第455話 ゴブリン要塞を攻略せよ! いざ合戦じゃー!
今回の〈食ダン〉合宿は
故に、今回の合宿でどんなものが足りなくて、どんなことが好評で、どんなことがいまいちだったのか、そこのところを調査しておきたいところだ。
海に行ったけど、あれが足りなくて困った、なんて理由で満足できなかったらホストとしていやだからな。
〈食ダン〉1日目は12層エリアの探索がメインだ。
第一陣を送り届けた後ピストン運行で第二陣を連れて来て、ひとまず自由時間にしたのち。希望者を募って例のゴブ拠点に攻めこむことにした。
しかし、事態は予想外、いや予想以上か? の事態へ進むこととなった。
「わー……、なんか合戦みたい」
「実際合戦に近いなこれ。ここまでとは想定していなかったけど、レイド戦の予行演習にいいかもしれないな」
ということで現在、〈助っ人〉3人以外全員参加でゴブの要塞を攻めているところだ。
ハンナが圧倒された、という感じで感想を言う。
〈エデン〉メンバーが全員参加で要塞を攻めている光景は圧巻で、とても迫力あるものだった。ちなみに俺たちの隣にいるマリアはメガネがズレ、サトルは目を点にしているが気にしない。メリーナ先輩はあらあらといった感じで頬に手を当てているだけだ。
最初はわらわら出てきたゴブたちだったが簡単に屠られて、今では要塞内の侵入を許し、蹂躙されていた。
要塞内のゴブリンは次々と討ち取られておる。こりゃ俺の出番はなさそうだな。
なんでこのようになったかと言うと、話は少しだけ
まずは説明しよう。
ここ、エクストラダンジョンはその名のとおり、通常とは少し違う作りになっている。普通はポップしたモンスターはその辺の道を徘徊するのに対して、ここのモンスターは何か目的があって行動していることがほとんどを占める。
牛を襲って食料を確保しに行ったり、とかな。
そういう普通のダンジョンでは見ることのできない特異な行動の一環として、時に拠点を構えることがある。食料を拠点に運び込み、ここで社会を作って暮らしているのだ。
一部上級以上のダンジョンでも同じようなことをしているところもあるが、それは単純に拠点を築いている縄張り的なものだけで、こういう社会構成のようになっていることは無い。まあ、拠点は拠点なのでそんなに変わらないが。こっちの方が特異な行動だ、というだけの話だな。
そうしてそういう拠点には、割とレアなアイテムや資源、宝箱などが集められていたりする。
拠点を攻略したときの報酬だ。これが結構美味かったりするので拠点攻めはやめられない。ゴブ拠点を攻めるのは絶対やっておこうと思ったイベントの一つだった。
そして第二陣を連れて来た後の自由時間中、カルアがちょうどよく帰還途中のゴブリンを見つけてくれたのは僥倖だった。おかげで早い段階で大きな拠点を発見することができた。
そうして参加者を募ると、まあさすがはSランクを目指すギルドに所属しているメンバーだ。全員参加となった。もちろん〈助っ人〉組は不参加。
「『号令』! 皆様、集まってくださいまし。まずは威力偵察ですわ! 遠距離が得意な方とタンクさんで偵察隊を作りますわよ!」
張り切って指示を出しているのは我らが頼れる【姫軍師】のリーナだ。
ゴブ拠点からそこそこ離れたところに陣を引いたかと思ったら、完全に
あれ? 相手はザコのゴブだぞ? 物々しすぎる。
「獅子は兎を狩るにも全力を尽くすという言葉もありますわ! せっかくの機会ですもの、みなさんの成長のためにも全力を尽くしますわ!」
「さすが頼れる軍師!」
先を見据えての演習のようだ。さすがリーナだぜ。俺は拍手を送った。
確かに、軽く捻れる相手は初めの練習相手にちょうどいい。
みんな、初めての拠点攻めに盛り上がっている。
「確かに、いい機会だよね」
ハンナがなんか筒砲を並べて品定めのようにしていた。
目を細めてキラリとしている。
まるで得物を選ぶ
え? 威力偵察に参加する気かハンナ?
「これにしよう! 〈太陽光線の杖〉に〈筒砲:ロックガン〉!」
ゴブリンは光属性に弱い。それと拠点の耐久度を見るためだろう。
大きな石を発射する〈筒砲:ロックガン〉を選んだらしい。
すばらしい選択だ。もう威力偵察に参加する気マンマンだな。
「では遠距離隊で参加者はこちらへ。タンク隊での参加希望者はこちらに集まってくださいませ!」
「はい!」
リーナが希望者を募ったのでハンナが立候補する。もちろん遠距離隊だ。
「俺が参加しないはずが無い!」
俺もタンク隊で参加する。
「まずは少数での偵察ですわ! あまり大人数で行くと落としてしまいそうですものね。タンクはシエラさん、ゼフィルスさん。遠距離隊はハンナさん、エミさん、メルトさんにお願いいたしますわ!」
リーナの指示で少数部隊が決定した。
威力偵察の攻撃役に生産職のハンナと【魔本士】のエミが選ばれたのは、強すぎる攻撃だと拠点を落としてしまうかもしれない懸念があったためだな。メルトは上手く手加減してくれるだろう。
「よし、リーナ行ってくるぜ!」
「みなさん、いってらっしゃいませ! 『祝砲』ですわ!」
リーナが〈紅蓮魔砲〉を上に向けてドンと撃つと、俺たちにバフが掛かる。
すでに陣には〈竜の箱庭〉まで設置されていた。
どこと戦争する気だろうか? まあ、ゴブとだよな!
