第349話 オークションで防具を! サプライズ2品目!




 名称〈傭兵妖精防具セット〉は中級上位チュウジョウの一角〈四季の妖精ダンジョン〉に登場する妖精型モンスターの素材から作られた防具だ。

 ボスモンスターの素材があまり使われていないため作るのはさほど難しくはないが、上級ダンジョンに行くには厳しい性能しかもっていない。中級上位までしか使えない装備だな。


 しかし、俺たちが求めていたのはまさにこんな装備なのだ。

 豪華すぎず、いい性能すぎず、貸与品としてふさわしい程度の防具。

 さすが〈ワッペンシールステッカー〉ギルド。

 この装備はまさに下位ギルド向けに作られた装備品なのだろう。顧客のことを考えた装備セットだな。

 お値段も通常のモンスター素材で作った装備なので高過ぎないというのも魅力的なポイントだ。


 そして運ばれてくる商品。

 妖精装備なので、なんというか布面積が少ない。

 しかし傭兵と名前が付いているとおり、動きやすさを重視した少しワイルド風な装備一式だな。


 品は、丈の短いファンタジー服装備にホットパンツに近いショートパンツ。レザージャケットのような上着。ブーツ。ゴーグル。スリーブ。マフラーのアクセサリー装備。の6点。

 中々カッコイイ装備だ。女性用だけど。カルアにぴったりな気がする。

 軽装。あれを着るとおそらくへそが出る上に太ももなんかも無防備に映るかもしれないが、そこは〈ダン活〉、HPがあるので安全面は保障されている。どれだけ肌が見えていても問題はない。不思議だなぁ。


「あら、あれはカルアに似合いそうね」


「うむ。それに動きやすそうだな。カルアはどうだ?」


「ん。いいと思う」


 ラナ、リカの評価も上々。本人のカルアも先ほどの答えと乗り気なようだ。


 司会者が性能を語っているが、さすが〈ワッペンシールステッカー〉、性能面でもいい感じに優秀だ。上級では心もとないが、中級なら問題なく使えるだろう。


「じゃあ、落札するぞ。いいか?」


「ん。ゼフィルス。お願い」


「おう。任された。予算は3000万くらいを予定しているが、セレスタン、どうだ?」


「かまいませんが、おそらくもう少し安く済むでしょう。私見ですが、おそらく2000万ミールを少し超える程度かと思われます」


「そこまでわかるのか。いや、安く済むのならそれにこした事はないけどな」


 セレスタンからも許可が下りたので予定通り落札することを決める。

 それにしてもセレスタンは目利きもできるのか。確かにゲームだとこの装備はセットで2000万前後だった。

 しかし、ここリアルではもう少し価格が上がっている可能性があったからこその予算だったのだが、防具はゲームの時と値段が変わっていないのか?

 それとも〈傭兵妖精防具セット〉だけの話なのか。



「では〈傭兵妖精防具セット〉は2番さんが2100万ミールで落札です!」


「うーん、微妙な値段だ」


 無事落札できた。

 リアルの値段の方が上がっているとも言えるし、誤差の範囲とも言える。

 しかし高くなっていることは高くなっているので、やはり今後も予算を多めに取っておくことにしよう。


「思ったより安く買えましたね。理由として、Dランク以下に向けた商品でありましたが、そもそもシングルオークションに参加できるギルドとなると高ランクのギルドばかりですから。競争率が低かったのでしょう」


 なるほど。セレスタンの言うことに納得する。

 やはり値段は若干リアルの方が高いらしい。今回は安くすんでこの値段だったのだ。

 そして、確かにセレスタンの言うとおりEランクギルドでシングルオークションに参加しているギルドなんて〈エデン〉くらいのものだ。普通は参加したら破産しちゃう! かもしれないからな。


