第501話 久々のステータス振り! 勇者の知識が光る!
ぶわり、と。
金色の光の帯が俺の胸辺りから溢れた。
「きゃ!」
「わわ」
突然の光景にラナとハンナの可愛い声が聞こえてくる。
〈
どうやら演出中は若干浮いているせいで振り向くのが難しいっぽい。ちょっと面白いな。シャキンと決めポーズを決めてみる。ふはは!
光の帯は、ゆっくりとした動作で俺を包み、その帯が身体に触れるたびに俺はなんだか自分の中の何かが書き換えられているかのような、妙な感覚を感じた。
しかし、イヤではない。なんとなく分かるのだ。
自分の【勇者】の
これが変身する感覚ってやつなのか? とかどうでもいいことまで思う。
そうして数秒ののち、俺の演出は収まった。
悩みに悩み、俺が選んだのは【救世之勇者】だった。
これを選ぶことになるとは……。
しかし、あのエンディングを迎えるのも悪くない。
エンディング名・〈グランドフィナーレ〉。
〈ダン活〉が誇る400を超えるエンディングの中でも難易度がトップクラスに高く、大きな人気を集めていたもののひとつだ。
―――「〈ダン活〉を周回するなら一度くらい〈グランドフィナーレ〉を見るべし」
これが〈ダン活〉に熱狂するプレイヤーたちの総意だった。
むちゃくちゃ熱く、そして感動し、人々の心を掴んで離さないエンディング。
俺も400あるエンディングの中でたった一度、一回しかエンディングを迎えられないとしたらどのエンディングを迎えるのか? と聞かれれば〈グランドフィナーレ〉は五本の指には入るだろう。――ただあのイベントをクリアするのは大変だし、失敗するととんでもない〈エンディング〉へ向かってしまう、難易度で言えば〈ダン活〉の中でも五本の指に入るだろう。
しかし、イベントに参加しないという手がまだある可能性もないこともない。
俺が【救世之勇者】に就いたからイベントが発生するとか、リアルで考えたらちょっとおかしいしな。俺がトリガーになる? ないだろう……ないよな? 多分ない。
いや考えていても仕方がない。イベントが起こるのはエンディング間近、つまり三年生の後半だ。今はまだ考えなくていいだろう。
それよりも優先して考えなくちゃいけないことがある。
「よし。これで〈
「やったわね! ゼフィルス、おめでとう!」
「ゼフィルス君おめでとうー!」
「サンキュ、ラナ、ハンナ」
俺が振り向くと、真っ先にラナとハンナが近寄ってきた。テンション上げ上げだ。
両手でハイタッチを交わす。イエーイだぜ!
「ゼフィルス殿、おめでとうございます」
「おめでとうゼフィルス。これでまた一歩、あなたの目標に近づけたわね」
「ん。ゼフィルス、おめ」
「ゼフィルス様、おめでとうございます」
「おう。エステル、シエラ、カルア、セレスタンも、ありがとうな」
こっちの
ニコニコとほんわかなエステルに、仕方ないわね、みたいなシエラ。
眠たげな眼からちょっと復活したカルアともタッチタッチタッチだ! もう一つおまけにターッチ!
後でまた打ち上げしようかな。お祝いしないと!
何しろここの六人全員が上級職へと〈
しかも、俺が最強と思っている
あともっと〈上級転職チケット〉を確保しよう!
ガンガン取りまくるぞ!
と、それもしなくちゃだが、まずしないといけないことがあるな。
「さて、じゃあギルドに行くか。そこで〈
そう、まずはステータスを振らないとだ。
職員室のフィリス先生に〈測定室〉を借りたことのお礼を言って鍵を返却し、俺たちはギルドに向かった。
「さーて、久々のステ振りの時間だー!」
「わー、ぱちぱちぱち」
「ハンナありがとよ」
俺の宣言にノッてくれたのはハンナだけだった。ハンナには感謝。
続いてハンナに続くように全員が拍手してくれる。みんなに感謝!
「ステ振り、約2ヶ月ぶりかしら?」
「そうですねシエラ殿。私たちがカンストしたのは確か期末テストの前でしたから、約2ヶ月前であっています」
「久しぶりで楽しみね! どんな魔法が使えるようになるのかしら」
「ん、楽しみ」
みんなもステ振りが楽しみみたいだ。
そうだよな。ステ振りってすごく楽しいんだ。
むしろステ振りについて考えているだけでも楽しい。
「んじゃ、知っている人もいるかもしれないが、上級職について説明するな」
俺がいつもの
「まずこれは大前提だが、同じ〈転職〉であっても下級職に〈転職〉するのと上級職に〈
これは当たり前だ、加算されてしまったら〈転職〉すればするほど強くなってしまう。
リアルの住人からすれば加算されてほしいだろうが、ゲームバランスが崩れちゃうので諦めてほしい。
「しかし、〈
下級職で振ったステータスはそのままリセットされず引き継がれるのが〈
ここまでは常識的なことなのでみんなコクリと頷くだけだ。カルアは……多分大丈夫だよな? 目をしきりにパチパチさせてるけど、きっと目が乾いているだけだろう。
「上級職のステ振りというのは下級職とそう大きな違いはない。自分でスケジュールを組んで、SPをしっかり計算し、無駄なくステータスに振っていくことが重要となる。ここで要点となるのが上級職のレベル上限と、ツリーがどの段階で解放されるか、だろうな」
下級職の時、レベルの
上級職ではこれが少し変わるんだ。
「上級職のレベル
上級職はLV100が上限だ、そしてLV0の時に四段階目ツリーが、LV30の時に五段階目ツリーが解放される。そしてLV60では最強の〈スキル〉、〈魔法〉と呼ばれる六段階目ツリーの解放だ。
うーん、ワクワクするぜ。
そこで静かにシエラの手が挙がる。
「はい、シエラ」
「当たり前に言うけれど、私は六段階目ツリーなんて聞いたことないのだけど? あとLV100がカンストというのも、神話の話ではないの?」
おっと、そういう質問か。
シエラの話も分かる。
この世界は公式では上級下位ダンジョンまでの攻略実績しかない。
上級下位ダンジョンではLV60まで届かないしな。
神話では上級職のLV上限は100とされているが、それも眉唾物の話なんだそうだ。
「まあ、今すぐ信じろというのは難しいかもしれないが、その内いやでも信じることになるさ」
俺がそう自信満々に告げると今度はハンナが立ち上がった。
「ゼフィルス君が言うなら私は信じるよ!」
嬉しいことを言ってくれるな。さすがハンナだ。頭を撫でてやりたい。
それを見たラナが続く。
「私も、信じてあげてもいいわよ」
「ラナ様」
「うっ、そ、そうね。信じるわ、ゼフィルスのこと」
一度胸を張って言ったラナだったが、エステルの圧力に一瞬でしおらしくなった。
なんだか最近、ラナが順調に教育されていっている気がする。
「ん。ゼフィルス、任せる」
「カルアはもう少し考えた方がいいと思うのだけど。でも、私もゼフィルスに教えてもらわなくてはいけない立場なのよね。ゼフィルス、私もご教授願うわ」
カルアは俺に全部ぶん投げるようだ。任せろ! 全部教えてやるよ!
シエラもまたため息を吐いてみんなに賛同する。
「任せとけ。では行ってみよう! まずはみんなのSP振りからだ!」
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