第453話 明後日からギルド合宿が決まったぜ!




 思い立ったが吉日とばかりにダンジョン合宿は近日中に開催されることになった。

 場所はメンバーの攻略のばらつきを踏まえ、エクストラダンジョンの1つ、以前にも行って大好評だった〈食材と畜産ダンジョン〉に決定した。


 この〈食ダン〉は最奥までの道のりが長く、入ダンにQPがたくさん掛かり、ショートカット転移陣が無いこともあって、最奥まで好んで進む者は少ない。そのためレアボスは撃破数が少なく、ここでドロップする品の市場価格がお高くて手に入らないのだ。食べたければ自分たちで手に入れてくるしかない。

 そしてみんな食べたい模様。〈笛〉がもっとほしい。


 前回〈エデン〉だけで入ダンしたとき好評で、話を聞いたサブメンバーの方々も羨ましがっていた。それで今回は〈アークアルカディア〉も連れて泊り込みで楽しもうというのと、このダンジョンは夜に〈幽霊ゴースト〉が出ないというのが決め手になった形だ。


「すっごくいい企画だねゼフィルス君!」


「だろ!」


 ギルド部屋でメンバー全員に発表したところ、ハンナからとてもキラキラした目でいいねをもらった。

 ふふふ、もっと褒めてもいいぜ。


 企画進行を務めるシエラが続きを説明していく。


「宿泊になるから、参加できない人は言ってね。現在は2泊から3泊を予定しているわ。途中参加は出来ないけれど、途中で帰還は出来るから、途中で用事があっても参加は可能よ」


「配慮は痛み入るが……、途中で帰還したいという者はいるのか?」


「ん。あそこは狩場。ずっと狩っていたい」


 リカとカルアがキョトンとする。

 うむ。〈食ダン〉を経験すると帰りたくなくなるというのは分かる。


「今度はどんな食材が取れるかな~」


「ハンナはん、これはチャンスや。祭りの出店で使う食材、たんまり稼がんと」


「だね! よっし気合入れるよ!」


「レンタル〈空間収納倉庫アイテムボックス〉をいくつか馬車に積み込んでおきましょう」


 夏祭りで出店を出す予定のハンナとアルルが気合を入れ、前回〈空間収納倉庫アイテムボックス〉が一杯になってしまったことをかんがみてセレスタンが学園から〈空間収納倉庫アイテムボックス〉をレンタルしようと決める。


「レンタルの一覧をまとめますね!」


「よっし、俺に任せてくれ」


 マリアが早速仕事に取り掛かろうとするが、汚名ロリコン返上の機会を窺っていたサトルが書類仕事を買って出た。サトルに任せるとしよう。

 予算の関係は【マーチャント】のマリアの方が詳しいので上手く連携してほしい。


 そこに仕事の時間だとばかりに2年生のメリーナ先輩も加わる。


「でもレンタルでいいの? 後々のことを考えて購入した方がよくないかな?」


 さすがは上級生。的確な提案に、今聞いた内容だけをまとめようとしていたマリアとサトルの手が止まり、考えを巡らす。


「ふむ、そうですね。〈エデン〉の素材収集能力は驚異です。保管場所は今後増築していかなければと思っていました」


「特に〈空間収納倉庫アイテムボックス〉は購入の方がいいな。レンタルした物が全て一杯になって帰ってきたとして、それを保管する場所が無い」


 マリアとサトルが意見交換する。


「保管部屋を新たに作るという手もありますけどね。もしくは保管倉庫を借りるとか」


「マリアンヌさんそれはやめておいた方がいいと思うよ、経験上保管倉庫に収納された物は8割近くが日の目を見ないから」


「倉庫に入れたら入れたまま。まあ、あるあるだな。やっぱり〈空間収納倉庫アイテムボックス〉を複数買ったほうがいいって。あれなら持ち運びも出来るし、数があるなら種別に分けて使ってもいい」


 メリーナ先輩を入れた〈助っ人〉組がああでもないこうでもないと考えをめぐらせていた。

 この3人は結構いい関係を構築しているようだ。仕事仲間としていい感じに連携できている。

 特に先輩であるメリーナ先輩の経験は貴重なようで、マリアとサトルにはいい刺激になっているらしい。


 その間にもシエラの議題は進み、出発日の調整を行なうと、明後日からの3泊4日に決まった。

 参加者は今帰省している5人以外の全員。もちろん助っ人の3人も含む計23人となった。


「〈馬車〉の数が足りないな。エステルはいないし、アイギス先輩とセレスタンでは1回で最大13人までしか動かせないから2回に分ける必要がありそうだ」


 セレスタンの馬車もこの日のために強化してもらい、乗車人数を増やして8人乗りへとパワーアップしている。だが、アイギス、セレスタン、誘導係の俺が固定なので13人しか移動することができない。


「アイギス先輩、いいかしら? 〈サンダージャベリン号〉の運用について説明したいのだけれど」


「はいシエラさん、大丈夫です。ですが、エステルさんの装備、私がご本人の許可無く使わせていただいてもいいのでしょうか?」


「そこは構わないぜ。〈サンダージャベリン号〉は〈エデン〉の共有財産だからな。エステルには俺が事前に許可を取ってある」


 アイギス先輩は〈馬車〉を含める〈乗り物〉を操るスキル、『乗物操縦』と『乗物攻撃の心得』を使用可能アクティベートしてからまだ日が浅く、エステルのように運用するのは無理があるだろう。どこかで練習が必要だ。

 俺とシエラはアイギス先輩にそのことを説明し、遠慮はしなくていいから今日から練習をしてもらえるよう話す。


 最初は上手く扱えるか心配そうなアイギス先輩だったが、馬やモンスターに乗ったことは数多いため無機物の〈からくり馬車〉ならすぐ使いこなしてくれるだろう。


 準備が着々と進んでいき、2日後。

 夏休み企画の第一弾。

 2回目の〈食ダン〉への攻略、もとい合宿の日がやって来た。




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