第248話 〈装備強化玉〉の必要数が白目になる件。
〈ジュラ・レックス〉のドロップは〈装備強化玉×14個〉だった。
正直なところ、これは嬉しい。
〈装備強化玉〉はそれなりに貴重な物で、中級以降のボスの〈銀箱〉産でしかドロップしない。
通常ボスや守護型のFボスなら3個しか落とさないので、1回で14個もドロップしたのは相当ラッキーな話だ。
何しろギルドメンバー全員の装備を強化しようとすると、この強化玉がむちゃくちゃ必要だからな。
さらに言えば、強化するためには強化玉が装備の+値と同じ数だけ要求されるのも地味に厳しい。
つまり、装備+1にするのに必要な強化玉は1個、
装備+2にするには装備+1と強化玉2個が必要。合計3個、
装備+3にするには装備+2と強化玉3個が必要。合計6個、
装備+4にするには装備+3と強化玉4個が必要。合計10個、
こんな感じに増えていく。
最高で最上級装備なら+10まで強化可能で、強化玉の必要数は合計55個だ。
1つの装備に55個である。
これをギルドメンバー全員の全装備を強化しようと思ったらいったいどれほどの数が要求されるのか、考えただけで白目になるレベルだ。一応計算してみると、
1人あたり、装備は、右手、左手、頭、体①、体②、腕、足、アクセサリー①、アクセサリー②、計9つの装備枠があり、ギルドメンバーは最高50人まで参加可能。
計算するとフルで揃えるためには(9つ×55個×50人=24,750個)の〈装備強化玉〉が必要である。
クラっときた。
ゲーム時代はフル強化された装備を作るのに本当に時間が足りなくて何度も泣きを見たんだ。
開発陣のアホー! 24,750個とかやっちゃダメなやつだろうが!
いや〈ダン活〉プレイヤーの中には「フル装備でギルドメンバー揃えました」動画とか普通にあったけどな。俺もやったことある。〈ダン活〉プレイヤーの熱意がヤバい件。
こほん。まあそんなわけで〈強化玉〉はあればあるほど良いんだ。うん。
ちなみに中級クラスの装備だと最大+4前後が限界だ。初級なら+2まで、といった感じで等級によって+の限界値が変わる。
通常の〈装備強化玉〉だと、平均初級+2、中級+4、上級+7、最上級+10、まで強化可能。
それ以上は〈性能限界玉〉が必要。
といった感じだ。
最上級クラスの装備だと最大強化数がわけ分からんリミットブレイクを起こしているのでサッと目を逸らす、決して直視してはいけない。心の平穏のためにも。
さて、ボスドロップを回収し終えた俺たちは、気を取り直して最下層を目指して歩き出した。
「ねえゼフィルス。なんか道中のモンスターがやたら強いのだけど!?」
「そりゃあ強いさ。下層のモンスターは最大LV50くらいあるからな。それに〈ジュラパ〉のモンスターはステータスが高いから、そう簡単には倒せない」
「それ早く言いなさいよ!」
言ったよ? 多分ラナが聞いていなかっただけだ。
楽しみあるあるだよな。楽しみにしすぎて話を聞き逃しちゃうって。
21層からのモンスターはLV48からLV50のモンスターが出現する。
俺たちのLVはハンナを抜いてLV52なので結構良い勝負だ。
俺たちは高位職なのでステータスは並外れて高いはずだが、〈ジュラパ〉は【筋肉戦士】と同じくステータス特化仕様。HP、STR、VITにビルドが偏っているためかなり
普通の上級生がここに挑まない理由だな。
現にモンスター1体を受け持ったエステルが倒すまでに分単位の時間を取られている。
物理パーティだと非常に難易度が高いダンジョンだな。攻略には魔法パーティが推奨されている。
こうして
しかし、今回は徘徊型ボスは
いやぁ、徘徊型を気にしなくて良い攻略は楽で良いぜ。
ラナたちは全然楽じゃなさそうだけどな。
そうして慣れない強ザコモンスターを相手にしつつ、俺たちはゆっくり下層へ下層へと降りていった。
さすが〈エデン〉のトップメンバーたちだ。手強くてもしっかりと無理のない範囲で戦闘をこなしている。今までたくさんした練習、経験の成果がここに現れているな。
たまにある隠し扉もちゃんと回って〈銀箱〉をゲットするのも忘れない。中身は装備だったりアイテムだったりと色々だが、使えそうな物は無かった。残念。しかし隠し扉のアイテムはもう二度とゲット出来ないのでこちらは取っておく。
ただ、行き止まりにある宝箱で出た〈銀箱〉はハンナの奉納行きだ。
せっかく初の行き止まり〈銀箱〉が湧いていたというのに中身はカス装備だったのだ。
本来なら値段も僅かしか付かないような品だが使い道はある。
中級〈銀箱〉産を奉納すればかなり良い物が出来上がるからな。〈MPポーション〉に使えば〈MPハイポーション〉になるためこういうものはハンナに回す。
「これで〈MPハイポーション〉が20個作れるはずだから
「任せてよ!」
ハンナは快く引き受けてくれた。パーティメンバーに【錬金術師】がいると現地生産ができるのが良いよな。
そんなこんなでお昼頃には俺たちは
「やっと着いたわね。中級ダンジョンって予想以上だったわ!」
「そうね。話には聞いていたけれど実際に戦うとまた別の印象を覚えるわね。もう少し練習したいわ」
ラナの感想にシエラも同意する。
2人にとっても中級ダンジョンはハードだったらしい。お疲れ様だ。
まあ、次はボス戦なのだけど。
「お昼の準備を始めますね、ハンナさん手伝っていただけますか?」
「あ、俺が手伝おう。ハンナには錬金を頼んでおいたんだ。――ハンナ、生産頼むな」
「うん! 早速やっちゃうね」
俺とエステルでお昼の準備、と言っても〈
後は簡易テーブルと椅子、その他諸々をセッティングすればあっと言う間にお昼の準備が完了する。
「はい、ゼフィルス君〈MPハイポーション〉20個、全部高品質で出来たよ~」
ハンナの方もすぐに終わったみたいだ。さすがハンナだな。早い。
「全員昼食が済んだらハンナが作ってくれた〈MPハイポーション〉を自分のバッグにしまっておいてくれ。回復量は155Pだから戦闘中MPがピンチになったら遠慮無く飲んでほしい」
〈MPハイポーション〉の回復量は通常なら100Pだが、ハンナは『薬回復量上昇付与LV1』を持っているため5%分の5Pが上乗せされるのだ。
高品質になれば1.5倍になって150Pとなり、そこに5Pが加算されるので最高で155Pとなる。
「分かったわ。ハンナありがとね。私ってMP凄く持っていかれちゃうから助かるのよ」
「いえいえ~」
ラナの礼にハンナが照れたように答える。
ラナは魔法バフ、回復、アタッカーと3種類の役割を並行して行うためMPを大量に消費しがちだ。ただの〈MPポーション〉では回復量が微々たるものなので、一回で大きく回復出来る〈MPハイポーション〉はとても嬉しいのだろう。少しテンションが高い。
その後昼食を食べ、休憩して体力を回復する。
そしていよいよ中級ダンジョン、初の最奥のボス戦だ。の前にボスの説明と打ち合わせだな。情報共有はしっかりしておかないと。
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