 そう考えると〈ワッペンシールステッカー〉は利益度外視で防具をオークションに掛けてくれたのだろうか。だとすればありがたいなぁ。


 その後もオークションは進み、俺たちも追加で2点の防具セットを落札した。

 これはまた別の生産ギルドが作ったものだが〈ワッペンシールステッカー〉に劣らない素晴らしい出来の装備だった。


 これで、防具の方も揃ってきただろう。

 足りないものは〈ワッペンシールステッカー〉ギルドに依頼をかけよう。

 また、学園側が様々なレアな装備、アイテム、素材などとQPを交換してくれる〈交換所〉という施設があるが、後日ここにも行こうと思っている。


「とりあえずはこんなところか」


「そうね。じゃあもう退出する?」


「そうだなぁ」


 目的のものは手に入ったのだしこれ以上オークションには用はない。

 ラナの言うとおりそろそろ退出を。いや、次はサプライズ品だったな。

 それを見てからでも出るのは遅くはないだろう。


「次の品で最後にしておくか」


「分かったわ! 次はサプライズ品ね! 楽しみだわ!」


 ラナは先ほど〈芳醇な100%リンゴジュース〉を手に入れたのでサプライズ品に好感触だ。

 セレスタンとシエラも仕方ないと肩を竦めていた。すまんねぇ。


 視線を前に向けると司会者が再び宣言するところだった。


「お待たせいたしました! 再びサプライズ品の登場だぁぁぁ!! なんと〈金箱〉産の武器であります! その攻撃力は上級ダンジョンでも通用しそうなほど強力! その名も〈怒りの竹割戦斧〉だぁぁぁぁ!!」


「あ。あれは〈エデン〉からの出品物ですね」


 セレスタンの発言にずっこけそうになった。

 初級上位ダンジョン、〈付喪の竹林ダンジョン〉の通常ボス、〈竹割太郎〉の〈金箱〉産武器だ。

 一応、初級ダンジョンからドロップする武器の中ではトップの攻撃力を誇るが、さすがに上級ダンジョンで使いたければ強化玉が必要な品でしかない。いや、それでも俺は使わないかな。


 ってそうじゃない、サプライズ品って〈エデン〉からの出品物かよ!

 そういえばセレスタンには、毎週オークションにいらない〈金箱〉産装備や〈銀箱〉産のあれやこれやをオークションで出品させていた。

 今回は〈怒りの竹割戦斧〉だったようだ。


 そういえばあれってシエラたちもクエストの最中にツモってダブったとか言ってたっけ。

 片方をオークションに掛けようとお願いしてたんだった。


 このタイミングかよ。すっごい肩透かしだ。

 見ろ、ラナも……、あれなんかわくわくしてますね。


「ねえゼフィルス! あれはいくらになるのかしら!? なんだかとても気になるのよ!」


 確かにオークションに出品したものに値がついていくのはワクワクするかもしれない。

 純粋にオークションを楽しんでるラナが眩しすぎる。


「確かに気になるわね。私たちが手に入れたものでもあるもの」


 シエラも興味津々の様子だ。

 そういえば出品したのはシエラたちがツモった方だったか。


 俺も前を見る。


「ではまずは100万ミールから行きましょう! おおっと早速15番さん150万ミール! 87番さん200万ミール、22番さん250万ミールだぁぁ!!」


 おおお、やばい。ゲームだと味気なかったせりが、なんかリアルだとすごくドキドキするぞ!?


「55番さん1600万ミール! 15番さん1650万ミール! ここまでまったく衰えません! おっと87番さんまたも1700万ミールだぁぁぁ!」


 ゲーム時代の〈怒りの竹割戦斧〉の相場は1000万ミール前後。

 にも関わらず、50万ミールの上乗せが止まらない。すげぇ!

 武器はリアルだとかなり価値が上がるようだ。


「55番さん2110万ミール! さすがに衰えてきたか! 15番さん2130万ミール! 87番さん2180万ミール! 素晴らしい! ああっと55番さんここでリタイアか!? 15番さんは? ああっとこちらも打ち止めのようです! ではサプライズ品、〈怒りの竹割戦斧〉は2180万ミールで87番さんが落札でぇぇす!!」


 ゲーム相場の約倍になった。テンション上がるぅぅ!


「すごいわね! 武器一品で2180万ミールの儲けよ! すっごいわ!」


「おおおお! もう一本もオークション掛けるかセレスタン!?」


「ゼフィルス様お待ちを。シングルオークションに掛けられるのは週に1品でございます」


 そういえばそうだった。

 俺たちはEランクギルド。シングルの方には週に1品しか出すことはできない。

 ちなみにネトオクの方は週に2品まで出せる。


 くっ、早くギルドランクを上げたい!


 とりあえず、オークション会場を出ることにした。

 俺たちは商品の受け取りに向かったのだった。




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