閑話その1 とある青年と秘密の部屋




 とある秘密の部屋で、とある青年が秘密の報告を受けていた。


「失礼します。今日の報告をお持ちいたしました」


「ご苦労様セレスタン。聞かせてもらうよ」


「はい。今日の〈エデン〉の活動は防具の調達に決まり、急遽シングルオークションへの参加をしてまいりました」


「シングルオークション? ああ、あのQPを使ったんだね?」


「はい。生産ギルドの防具セットを3つ調達いたしました。ただ……」


「ん? 何か言いにくいことでもあったのかい?」


「はい。実はサプライズ品で〈芳醇な100%リンゴジュース〉が出品されました」


「なんだって!! なんてことだ、出品が確定した時点で僕の所に話が通るようにしておいたはずなのに……。誰が購入したか調べはついているかい? すぐに交渉を持ちかけないと」


「それが、ご購入されたのは〈エデン〉なのです」


「……ん?」


「もっと言えばラナ殿下の指示でご購入いたしました」


「な! なんだって! それは本当かい!?」


「はい。〈エデン〉のオークションの参加に本日はラナ殿下もご出席されまして」


「はぁ。そうか。ラナは昔っからなぜかアレに好かれていたからね、手に入りにくいはずなのに、なぜかラナの手元によく集まるんだよ。サプライズ品かぁ。普通の商品なら僕に知らせが来るから買って送ってあげたのに」


「ご機嫌取りも大変ですね」


「はっは。セレスタンも言うようになったね。でも、あのジュースを飲むラナが大好きなんだ。本当はもっとたくさん送ってあげたいくらいさ。それより、以前ラナにプレゼントしたジュースはもう飲んでしまったのかい?」


「はい。祝勝会を二度開きまして」


「そうか。ラナは喜んでくれたかい?」


「それはもう。とても感謝しておりました」


「そうか。そうかぁ……。こほん。それで報告は以上か?」


「いえ、オークションでラナ殿下がジュースを購入された予算ですが」


「ああ、僕が渡した分から引いていいよ。本当なら僕が買った後ラナにプレゼントしたほうが好感度が上がったのだが、残念だよ。せめてお金は誰が出したのか、その辺頼むよセレスタン?」


「はい。お任せください」


「ラナもこれで、そろそろ許してくれるといいんだけどね」




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