第352話 〈金色ピップスちゃんぬいぐるみ〉が増えた。
「では報酬としてこちら、〈金色ピップスちゃんぬいぐるみ〉を贈呈します」
「ありがとうございますフィリス先生!」
フィリス先生から渡されたレアモンスター〈ゴピップス〉にそっくりなぬいぐるみを
いや、ラナだけじゃなく他の女性陣も少なからず〈ゴピップス〉ぬいぐるみに嬉しそうな顔をしている。ぬいぐるみ好きのリカなんて、姉の前だからと態度は隠そうとしているがキラキラした目をまったく隠せてはいない。
俺たちはレアモンスター〈ゴピップス〉を倒した後、10層にいたFボスを倒して転移陣で帰還し、クエストを受注。そのまま〈
途中よく分からなかったが今に至るのだ。フィリス先生がなぜ?
ちなみにだが〈ゴピップス〉からのレアドロップは〈精霊樹の苗木〉というギルド設置型アイテムだ。〈ダン活〉では珍しく、定期的に〈精霊樹の幼い実〉という素材を生み出してくれる。〈精霊樹の幼い実〉は戦闘不能から復帰するアイテムを作る材料になるため非常に有用だった、報酬が2万QP(2000万ミール)というのも頷ける。
え、じゃあこれ〈エデン〉では使わないのかというと、正直今はあまり必要ないかなと思う。上級ダンジョンでは〈苗木〉系の完全上位互換〈成樹〉系アイテムもドロップするので、使うとしたらそっちだな。
ギルド設置型アイテムには、設置数に上限があるのだ。
ということで躊躇せず納品すると、例の限定生産品ぬいぐるみを持ってフィリス先生が現れたというわけだ。やっぱりよく分からない。
しかもラナたちが全然不思議がっていないのもよく分からない。
「こ、これは可愛いわ!」
ぬいぐるみを受け取ったラナはご満悦だった。すぐにカルアが側による。
「ん、リカもおいで」
「う、うむ。ラナ殿下、私にも触らせていただけないだろうか?」
「もちろんいいわよ! みんなで撫でましょう!」
えっと、なんて言ったか。〈金色ピップスちゃんぬいぐるみ〉だったか?
大人気だな。
まあ、細かいことはいいか?
「シエラは参加しないのか?」
「ええ。後で触らせてもらうわ」
あ、やっぱりシエラも触るのか。〈エデン〉はぬいぐるみ好きが多い。
俺も後で触らせてもらおう。
とそこでフィリス先生が憂うように、しかしホッとしたように言う。
「それにしても助かったわ。〈精霊樹の苗木〉は本当に人気で、このQPでも納品に来てくれる学生はほとんどいないのよ」
「はは、お役に立てたら嬉しいですね」
まあ、分からんでもない。ゲームで復帰系アイテムってすごく重要だから、好き好んで復帰系アイテムを売ろうとする人は少数派だ。某ゲームに登場する世界樹の葉ってなんであんなに溜め込むんだろうな。
しかし、そこそこの金額で売れるので、本当にミールに困ったときは売るけどな。
こほんこほん。話がそれた。
とはいえ、リアル金の成る木である〈精霊樹の苗木〉本体を売る、あるいは納品する人はほぼいないだろう。
〈エデン〉は特別だ。
「本当に、ぬいぐるみを追加報酬にしてよかったわ」
「…………」
否定したいけど否定しきれない俺がいる。
〈エデン〉はぬいぐるみが報酬だから有用な〈精霊樹の苗木〉を納品したと思われてるぞ。
いいのだろうか……。
まあ、あのラナたちのはしゃぎっぷりを見るに、良かったのだろう。
レアモンスターの〈ゴピップス〉よりあのぬいぐるみの方が可愛いしな。
ぬいぐるみはデフォルメされていて結構可愛く仕上がっている、匠の腕を感じるね。
ちなみに後で知ったことだが、〈エデン〉にある〈モチちゃん〉と作り手は同じ人だったらしい。なるほど……。
とりあえずホクホク顔で〈エデン〉のギルド部屋に帰還した。
外を見るとそろそろ夕方だ。解散するにはいい時間だな。
と、思っていたのだが、
「名前は何がいいかしら?」
シエラの一言により事態は思わぬ方向へ進むことになった。
「名前か、非常に重要な問題だな」
「ん。超重要」
リカとカルアも唸る。
特にリカの瞳がマジだ。怖い。
俺はそっと〈モチちゃん〉を掴むとリカに押し付けた。
「ほぉわ! な、何をするんだゼフィルス!」
「とりあえず落ち着け。目がマジだったぞ」
「当たり前だ。重要なことだぞ。しかしそれとは別にしてありがとう」
「もっちもっち」
押し付けた〈モチちゃん〉は無事リカの懐に納まった。いや大きさ的に収まりきっていないが、まあこれでいいだろう。
カルアも近づいてモチモチしだす。なんか思っていたことと違う。
「シエラは何かいい案はあるかしら?」
「ってラナ! いつの間に〈幸猫様〉を攫った!?」
「何よいいじゃない! 〈幸猫様〉だってここに居たがっている筈よ!」
リカとカルアに集中していたらいつの間にかラナの膝の上に〈幸猫様〉が座っていた。
マジでいつの間に攫ったんだ!?
最近ラナの〈幸猫様〉奪取術の錬度が上がっている気がする……。気のせいであってほしい。
「時間もあまり無いのだし、早く決めてしまいましょう。〈ゴピップス〉ちゃんはダメよね?」
話が前に進まないことに業を煮やしたのか、シエラが進行役を買って出る。
「それは可愛くないわ」
「まあ、そうだろうな」
〈ゴールデンなピップス〉で〈ゴピップス〉。なんでそこだけ縮めちゃったんだ開発陣?
ちなみにピップスとは、このモンスターの種族の名称だ。由来は分からない。
「双葉がぴょこぴょこして可愛いのよ」
「じゃあ〈双葉ちゃん〉にするか?」
ラナが双葉の部分をツンツンして愉悦に浸っている。
左手で〈幸猫様〉を撫で、右手で〈金色ピップス〉をつつく。なんて贅沢な。
しかし、美少女とセットだと途端に尊い絵になるから不思議。
「双葉ちゃんはなんかダメな気がするな。間を取ってくっつけて、〈フタピちゃん〉というのはどうだろう?」
「良いわね! なんとなく、この可愛い見た目に似合う気がするわ!」
「ん、いいかも」
リカが直感で双葉ちゃんを却下して、別の案を提案した。英断かもしれない。
俺とシエラはなんでも良かったので、無事ラナとカルアの心を掴んだ〈フタピちゃん〉に決まった。
また〈エデン〉にぬいぐるみが増えたぁ。
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