第362話 〈試練の門塔ダンジョン〉に出発だ!




 RPG系のゲームには所謂いわゆる狩場と呼ばれるエリアがよく存在する。

 経験値を稼ぐためのエリアだな。

 某有名な勇者が魔王を倒すゲームではメ○ルエリアなんて呼ばれていたアレだ。


 〈ダン活〉にも当然のように経験値を稼ぐための狩場が存在する。


 入場LV制限は無く、LV0からでも入ダン可能なエクストラダンジョン、〈試練の門塔もんとうダンジョン〉。

 まあ、エクストラダンジョンなので入場LV制限は無くてもQPは掛かる。そのためゲーム初期には利用できないんだけどな。


 あと、実は〈ダン活〉では入場制限LV0で入ダンできるダンジョンは、この〈道場〉しかない。〈初心者ダンジョン〉ですら入場制限〈LV5以上〉だったのにこれは破格と言える。さすがLV上げ特化型ダンジョン。

 LV0の時から使用でき、キャラクタークリエイトで作製したキャラをそれなりの強さになるまでLVを上げることができる貴重な場所である。


 ただ、エクストラダンジョンを利用するにはQPが掛かる。それもとんでもなく。

 QPをLVに変換する場所と言っても過言ではないかもしれないな。


 〈道場〉は他のダンジョンとはかなり違う形式をしており、最初からショートカット転移陣が使用可能になっている。

 計18もあるショートカット転移陣、〈ランク1〉~〈ランク18〉までランクが分かれており、それぞれ適正レベルの場所へ繋がっていて、ランクによって支払うQP額が変わる形式だ。


 例えば〈ランク1〉の転移陣は適正LV0~LV10。

 このレベル帯しか利用できないレベルが上がらないという縛りがある。(なお、付き添いは可)

 〈ランク2〉なら適正LV10~LV20。

 〈ランク3〉なら適正LV20~LV30。

 といった形でそれぞれレベルを上げるための部屋、道場部屋への転移陣が設置されている仕様だ。

 そこに居る経験値をたくさんくださるモンスターを倒してLVを上げて行く形だな。

 当然ながら〈ランク〉によって出てくるモンスターもくださる経験値量も変わってくる。


 ちなみに下級職は〈ランク8〉部屋の適正はLV70~LV75まで。

 〈ランク9〉部屋になると上級職LV0~LV10となる。

 最大数の〈ランク18〉になると上級職LV90~LV100の部屋に招待されるな。

 上級職はLV100がカンストだ。


 そしてお値段だが、一覧がこちら。

 〈ランク1〉~〈ランク4〉まで1万QP。

 〈ランク5〉~〈ランク8〉まで3万QP。

 〈ランク9〉~〈ランク12〉まで10万QP。

 〈ランク13〉~〈ランク16〉まで30万QP。

 〈ランク17〉~〈ランク18〉まで50万QP。


 むちゃくちゃお高いのが分かるだろう。


 ちなみにこれは転移陣を使用する時に掛かるお値段なので、毎回部屋へ行くたびに支払うことになる。〈ランク1〉から始めて〈ランク8〉まで制覇するまでにかかるお値段はなんと16万QP(1億6,000万ミール)だ。

 しかも5人までというパーティ単位の転移陣なのでギルドメンバー全体を育てようとしたら……。もうね、凄くお高いね。


 さすがにそう簡単にレベル上げまくることはできない仕様となっている。そこらへんゲームバランスの関係があるので厳しいのだ。


 また、ショートカット転移陣を利用するにも他に必要な物があり、〈ダンジョン攻略者の証〉を持っていないと入場できない転移陣がある。

 〈ダンジョン攻略者の証〉とはダンジョンをクリアした際、どこから現れたのか、いつの間にか手に握っているあの証のことだ。

 あれを持っていないならLV10~LV20ランク2までしか利用することはできない。

 初級下位ショッカーの証3つ所持者になればLV20~LV30ランク3が使用できる。

 初級中位ショッチューの証3つ所持者になればLV30~LV40ランク4が使用できる、という形だな。


「ということでまずは〈ランク4〉の転移陣を利用するぞ。全員初級中位ショッチューまではクリアしているからな」


「まさか、ここを利用するとは思わなかった。QPが割に合わないぞ? LVならダンジョンで上げたほうが建設的だ」


 俺の宣言に苦言を言うのはメルトだ。


 確かに〈道場〉〈ランク4〉だと掛かるお値段は1万QP(1,000万ミール)だ。

 普通にダンジョンでもレベルが上げられるにも関わらず、ちょっとLVの上がりが早いという理由だけでわざわざ高いQPを支払いここを利用する理由を、メルトは思いつかなかったのだろう。


 しかし、それは甘いなメルト。


「今回は効率と時間を重視している。多少のQPは必要経費だ。メルトたちには早く三段階目ツリーを解放してもらわないといけないからな」


 〈ダン活〉は3年しか時間がない。

 確かにミールやQPも無駄にはできないが、時間も無駄にはできないのだ。


 それに三段階目ツリーが解放されるLV40まで育てるのに1万QPは高いのか?

