第350話 カルアの装備を整えよう。マリー先輩の職業判明
「ん、どう?」
「うん! やっぱりカルアに似合うわね! 良い感じよ!」
「そうだな。それに性能面でもかなり強力だ。ゼフィルスが太鼓判を押すほどだからな。ただ、少しサイズが大きいか?」
「そうね。マリー先輩に言ってその辺直してもらいましょう」
扉の向こうからキャッキャと女子たちの楽しそうな声が聞こえる。
察するにカルアが例の〈傭兵妖精防具セット〉を試着してお披露目したのだろう。
ラナが褒め、リカが少しサイズを気にして、シエラが提案しているな。
カルアは少し背が小さいからな。ハンナほどではないが、ラナに抱きかかえられると足が浮くくらいには小柄だ。
装備のサイズは平均的な女子のものだったのかもしれない。
ちなみに現在オークション会場にあるとある一室で品を確認中だ。
その過程でカルアに試着させてみようという話になり、俺が追い出されて今に到る。
「ゼフィルス~、入ってきていいわよ~」
おっとラナからお呼びが掛かった。
ガチャリと扉を開けて入室する。
すると、一番にカルアが目に入った。
「ん。どう?」
「おう。凄くカッコいいな!」
「んふ。よかった」
俺の答えにカルアは大満足したようだ。その場でクルリと一回転している。
カルアの姿は〈傭兵妖精防具セット〉を全て装備したちょっとワイルド風な見た目だ。
しかし、女性装備らしい可愛らしさも兼ね備えられている。レザージャケットは長めだが、他の服は全体的に短めでヘソ出し腿出しで肌色が少し多めなのだが、小柄なカルアにはそれが普通に似合っていた。
「ゼフィルス。これ使って良いの?」
「レンタル料は貰うけどな。使っていいぞ」
装備はお高い。さすがにギルドからのサポートの一環としてもタダとはいかない。
装備は貸与する代わりにメンバーに支払う給与からその分を引く形にしよう、とセレスタンやシエラとも話し合っていた。
気に入ったらギルドから購入するのももちろん有りだ。その場合、今まで貸与品の貸し出しで回収した金額を差し引いた金額で購入できる形にする。
まあ、その時にはステップアップして次のステージへ進んでいるということもあるので、購入するか、レンタル料を払うかはメンバー次第だ。
「ん。ありがとう。ありがたく使わせてもらう」
カルアは本当に装備を気に入ったんだな。後でセレスタンに貸与の手続きをしてもらうとしよう。
「そういえばシエラ、今回のオークションでどれくらい使ったんだ?」
「あなたね……。いいわ、〈傭兵妖精防具セット〉2100万ミール、〈海原の
ふむふむ、なるほど。
ちなみに〈芳醇な100%リンゴジュース〉がカウントされてないのは、まああれだ。経費が落ちなかったからだ。当たり前だ。
しかしセレスタンがどこからともなく〈芳醇な100%リンゴジュース〉の購入費を取り出していたが、あれはどこから持ってきたのだろうか?
何か触れてはいけない気がするのでそっとしておく。
さて、他の2点の装備セットについてだ。
一つ目、〈海原の
防御力が高いため金額も一番高かった。タンクの装備は本当にお金が掛かる。タンクは防具に手が抜けないから仕方ないのだがな。
ただメンバーの中で受けタンクは、今のところシエラとリカ、あとルルと俺がサブタンクで該当するが……、誰が使うかは決めていない。
というか全員が姫職装備か天空シリーズを装備しているので装備変更する必要が無かったりする。じゃあ買うなよとも思うが、これが中々にいい装備なのだ。これはこの先、受けタンクが仲間に加わったときように取っておくつもりだ。
もう一つの〈
後で話を持ちかけてみよう。
「これに先ほどの出品物〈怒りの竹割戦斧〉の売り上げが2180万ミール。1割出品手数料が引かれるけど、これを収入と加算すれば。出費は5268万ミールね」
シエラが〈学生手帳〉の電卓機能みたいなものを使いタタタっと計算する。
約5000万ミール。QPにすると5万QPか。
高いと見るべきか、安いと見るべきか。金銭感覚がボロくなっていく~。
しかし、まだDランクにも上がっていないのだ。ここで散財するわけにはいかない。
これくらいで収めておくべきだろう。
「なるほど。わかった。ありがとうシエラ」
「別に。これくらいいつでも聞いていいわよ」
思ったよりQPを使わなかった事に胸をなで下ろし、そのまま俺たちはマリー先輩のいるギルド、〈ワッペンシールステッカー〉ギルドを訪ねることにした。……のだが。
途中なぜかシズとパメラとエステルが現れて、ラナとセレスタンが連れて行かれてしまうトラブルが起きた。
「ちょ、シズ!? ダメよ、私はこれからカルアの装備の調整に立ち会うのよ!?」
「ダメです。セレスタンも来なさい? 少々お話があります」
「……かしこまりました。ゼフィルス様、少々席を外させていただきます」
「あー、ああ。気をつけてな?」
「え!? ちょ、ゼフィルスーー!?」
ラナとセレスタンは連れて行かれてしまった。
何が起こるのか俺は知らない。
俺たちは4人になってしまった。
しかし、予定通り〈ワッペンシールステッカー〉に到着すると、店番に居たのはいつもお世話になっています。マリー先輩だった。
「ということで、〈傭兵妖精防具セット〉をカルアに合わせて調整してくれ」
「ほいほーい。いやぁ、うちの自慢の一品を
「お、これってマリー先輩が作ったのか?」
「そだよ。うちの
「いいや初耳だ」
「私も初めて聞いたわね」
俺だけではなくシエラたちも初耳らしい。
マリー先輩の
【
そういえばマリー先輩、レザー系の素材とかやけに欲しがってたっけ? よし、今度いつものお礼に大量に持ち込もうと決める。
「んん? なんや寒気が……、気のせいやろうか? んん、ああ、そんでな、あるギルドが大量にクエストを発注した関係でこっちにも大量に素材が流れてきてな。もうインスピレーションが爆発してもうたんや」
なんと驚き。〈傭兵妖精防具セット〉の作製者はマリー先輩だった。
性能も悪くないのに金額もさほど高くなく、良い買い物をさせてもらった。感謝感謝だ。
頭を撫でておこう。
「ゼフィルス、何をしているのかしら?」
「は、つい!」
「ついじゃないわ」
しまった。いつもの調子でマリー先輩に接していたが、今日はシエラたちと来ているんだった。振り向くとシエラの目がジト目、ではなくキリキリ釣りあがってる!
お、俺は何もやましいことはしてないぞ! だから通報はしないでください!
しかし、マリー先輩は気にした様子もなく、にしし、みたいな笑い方をして〈傭兵妖精防具セット〉を持ってその場で調整し始めた。
なぜチラチラとこちらを伺うのか。さては面白がっているな?
「まさかゼフィルス。毎回マリー先輩に失礼をしているのではないでしょうね?」
シエラの目がジト目じゃない! そんな!?
「い、いや、そんなことはない。今回のはあれだ。感謝が溢れた結果というか」
「感謝が溢れたら、撫でるのかしら?」
シエラからの追及が止まない!
「い、いや、それはマリー先輩だからであってだな」
「それはつまり、マリー先輩は特別ということなの?」
うおぉぉぉ! 俺はいったいどうしたら良いんだ!? どう答えても問いただされる未来しか見えない!?
カルアはマリー先輩の手元を凝視して動かないし、リカは苦笑しかしていなかった。
助けてマリー先輩!
しかし、マリー先輩はケラケラ笑いながら楽しそうに見つめていただけだった。
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