道中、リーナから『ギルドコネクト』で指示を受けつつ5人でゴブの拠点へ向かい、なぜか見つからずに射程距離まで進む。
ちゃんと見張りや偵察くらいしろゴブリン。やられちゃうぞ?
まあ、全てはリーナに筒抜けなので意味無いんだけどな!
「こちら偵察隊のゼフィルスだ、ゴブリンの拠点が射程に入った。これより威力偵察を開始する」
「ゼフィルスよ、何をやってるんだ?」
「威力偵察ごっこ? 盛り上がってるんだから、せっかくならやったほうがいいかなって思ってさ」
「まあ、そうだな?」
なんかこういう偵察でオーバーとかやってみたいじゃん? 男のロマンである。
しかしメルトにはこのロマンはわからないようだ。首を傾げてクエスチョンが付いていた。
「ゴブッ!」
「ゴブゴブッ!!」
「ゴブーーー!」
「いっぱいいるー!」
「いっぱいいるねー」
拠点は木で出来た要塞のようなものだった。結構でかい。
そして物見台や、木で出来た門の上部分には数多くのゴブたちがこっちを見てゴブゴブ叫んでいた。敵襲とでも叫んでいるのかもしれない。
ハンナとエミがのんきにゴブたちを見上げていた。
「シエラ、多分大量の矢が放たれると思うから、そしたら『インダクションカバー』を頼む。メルトは攻撃隊の指示役を」
「任せて」
「任された。まず第一射いくぞ。狙い、正面門、上のゴブ共を巻き込んでもいい。合図と共に撃つぞ!」
「了解です!」
「あいさー! 『魔装武装』!」
メルトの指示に正気に戻ったハンナが〈
エミも『魔装武装』をオンにして本が魔力に包まれた。準備万端と判断したメルトが発射の指示を出す。
「放てー! 『メガフリズド』! 『メガフレア』!」
「ドンドンドーン!」
「『魔本:ラージボールフリズド』! 『魔本:ラージボールフレア』!」
メルト、ハンナ、エミの魔法攻撃と筒砲がゴブ門に突き刺さると、門のHPがガクンと削れる。
そう、この門はギルドバトルの巨城と同じようにHPが付いているのだ。
このHPが尽きたとき、門はエフェクトに消える。ファンタジーだぜ。
「ゴブッ!!」
「ゴブブ!?」
「ゴブーー!?」
「おお。思った以上に大きい被害」
まあ、分かっていたことだがゴブ拠点は脆かった。
たった3人の一斉攻撃で門のHPは半分に削れ、門の上にいたゴブリンが数体地面に落下。エフェクトに沈んでいる。
怒ったゴブリンたちが矢を射掛けて反撃してくるが、
「『インダクションカバー』! ……これ、あまり意味無いわね」
「まあ、予行演習だからということで」
射られた矢も少なければ方向性も微妙で、むしろシエラが『インダクションカバー』でかき集めているといった感じになっていた。まあゴブだし。
俺もスキルも使わずこっちに飛んでくる矢を冷静に盾で弾く。
当たる度にカンカン鳴るのがちょっと楽しい。
だがそんな時間もすぐに終わってしまう。
「『メガダークネス』! ふむ、ここまでにしようか。これ以上は本当に門を落としてしまうぞ」
「だってよハンナ、エミ、撤収だ!」
「えー。せっかくの機会だったのに早いよもー。最後に一発、ドーン!」
「ゴブー!?」
ハンナの〈太陽光線の杖〉から放たれたビームによってゴブリンが断末魔の叫びを上げて光の仲間になる。
当のハンナはスッキリした顔だ。満足したようで何より。撤収しよう。
「これ、ちょっと気持ちよかったかも」
エミはこの拠点攻めが気に入ったらしい。
楽しそうにしていた。
シエラと俺が後方で矢を弾きながら防御し、威力偵察部隊は撤収した。
「みなさんお疲れ様でした。次の本攻めには参加しますか?」
「「もちろんです!」」
威力偵察の結果をリーナに報告し終わると次の本命の拠点攻めに誘われた。
ハンナとエミがいい笑顔で答えていたな。無双の味を占めたらしい。
無双って楽しいから。
その後は全員参加でゴブ要塞に突撃し、わらわら出てきたゴブたちを遠距離攻撃で蹴散らして、残り少なかった門のHPを吹き飛ばし要塞内に侵入。
〈ソードゴブリン〉や〈ソルジャーゴブリン〉がわらわら出てきたが、こいつらの強さは
こうして1時間もしないうちにゴブ要塞の攻略は終え、拠点を散策。
隠し持っていた〈リーダーゴブリンの魔剣〉や〈ゴブリン王冠〉を始めとしたちょっとレアな装備、素材を始め、〈金箱〉2つと〈銀箱〉5つ、〈木箱〉10個が見つかった。
不思議と食材関係は見つからない。
いや、さすがにゴブリンが関わった食材は俺たちも要らないので別にいいのだが、少し不思議に思ったのだった。
こうして合宿初日のイベントは無事終わり、初めての夜を迎える。
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