 俺はそうは思わない。

 LV40ともなれば中級下位チュカの入場制限まで届く。


 そうすれば〈ジュラパ〉にだって潜れるようになる。〈公式裏技戦術ボス周回〉だって使えるようになる。

 今回は初級ダンジョンで〈公式裏技戦術ボス周回〉が使えないのだ。

 LV40になるのにどれだけ時間が掛かるか。時間のロスの方が痛いだろう。


 そういう判断である。

 と、みんなに伝える。


「相変わらずゼフィルスさんは良く考えておりますわね。わたくしも是非早く三段階目ツリーを解放し、みなの役に立ちたいですの」


「私もだよ~」


 隣にいたリーナとミサトは好意的だ。


「なるほどな。そういうことだったか。確かに時間も大事、か。入学してまだ2ヶ月と思っていたが、もう2ヶ月も経っているのだな」


 メルトも俺の解説に腕を組んで深く頷く。納得してもらえたようだ。

 そう、まだ時間があると思っていたらいつの間にか時間が無くなっていた、なんてことは〈ダン活〉にはよくある。

 時間配分は常に頭の隅においておかなければならない。


 とダンジョン門の前で話しているとパメラが戻ってきた。

 今回エクストラダンジョンへ行く最後のメンバーはパメラだ。

 パーティの中でタンクが不足していたのでパメラには避けタンクを頼んだ形だ。

 三段階目ツリーが解放された【女忍者】は、避けタンクとして非常に優秀だ。

 またアタッカーとしても非常に強い。今回向かう場所のお供としては最適だろう。


 ちなみにお供に誘うのはルルかパメラでちょっと迷ったのだが、シェリアによりルルが連れて行かれたのでパメラになったという裏話がある。まあ、これはどうでもいいだろう。


「お待たせしたデス! ちょっと混んでいたのデス!」


 パメラにはエクストラダンジョンの入ダン手続きを頼んでいた。

 といっても事前にセレスタンが予約を取っていたのでこれから入ダンしますと告げるだけだ。

 しかし、さすがダンジョン週間初日、思っていた以上に混んでいたらしい。みんなお金持ちのギルドが多いんだな。


「パメラありがとな。よし、じゃあ行くぞ! 今日中に全員のLVを40まで上げるのだ!」


「おおー!」


「お、おおー」


 俺が片腕を上げて宣言するとノリの良いミサトがノッてくれ、それを見たリーナが恥ずかしそうに手を上げた。

 ちょっと嬉しい。

 ちなみにメルトは腕を組んだままだ。メルトにもノッてほしかったのに。


 ダンジョン門を潜り〈試練の門塔もんとうダンジョン〉へ入ダンすると、中の光景が見えてきた。

 ミサトがそれを見て驚きの声を上げる。


「うわ。なんか、思っていた以上にでっかいよ!」


 前方には巨大、と一言では言い表せないような、瓦屋根が無数に付いた超巨大な塔が立っていた。塔というより巨大な城と言ってもいいかもしれない。

 周りは草原で何も無く、ただ超巨大な城だけがポツンと立っている。


「雲の上まで続いていますわね。天辺が見えませんわ」


「周りには何にも無いデース」


「これは、塔の中がダンジョンなのか」


 リーナが塔を見上げて驚き、パメラが周囲を見渡し、メルトは眼を細めて塔を見つめる。


「あれが〈道場〉だ。入り口はあれど階段は無く、全て転移陣で行き来することになる。そんで転移陣はあの中だな」


 俺が指差すと全員が前へと注目する。

 塔の1階部分にある巨大な門が開かれ、中がこの位置からでも見えた。

 そこにはいくつもの転移陣がピンク色の光を放っている。


「あれに乗ればいいんだが、まずは塔の受付を済まさないとな」


 超巨大な塔の1階部分にちょっとした人工物が設置され数人の人影がいた。

 ダンジョンを管理している管理人だ。あの人たちにQPを支払えば転移陣を起動してもらえるのだ。どういう仕掛けかは分からない。


「ダンジョンの中に、受付があるのか……」


「不思議!」


 メルトとミサトはその光景を見て目を瞬かせていたが、俺も頷いて受付を済ませに歩き出すのだった。




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