第477話 レグラムの婚約者さん登場で恋バナ発生注意。
夏祭り1日目の午前中はラナたちと過ごした。
出店を周り、中央にあるアート的な
ほとんどはラナがアレも行ってみたいこれも行ってみたいとはしゃぐのに合わせ、俺たちも付いていった感じだ。俺もたっぷりはしゃいでおいた。
従者3人は相変わらず一歩引いたような位置にいて、見守っているような感じだった。
もっと楽しめば良いのに、そう思って聞くと。
「エステルたちは一緒にやらないのか? この的当てボールとか面白いぞ?」
「いえ、午前中はお二人のことを見守らせていただくだけで十分です」
「午後は私たちも楽しむ予定ですからゼフィルス殿はご遠慮なさらずにどうぞ」
「ラナ様との仲を存分に深めて欲しいデース!」
午前中の約束はラナだが、午後からはまた別の人と夏祭りを回る予定になっている。
なぜかギルド内で俺と誰が夏祭りを一緒に回るかで一悶着があったのだ。
一瞬モテ期到来か、と思ったが、ちょっとみんなの熱が予想以上でちょっと怖かったのでそんな気持ちもどこかに吹っ飛んでしまったよ。
結局は交代制にして事なきを得た。
ふう。しかし、みんな俺と一緒に夏祭りを楽しみたいとか、嬉しいね。
トップは見てのとおりラナだ。そのためか、従者3人はあくまでラナメインというスタンスらしい。
午後からは彼女たちで楽しむということなら今無理させる必要は無いか。
俺はそのままラナと一緒に輪投げやらダーツやらをして出し物を楽しんだのだった。
ダーツは初めてやったが、存外当たるものだな。なんか
そうしていると時間が過ぎるのは早いもので、あっと言う間に午前中が終わってしまう。
「えー。もう終わりなの? まだ半分どころか4分の1も回っていないわ」
「相変わらず広すぎるんだよなこの学園。練習場や体育館も回りたかったが仕方ないな」
出店は校庭だけでは無く、練習場と体育館などでも行なわれているが、残念ながら校庭すら全て回りきることはできなかった。
シズが静かにラナの側に近づく。
「ラナ様、交代のお時間です。残念とは思いますが……」
「は~、わかったわよ~。でも楽しかったし、満足だわ」
「俺もラナと回るの楽しかったよ。時間が少なくて悪いな」
「いいわよ。ゼフィルスも食べ過ぎないよう注意しなさいね」
「おう、ありがとうな。そっちも楽しんでくれ。じゃあまたな」
時間は12時。
ラナとの約束の時間はここまで、名残惜しいがラナと別れ、次の待ち合わせに向かうことにした。
校舎の出入り口に向かうと、すでに約束していたメンバーが待っていた。
「あ、ゼフィルス君来たよ~」
「悪い、待たせたか?」
そう聞くと、背の低いイケメン。
メルトがゆっくりと首を振った。
「いや、俺たちも今来たところだ。それにレグラムがまだ到着していない」
12時から回るメンバーはミサトとメルト、あとレグラムだ。
この時間は男子メンバーで回ろうという話になった。ミサトはメルトと回っていたためついでだな。
ちなみにセレスタンはなぜか夏祭りの運営の仕事に参加していて不在だ。なんでそんな仕事を手伝っているんだ?
また2人の姿だが、メルトは普通に青一色の浴衣だった。シンプルだな。
ミサトは花柄の薄いオレンジの浴衣だ。可愛らしい感じの浴衣だ。
「しかし珍しいな、時間に正確なレグラムが遅れるだなんて」
「何か共に連れてきたい人が居るらしいぞ。飛び入りでもいいかとさきほどチャットで連絡があった」
「連れてきたい人? まあ、俺は構わないが、誰だろうな」
ふむ、この時期だ、もしかしたら新メンバー候補の紹介だろうか?
