第276話 〈笛〉が8つ並ぶとき、爽やかなゼフィルス。
いやあ、臨時講師って思っていた以上に楽しかったわ。
学生が皆良い子で真剣に授業を受けてくれたからな、教師冥利に尽きる。
授業が終わった後、結構な女の子から質問を受けた。皆本当に真面目だ。
おかげで軽くアドバイスするって言っていたのに結構大きくアドバイスしてしまった気がする。
でもこれは仕方ない。女子からチヤホヤされるのすごく気持ちよかったです。
また、今回この〈育成論〉を受講してくれた学生はLVが低い子ばかりだった。
一番LVが高かった子も同じクラスの3人がLV18だったのでまだまだこれからだ。
なんとかLVが低いうちに〈育成論〉を教えてあげられて良かったよ。
皆やる気十分で、明日と明後日はダンジョンアタックに挑むという意欲に燃えていたからな。来週、彼女たちがどう成長しているのか凄く楽しみだ。
今回で〈育成論〉の考え方はだいたい伝えたので、来週からは質問の受付をメインにするかな。絶対皆何かしらの質問を抱え込んでいるはずだしな。
いやあ、攻略サイトで〈ダン活〉プレイヤーたちと熱く語り合った時の事を思い出すなぁ。
楽しみになってきた!
授業も終わったので今回の反省点や改善点、来週以降の授業のスケジュールや今回寄せられた質問などをセレスタンと纏めて今日の仕事は終了する。
「さて、セレスタンお疲れ様だ。それで明日からの件についてだが」
「はい、ご用意ができております」
「さすがセレスタンだなぁ」
セレスタンが微笑みながらそう言って、バッグからいくつもの〈笛〉を取り出す。
俺が〈笛〉の回復を任せていたやつだ。
今度の土日は例の〈学園長クエスト〉を進める予定だった。特に〈ビリビリクマリス〉の素材は
本当は平日もダンジョンに行きたかったのだが、色々と予定もあったし中級ダンジョンは深いため放課後に行って日帰りでは時間がなさ過ぎる。
できなくはないがそこまで無理をするほどではない。
俺の予定では土日の2回のダンジョンアタックで十分間に合う予想だ。
それで今回は依頼がレアボス素材である。
つまり〈笛〉がいる。
ただ、この前〈エンペラーゴブリン〉戦で、そりゃあもう大量に〈笛〉の回数を消費してしまい回復代がえらいことになってしまい、要は〈笛〉が回復しきっていなかったのである。
〈エンペラーゴブリン〉の時はソロだったので俺の個人ミールで回復するのが筋ではあったが、〈エンペラーゴブリン〉の素材が捌けないことには俺の手持ちが足りなかった経緯があった。無念。
というわけでセレスタンに相談し、回復をお願いしていた形だ。
セレスタンはその〈エンペラーゴブリン〉の査定額から引く形で〈笛〉を回復してきてくれた。助かるぜ。
さらに学園長に約束してあった前報酬として〈笛〉も貰ってきていた。2つは貸与品だが。
計8つの〈笛〉が全て満タンになっていることを確認する、素晴らしい。
レアボスを呼び出す〈笛〉が手の中に8つも! とても素晴らしい光景だ。
これはなんだろう…、〈ダブルビューティフォー〉とでも名付けようか?
改めて見る。何度みても〈笛〉が8つ。素晴らしい。
「ゼフィルス様、お納めください」
「お、おう。こほん。助かるよ」
見惚れていたのを誤魔化すように〈笛〉を自分のバッグにしまう。
さわさわとバッグを撫でてしまったのは不可抗力である。
ちなみにだが、あの時の〈エンペラーゴブリン〉の査定額は1,800万ミールだった。
〈笛〉代600万ミールを引いて手持ちに残ったのは1,200万ミールだったが。
「こちらが〈笛〉の代金を引いた素材のミールです。お受け取りください」
「助かるよ」
セレスタンが〈学生手帳〉を
しかし、1,800万ミールか…。
20体倒したので1体につき90万ミールの計算だ。最初に〈エンペラーゴブリン〉を倒した時は倍の値段が付いたのに、これがデフレということだろう。ちょっと素材を流しすぎたかな? またマリー先輩に怒られそうだ。
そんなことを考えながら、今日はこれで解散した。
翌日、今日は土曜日だ。
朝からテンション上げ上げでギルド部屋へ向かう。
「おはようみんな! 今日も良い朝だな!」
これから中級ダンジョンかと思うとワクワクして、湧き上がるテンションのままに爽やか風に挨拶をしながら部屋に入った。
「ゼフィルスおはよう! なんだか今日は爽やかね!」
ラナにはこの爽やか風を分かってもらえたようだ。
「おは」
「おはようゼフィルス」
「おはようございます、ゼフィルス殿」
カルア、リカ、エステルが順に挨拶してくれるのを手を振って答える。
今日の俺は爽やか風なのだ。
ギルド部屋に来ていたのはこの4人だけだったようだ。他のメンバーはまだ来ていないようだな。
「失礼いたしますわ。皆さんおはようございます。――あ、ゼフィルスさん。少々お話させていただいてもよろしいでしょうか?」
と思っていたら後ろからリーナが入ってきた。
挨拶をしながら入室すると、すぐに俺を見つけてパアっと花が咲いたような笑顔になって近寄ってきた。
相変わらず上品というか、お嬢様といった丁寧な話しかけ方だ。
もっと気軽に声を掛けて良いのにな。
ま、それが彼女の性分なのだろう。
「構わないさ」
「ありがとうございます。実はですね――」
リーナが近くで話し出すと何故か強い視線を感じるようになった。
「ねえリカ、カルア。なんだかゼフィルスでれでれしてないかしら?」
「う、うむ。していない、ことも無いかもしれんな」
「微妙?」
「そうかしら? なんだかムカつく顔をしている気がするのよ」
「あのラナ様、どうかお気を鎮めて…。そんな言葉を王女が使ってはいけません」
見られてる。なんだか全員の視線がこっちに向いている気がする。
何故だろうか? 今日の俺は爽やかなゼフィルスだというのに。
俺はなんだか嫌な汗をかきながらメンバーが集まるまでの間、妙な視線にさらされ続けたのだった。
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