し、大盾を前に翳すようにして追撃を警戒しつつ着地する。
HPバーを確認すると、ラムダのダメージは、――2割が減っていた。
直撃したわけでもないのにこのダメージ量、回復するか、いや追撃が先決か! ラムダが高速で次の行動を思考する。
ラムダは一瞬のうちに優先順位を組み立てる。
ラムダのステータスはタンク寄りだ。それでこのダメージだ。勇者であればもっとダメージを受けていても不思議ではない。
そして勇者は回復魔法が使えるという噂だ。
使わせる隙を与えるべきではない、ここは畳み掛けるべきだと判断したのだ。
「うおおおお!!」
未だ大規模な衝撃により土煙が舞う中、ラムダは構わずスキル無しで突撃した。
土煙の向こうに勇者が見えた。
予想通り、勇者も体勢を立て直している、HPは、残り7割弱だ、好機!
「チャンスだ! 畳み掛けろ!」
「――『シュートビーム』!」
ラムダの言葉に遠距離からスピードのある砲撃が勇者に放たれた。
回復させる隙を与えない!
勇者はまたも自然な動作で移動し、砲撃には当たらなかった。
だがそれでいい。回復魔法を使わせないことが重要だからだ。
砲撃が通過する頃には勇者はラムダの剣の攻撃範囲に入っていた。
「おおおおお!」
ラムダが素早く剣を振るう、しかし勇者も盾で防御した。反撃が来る。
しかし、それは予想外なものだった。勇者の剣がエフェクトに光る。
「ナイスガッツだ! ――『ハヤブサストライク』!」
それは目に見えないほどの素早い斬撃。
それもおそらく二撃放たれたのだと思う。
ラムダは、勇者の動き終わった動作でそれが分かったほどの神速の斬撃。
ラムダは一撃目は盾で防げていたが、二撃目は直撃、HPが7割弱の所まで減る。
まさか勇者がスキルを使ってくるとは。
だが、ここで仲間の頼もしい援護が届いた。
「――『サードキャノン』!」
「――『疾風二連斬』!」
躱しにくい三つ
ここで一気に畳み掛ける。ラムダも強力なスキルを発動する。
いくら勇者といえど三方からの攻撃だ、避けきれないだろう!
「いけえええ!! ――『聖光剣現・真斬』!」
先ほどの『真突』とほぼ同等な大きさの巨大剣が顕現し、勇者に向かって振り下ろす。
どう見ても接近戦で使う代物では無さそうだが、直撃すれば勇者のHPは全て吹き飛ばせる威力を秘めている。
たとえこのスキルを受け止められても、避けられたとしても仲間の攻撃は絶対に当たる。
そうラムダは思っていたが、勇者はまたもこちらの予想を超えてきた。
「ユニークスキル――『
何?
そう思う暇も無くラムダの『真斬』が、振り下ろされた。しかし、
「!! 手応えが無い! 避けられた!」
再び土煙で視界が悪い中、勇者の姿を探す。しかし、つい先ほど前まで目の前に居たはずの勇者がどこにも見当たらなかった。そこへ、
「――『シャインライトニング』!」
「きゃああ――――」
「――『ソニックソード』!」
「な! ぐああっ!?」
「なんだと!?」
仲間の悲鳴が次々に聞こえたのだ。
双剣女子が雷の範囲攻撃に一瞬でギリギリ残っていたHPを吹き飛ばされ退場し、動揺している暇なんて与えないとばかりに次の瞬間には勇者はもう1人の砲撃使いの元で剣を振るっていた。
「くっ、間に合え! ――『カバーアクション』!」
それは味方をかばうスキル。
スキルの発動と共に通常ではあり得ない速度で勇者と仲間の間に割り込まんとする。
しかし、勇者の動きは先ほどとは違い、速すぎた。
間に合わない。
「らっしゃあああ! ――『聖剣』!」
「う、うあああああ!?」
光の一撃。
一瞬で斬られたかと思うと砲撃使いの仲間はそこにビクンと体を震わせて硬直し、そのまま転移陣が現れて退場していった。
「くっ!」
なんだあの速さと威力は! そうラムダが驚愕する。
砲撃男子は確かに後衛だがLVは58と〈5組〉でもかなりの強者。それを僅か二撃で退場させるあの威力は異常過ぎた。
それにあの速度もだ。仲間も含み三方向からの攻撃をどうやって躱し、いや、よく見れば勇者のHPが残り6割までに減っていた。何かの攻撃を受けた証だ。
おそらく、超威力のラムダの『真斬』を躱し、躱せない仲間の攻撃は受けるのも構わず行動に移したということなのだろう。しかし、それにしてはダメージの量が少なすぎる。
そのことから、あの時言っていた二つ目のユニークスキルが全能力の強化だと看破した。
上級職になると下級職と合わせて二つのユニークスキルを操ることが出来る。
勇者はここで二つ目の切り札を切ってきたということなのだろう。おそらくバフだ。
ラムダにも下級職、【聖騎士】のユニークスキルはあるが、残念ながら防御スキルだ。
今は使いどころでは無い。
ラムダの『カバーアクション』は対象だった仲間が退場した事で
どうするか、ラムダの頭が再び思考を巡らせる。いや、ここで退くなんてあり得ない。
突き進むのみとラムダのとっておきのスキルを発動する。
「『
それは四段階目ツリーの中でも『聖光剣現』よりも威力が高く、勇者に残しておいた最後のスキル。威力がとても高い代わりにMP消費が激しすぎて今まで使えなかったが、そうも言っていられない。ここで全部出し切るつもりで放つ。
「うおおおお!」
この一撃に全てを賭ける。
大盾を手放し、両手で剣を握っての力一杯の振り下ろし攻撃。
剣が真っ白に強く耀き、5mもの巨大剣となって顕現し、ラムダはそれを躊躇なく振った。
効果範囲が大きく、砲術男子を退場させた隙を狙ったために、これは絶対に避けられない。
「俺の勝ちだ! 勇者あああ!」
思わず自分の喉から叫びが出た。
気合いで思わず声が出る。ラムダはこんなことは初めてだったほど昂ぶっていた。
これまでの人生で最高の一撃、そして最高の瞬間。
そのはずだったのに。
「え?」
思わず、本当に思わずそんな声が漏れた。
それは勇者が先ほど見た、ラムダの『エクスカリバー』と相殺したあれを準備していたからだ。
「ユニークスキル発動―――『
なぜ?
スキルにはクールタイムがある。
そのため連続で使用することはできない。
ユニークスキルともなればそのクールタイムは非常に長く、分単位は確実に取られる。
先ほど『エクスカリバー』と打ち合ってからどれくらい経った?
まだ2分も経っていないはず。ラムダの『エクスカリバー』はクールタイムが5分も掛かる。こんなに早く明けるなんてあり得ない。
しかし、現に勇者はユニークスキルを発動していた。
そしてラムダの身体ごと『
スキルでユニークスキルに勝つことは難しい。〈ダン活〉ではユニークスキルの方が強いと設定されているからだ。これは不変の摂理。
「楽しかったぜ。―――『ライトニングバニッシュ』だ!」
〈雷属性〉と〈火属性〉を纏った強力な四段階目ツリーの追撃がラムダに決まり、激しい雷が降り注いだ。
「うおおお―――」
あまりの威力にHPがゼロになり。ラムダは退場していったのだった。
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