第277話 クエスト攻略始動。ただのダンジョンアタック。




「今日は例の〈学園長クエスト〉のクリアを目指そうと思う」


 メンバー全員が集まった朝のミーティングで俺はそう切り出した。

 〈学園長クエスト〉はギルドに依頼されているので、ギルドの皆で協力してクリアを目指したい。


「良いと思うわよ。それに両方とも期限が喫緊なのだし、急いでやるべきね」


 シエラが俺の言葉に頷き、賛成する。


「わたくしもよろしいかと思いますわ。特に〈ビリビリクマリス〉の素材の期限は明日です。ゼフィルスさんの話では中級下位ダンジョンを攻略した実績もあるとのことですが、レアボスは初めてとのこと。〈笛〉の回数次第でも失敗はあり得ます。急ぎ向かうのがよろしいかと思いますわ」


 リーナも同じく賛成する、懸念事項も載せて。

 一応リーナには色々と〈エデン〉が独占している〈公式裏技戦術ボス周回〉やエステルのキャリーについて教えておいた。

 リーナは【姫軍師】なのでできるだけ情報を与えるようにしているのだ、が。それはそれとして心配は心配らしい。


「また、〈最高級からくり馬車〉の納品も期限が長いように見えて喫緊です。今日が5月18日土曜日ですから残り13日、作製に5日間掛かるとのことですので残り8日ですわね。幸い5月末は金曜日ですから5月26日日曜日までに依頼をすればギリギリ間に合いますわ」


 〈からくり馬車〉の方は最高級品をご所望なのでレアボスの〈陰陽次太郎〉の素材が必要になってくる。

 〈ビリビリクマリス〉の方もレアボスなので〈笛〉の運用についてしっかりスケジュールを組まないとやっちまったになりかねない。

 実際、リーナが言っていたように5月の最後は金曜日だ。つまり土日はあと2回ずつしかない。ダンジョンアタックのチャンスは4回。今回の土日に〈笛〉を全部〈ビリビリクマリス〉の素材に使い、次の土日で〈陰陽次太郎〉の素材を集めるやり方が良いだろう。


 スケジュール的にはギリギリに見えるな。リーナが喫緊と言ったのも分かる。

 まあ、〈からくり馬車〉の方は、間に合わなさそうなら最終手段として、放課後エステルのキャリーで即行日帰りで取ってくるのも有りなので俺はそこまで心配はしていない。

 しかし、それは最後の手段だな。


 あ、そういえば〈からくり馬車〉を作製してくれるはずのガント先輩に予定を聞くのを忘れてた。

 〈サンダージャベリン号〉を見る限り相当手間を掛けてくれたはずなので、もしかしたら時間の都合が合わないとかあるかも知れない。先にそっちを調べておかないと。


「セレスタン、ガント先輩のところに行って予定を聞いておいてくれないか? あと、また〈最高級からくり馬車〉の作製を依頼して欲しい。あ、まだ時間があるから今じゃなくていいぞ」


「かしこまりました。ではダンジョンから帰った後、お伺いいたしますね」


「よろしくな」


 これでとりあえずいい。学園からも話が通っているはずだしな。


「さて、それも踏まえて方針を決めるぞ。今日も3パーティに分けるつもりだ。一つは例の〈からくり馬車〉の素材の回収チーム、〈竹割太郎〉を大量に狩ってきてくれ。メンバーは、シエラをリーダーに、ハンナ、ルル、シェリア、パメラだ。ハンナはヒーラー装備で頼む」


「うん。分かったよ!」


 〈からくり馬車〉はレアボス〈陰陽次太郎〉の素材だけで出来ているわけでは無い。というよりむしろ通常ボスの〈竹割太郎〉の素材が多く使われている。こちらは〈笛〉を使わなくても良いので回収パーティを組んだ形だ。