いやいや、今は夏祭りだ。紹介するならもっと別の機会があるだろう。
また、ずっと帰省していたレグラムだったが、先日やっと帰ってきた。
海イベントに参加出来なかったことをわざわざ謝ってきたからな。
女子の水着が見られなくて悔しがっている様子が無かったのがレグラムらしい。
そんなことを考えているとこちらに近づいてくる影が二つ。
「すまない。遅くなった」
「いや、そんなに待っていないさ。そちらの人は?」
やってきたのは予想通りレグラムだった。
着ているのは着流しか? 黒の着流しだったが、金髪イケメンにむちゃくちゃ似合うなレグラム。
おっと、それは置いておこう。俺たちの視線はレグラムが連れてきた女子に向けられていた。
……まさか。
「紹介しよう、婚約者のオリヒメだ」
「初めまして〈エデン〉の皆さま。いつも夫がお世話になっていますわ」
「お、おい。何を口走っている。夫というのはまだ早いのではないか?」
「まあ、うふふ。いいではありませんか、卒業すれば私たちは結ばれるのは決まっているのですから、少し早いくらい許してくださいませ」
やっぱり、例のレグラムの婚約者さんだったようだ。ちょっとお茶目な印象。
いつも自然体なレグラムが慌てている様子はなんだか新鮮だった。
オリヒメさんの姿は高身長のレグラムより少し低い程度でスタイルの良い美人さん。
桃色の浴衣がよく似合っていて髪をアップで纏め
また、「男爵」女子のシンボルであるマイクの意匠が入った〈チョーカー〉が見えるため男爵令嬢らしい。
レグラムとの仲は良好なようだ。
レグラムはその見た目で小さい頃から女子に人気があったために、あんまり女子を意識していないところがあったからな。レグラムもしっかりオリヒメさんを意識しているようだった。
いや、オリヒメさんがレグラムの気を引くのが上手いのかな?
動きが硬いレグラムをオリヒメさんが上手く引っ張って行っている感じがする。
見た感じ、相性も良さそうだ。
「もう少しここで話していたいが、さすがに腹も減った。食べ歩きながら詳しく聞かせてもらおう」
「聞かせてもらいましょう!」
「……お手柔らかにな」
メルトの提案で俺たちは体育館方面に移動することになった。
ミサトは、キラキラとした好奇心が全開だ。ウサ耳がピョコピョコお辞儀したり戻ったりを繰り返している。何アレ、触ってみたいんだけど。
歩きながらミサトは素早くオリヒメさんの横に移動する。
「オリヒメさん、私ミサトって言います。よろしくお願いしますね」
「こちらこそよろしくお願いしますわ」
「それで早速ですが、レグラムさんとは婚約者との話だけれど、どこまで進んでいるかお聞きしても!?」
「もちろん構いませんわ」
「いや構うぞ。オリヒメも待ってほしい。それは他人に広める事ではないだろ?」
「いいえ、重要なことですわ。レグラム様が在籍なされている〈エデン〉はほとんど女性で構成されているギルドとのこと。それならば、レグラム様にはすでに私という存在が居ることをアピールしておかなければなりません」
「たははは、そうだよレグラム君、これは必要なことなんだよ」
「レグラム、諦めた方が良さそうだぞ」
「ぬぅ……分が悪いか……」
ミサトはにししと笑っているがオリヒメさんはキリッと真剣な表情だ。
おそらく、レグラムの見た目で色々と苦労しているのだろう。
あ、レグラムの腕にオリヒメさんがそっと手を添えたぞ。そのまま視線を、俺たちのことを遠目に見ていた周囲の女子たちに向けるオリヒメさん。するとなんだか周囲の視線が外された気がする。
そうしてニコっと笑顔でレグラムに「ね?」と向けるオリヒメさんに、レグラムは降参の表情だ。
な、なんだかすごそうな人だな……。
その後、せめて自分の前で広めないでほしいというレグラムの懇願により、なんとかその場での暴露は無くなった。
その代わり、話題は別の方へと向く。
「ミサトさんの良い方は、やっぱりメルト様ですの?」
「ぶはっ!?」
オリヒメさんの何気ないような言葉にメルトが思わず吹き出した。
「え~、たはは~。メルト様と私はそういうのじゃないけど~、でもあり得ない未来ではないというか~」
そう答えるミサトの表情は照れたような、でも面白がっているような感じだった。
そこへ伸びるメルトの右手。
「貴様は何を言っている!」
「うきゅ!?」
おお、メルトのウサ耳クロー、久しぶりに見たな。
今回は切れ味がいつもの5割り増しに感じる。逃げる隙もない完璧なクローだ。
とそこで気がついた。
あれ? このメンツ、メルトとミサト、レグラムにオリヒメさんって、なんだか俺だけ疎外感を感じる? っと。
そんな事を思った時、まるで導かれたようにギルドメンバーの1人とバッタリ出くわした。
「あ、ゼフィルスさん! 奇遇ですわね」
「おおリーナ、ここで会うとは偶然だな!」
出会ったのは我が〈エデン〉で俺の右腕でもある、リーナだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます