第452話 夏休み計画を実行に移すぞ!
その後サトルがデスクワークはそれなりに優秀なところを見せ、反省の色もある事も示したためとりあえずシエラの判断は保留となった。名誉回復は今後のサトルの活躍次第だ。
意外にも、サトルは【ハードワーカー】の
経理でもマリアを大きくサポートしてありがたがられている。
実力はあるから、とりあえず様子見してほしいと俺もシェリアにフォローを入れた。
ここで契約を打ち切れば、他に補充できる人材が集まらないんだ。もし本当に問題を起こせばすぐに契約は切られるが。
さて、翌日にはカイリも学園に戻ってきたため、帰省組で戻ってきていないのは、長期組のラナ、エステル、シズ、パメラ、レグラムとなった。
この5人は最低でもあと3週間は戻らないはずなので仕方ない。
「シエラとカイリも戻ったことだし、そろそろ夏休み企画を実行しようか」
「何を考えてきたの? 変なことじゃないわよね?」
「ハハハ。シエラ、俺が変な企画を考えたことなんてあったかね? 真っ当なことしかしてないじゃないか」
「…………普通ボスの周回や中級中位ダンジョン3箇所を5日で攻略、などは非常識というのだけどね。他にもたくさんあるんだけど?」
シエラが指を折りながら言ってきたが、勇者はたまに難聴になるので聞こえないこともある。
それにゲーム〈ダン活〉時代の常識に
問題は無い。
俺が視線を逸らしていると、一つ溜め息を吐いたシエラが話を進めてくれた。
「それで、どんなことを考えてきたの?」
「おう。毎日毎日コツコツと、とりあえずこれだけ考えた!」
俺は〈
一ヶ月以上前から少しずつ考えた企画案の書類、その束だ。
ちょっと分厚くなってしまってシエラの目がスッと細まるが、気のせいということにしておく。
夏休み企画を今、実行すべきなのだ!
大丈夫だ。時間はある!
しかし、ちょっと考えすぎたな。これを全部実行はできないだろう。
ということでギルドメンバー全員に発表する前にシエラをラウンジに呼んで精査してもらおうと考えて今に至る。
書類をぺらぺらめくりながらシエラに案を説明していく。
「例の〈海ダン〉は別として、夏と言えばまず祭りだろう! 俺はダンジョン祭りを独自開催したい! レアボス周回祭り! 隠し部屋ツアー! Fボス巡り! レアモンスター祭り! そして採集祭り! 色々あるぞ!」
「祭りをつけただけでいつもとやってることは変わらないじゃない」
いいんだよ、こういうのは盛り上がればそれでいいのだ。
しかし、シエラが言っていることも事実。
まあ、ここら辺はまだ序盤だ。まだまだたくさん案はある。
「このアイテム撃ち放題祭りはどうだ? 普段はあまり使わないアイテム。それをふんだんに使い、この中級中位ダンジョン〈岩鳥の巣窟ダンジョン〉で鳥落とし祭りをやるんだ。魔法職や遠距離攻撃系の
「……それ、採算は取れるの? どう考えてもアイテムの無駄使いじゃない」
そうだよ。こういうのは無駄に使うから楽しいのだ。
「楽しいぞ!」
「却下」
しかし、シエラにはこの案も却下された。むぐぅ。
「もうちょっとこう、思い出より形に残るものとかは無いの? 例えばぬいぐるみ集めツアーとか」
「まだぬいぐるみを集めるのか!?」
待て、このギルド部屋を見よ! すでにぬいぐるみの数が70を突破してるんだぞ? 先日ぬいぐるみ雪崩にルルが巻き込まれてほっこりしたのは記憶に新しい。
日に日に可愛らしくなっていく〈エデン〉のギルド部屋にメルトが毎回微妙な顔をしているのを知らんのだろうか?
これ以上増やしてどうしようというのか、俺はシエラの事が分からなくなった。
「こ、こほん。例えばの話よ。ギルドメンバーが楽しめて、形に残って、喜ぶような案という意味よ。別にルルのぬいぐるみが羨ましくなったわけじゃないわ」
咳払いするシエラの顔が赤い。あのサトルが持って来た愛らしいぬいぐるみに影響を受けたのか?
しかし、それにツッコむと大蛇が出そうなのでここはスルーが吉だ。
「とりあえず、そういう普通の祭りは夏休みの最後だな。ほら、夏祭りがあるだろう? ぬいぐるみの景品もあるだろうさ」
「ああ。あったわね。夏祭りには〈エデン〉も出店するのかしら?」
実は学園夏休みの最後、8月30日と8月31日には夏祭りが行なわれる。
学園イベントだな。
学生が帰省から帰ってくる時期を狙い、しっかりとイベントを組んでくれている。
ちなみに、本当の最後のイベントは9月1日(日)に開催される超大規模オークションだ。今回は目玉にすごい商品が出品されるとかで今から騒がれている。
まあ、それは今はおいておこう。今は夏祭りについてだ。
「アルルとハンナが何か食べ物屋を出店してみたいって言っててな。許可するつもりだ」
「ハンナは料理上手だものね。楽しみね」
出し物にも参加し、夏祭りの客としても参加する。
きっといい思い出になるだろう。
しかし、俺が言っているのは今やる企画なのだ。
夏祭りまで後4週間もある。夏祭りが終わったら夏休みまで終わっちゃうよ!
「じゃあ、これなんかどうだ? ずばり、夏合宿!」
「夏合宿?」
俺は数枚の紙を取り出してシエラに見せた。
「『テント』系と呼ばれるアイテムがある。ダンジョンで寝泊りが出来るやつな。これを使ってダンジョンで合宿しようぜ?」
「待って。『テント』が搭載されている〈サンダージャベリン号〉が使えるエステルがいないじゃない。どうするのよ」
「そこはアイギス先輩に頼めばいい。幸い、エステルは〈サンダージャベリン号〉を置いていったからな。アイギス先輩は〈道場〉でLV40を越えたから〈馬車〉を使うスキルはすでに
「でもそれって、男女で一緒に泊まるやつじゃない? 『テント』って確か使用者も一緒に寝泊りしないと効果がなかったわよね? ゼフィルスも馬車に泊まる気なの?」
「いやいや、そこはいくつか別に〈テント〉をレンタルするよ。女子も〈サンダージャベリン号〉だけじゃ人数的に収まらないだろう? 最低2つ以上はレンタルだな」
「そうね……」
その内容にシエラが考えをめぐらせる。
学園ではダンジョンに寝泊りする際、色々と手続きが要る。ゲームだとそんなものなかったのだが、リアルだと規定時間以内に戻っていなければ自動的に〈救護委員会〉が出動してしまうのだ。
故に、ダンジョンに潜る際ダンジョン泊をするときはテント系アイテムを携帯し、申請しなければならない。
テント系は学園でレンタルもしている。
携帯用テントは〈
わざわざ最下層に毎回行かなくても、目的のアイテムが出るまで泊り込みで狩りに勤しむなんてことはゲームではよくやった。『テント』は使う機会はそんなに多くは無いが、結構便利なんだ。リアルだとそこまでの強行は出来ないので購入は見送りだけどな。
しかし、リアルで実際に試しておきたい。
どんな感じなんだろうか、とかな。一度経験してみたいし、参加者を募って合宿という名目でダンジョン泊をする企画を練ってみた。
さてシエラの答えは?
「分かったわ。この案は詰めてみましょう」
おお! 初めて合格を貰ったぞ!
他にもいくつかの案を出しながら、俺はシエラと夏休みイベントを作っていったのだった。
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