 一応かなりの素材がいるからな。今の〈サンダージャベリン号〉も2日間掛けて狩りまくった素材を使っているので、今日明日で大量に稼いできて欲しい。


 また、パーティメンバーは【盾姫】でタンクのシエラを軸に、回復役は〈マナライトの杖〉に〈支援回復の書・魔能玉〉を埋め込んだ装備のハンナに努めてもらう。


 実は〈サボテンカウボーイ〉を狩った時にドロップした〈支援回復の書〉はしっかり〈魔能玉〉に転化しておいたのだ。

 能力は、

 ――――――――――

〈支援回復の書・魔能玉〉

 『ヒーリングLV7』『メガヒーリングLV3』

 『プロテクバリアLV9』

 ――――――――――

 である。


 なんと元は『ヒーリングLV5』だったものが〈ダブル能玉化現象〉を引き起こし『ヒーリングLV7』と『メガヒーリングLV3』が生えていた。ヤバい。これはすげぇ。語彙力が死ぬ。


 これが出来た時は思わずハンナと一緒にお高いお肉を買いに行ってしまった。お皿からはみ出るくらいお供えしてしまったよ。ありがとうございます〈幸猫様〉!


 また『プロテクLV8』だったものは『プロテクバリアLV9』に〈転化〉していた。

 効果は防御力アップに加え、一定数の物理ダメージを無効にするという強力なバフだ。ちなみに一定数のダメージというのはそれほど高くは無い。少し貧弱なバリアを張るというイメージだ。

 ボスの攻撃なんかにさらされれば1回2回殴られただけで砕けるようなものだが、あるのと無いのとじゃまったく違う。


 これでハンナは多少生き残れる確率が上がるというものだ。素晴らしい。

 今のところ〈魔能玉〉で一番の当たりだなこれは。


 〈エデン〉は現在ヒーラー不足なために、今回はハンナを臨時でヒーラーにして送り出す形だ。

 純ヒーラーが今のところラナしか無いから仕方ない。早く新しいヒーラーが欲しい。

 ミサト、本気で引き抜いちゃおうかな? サターン君たちが泣きそうだが、別に構わない。


 それはともかくとして、タンクとヒーラーが決まれば後はアタッカーだ。


 【ロリータヒーロー】で万が一の時はサブタンクも出来るデバフアタッカーのルルに、【精霊術師】でダメージディーラーのシェリア、そして【女忍者】で斥候や索敵も出来るパメラを加えたメンバーだ。

 タンクがシエラなのは、万が一レアボスをツモってしまった場合、全体攻撃に対する防御が今のところシエラの『インダクションカバー』だけだからだ。他のタンクではハンナがやられてしまうのでこのような構成だな。


 ちなみにボス部屋の門ドカンッ役はシェリアが担当する。シェリアのINTで『エレメントブーストLV5』して『エレメントジャベリンLV5』を叩き込めばボスがポップする威力がたたき出せるからな。


 今回は俺がパーティ構成を全部決めてしまったが皆に異論は無いようだ。よかった。


「次に〈ビリビリクマリス〉を狩りに行くチームだが、俺、ラナ、リカ、カルア、エステルが担当する」


 レアボス〈ビリビリクマリス〉が出現するのは中級下位チュカの一つ〈六森ろくもり雷木いかずちもくダンジョン〉だ。

 今のところ中級下位チュカに行けるメンバーが少ないためほとんど消去法で決定した。


 タンクはリカが基本的に受け持ち、俺もサブタンクとして加わる。

 ヒーラーはラナが担当。

 アタッカーはエステル。

 斥候と索敵はカルアだな。


 これも異論は無いようだ。


「そして最後にリーナ、セレスタン、シズのパーティーだ。リーナがまだLVが低いのでレベル上げを頼みたい」


「承りました」


「ありがとうございます。よろしくお願いしますセレスタンさん、シズさん」


「はい。こちらこそよろしくお願いします」


 俺の頼みにセレスタンが了承し、リーナが2人にお礼を言う。

 シズはどうかなと思ったが、シズも心よく引き受けてくれた。


 リーナはこの前〈初心者ダンジョン〉で時間を食いすぎてLV10で止まっている。

 なのでセレスタンとシズには初級下位ダンジョンの同行を頼んでおいた形だ。


 リーナには早めに俺の右腕になってもらいたいからな。追い抜かれるかもしれないが。

 こほん。


 その後いくつかの打ち合わせを行い、解散する。


 さて、楽しい楽しいダンジョンアタックの時間だ!




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