第249話 最奥に待ち構えるボス〈キングダイナソー〉!
「今回のボスは〈キングダイナソー〉。ガチ系と名高いマジで強いボスの一角だな。通称:〈ダイ
「〈キングダイナソー〉。…なんか名前だけでも強そうだね」
ハンナの言うとおりだな。キングにダイナソーだからな。名前からして強者臭がプンプンする。
「これまでのボスと同じくビルドがHP、STR、VITに特化しているためかなり強力だが、その分属性攻撃や魔法攻撃なんかはしてこない。ただ『地割れ』や『岩蹴り』などの遠距離攻撃も多用してくるから注意して欲しい。見た目はさっきの〈ジュラ・レックス〉に似ているな」
「なるほどね、つまり後衛にいても安心出来ないということね?」
「シエラの言うとおり、魔法が無いからと言って油断していると手痛い目に遭うぞ。シエラは後衛の直線上に居ないよう心がけて欲しい。後衛組もシエラの後方に居ないようにな」
巻き込まれが怖いのでそこら辺も注意しておく。
「まあ、他はこれまで戦ったFボスと挙動は大きく変わらないから注意点も同じだ」
恐竜型モンスターはどれも似通った攻撃をしてくるので、その辺すぐ慣れるだろう。
これまでFボスとは計5戦を経験しているメンバーたちだ。問題無い。
「なるほどです。では〈キングダイナソー〉も例の『フライング・恐竜・キック』をしてくるのですね?」
「ああ。〈ジュラ・レックス〉の時よりさらに威力が高いぞ。気をつけろ」
「はい。今度は引っかかりはしません」
エステルの目が決意に光る。
うん。大丈夫そうだな。
一通り打ち合わせが済んだらボス戦だ。
「皆、中級最初のボス戦だ。準備はいいか?」
「「「「おー!」」」」
「よっし、行くぞ!」
ボス部屋の門を潜る。
「あれが、〈キングダイナソー〉ですか」
「大きい。ゼフィルス君凄く大きいんだけど!」
部屋の奥に居たのは〈ジュラ・レックス〉をさらに大きく、より凶悪そうにした見た目の影。
二足歩行のティラノザウルスのようなフォルムで、歩く度にドシンドシンと重い足音が響いてくる。腹にくる響きだ。
その大きさにエステルとハンナが呆気にとられた声を出す。
やばいな。ゲーム時代に画面で見ていた物より相当迫力あるわ。さすがリアル。
だが、悠長に話している時間は無い。〈ダイ王〉がこちらを目指してズシンズシンと歩いてきているからだ。まだゆっくりだが、すぐに戦闘態勢に移るだろう。
「全員散開! まず『恐竜突進』が来るぞ、側面に展開するんだ! シエラ!」
「『オーラポイント』! 『ガードスタンス』!」
セオリー通りタンクのシエラがヘイトを取りつつ、前に出る。
まず、〈ダイ王〉は『恐竜突進』で距離を詰めてくるはずなので、俺たちは側面に回り込むように散開だ。俺とハンナは左側、エステルとラナが右側に展開する。挟み込む形だな。
「ジュガアアアアアッ!!」
予想通り〈ダイ王〉は『恐竜突進』でシエラを狙わんとした。
その巨体を震わせ、ダイナミックに突進する。その巨体は近くで見ると思った以上に大きい。
そのせいだろうか、ラナが進行ルートを見誤った。
「! ラナもっと下がれ! そこだと当たるぞ!」
「ラナ様!」
「え、きゃあ!?」
刹那の判断によりエステルがラナを遠ざけ事なきを得る。あぶねぇ! 尻尾がデカくブンブンと振り回すため、ラナが居た位置ではギリギリ当たりそうになったのだ。
「『城塞盾』!」
「ジュガアアアアアッ!!」
「ぐっ。思ったほどでは無い、わ!」
シエラが防御スキルを使い、あの巨体から繰り出される突進を受け止めた!
シエラと〈ダイ王〉の体格差が凄まじい。あれを受けて無事とかスキル良い仕事してる!
「行くよ! 〈炎光線の杖〉と〈炎光線の杖〉!」
「『ライトニングバースト』! 『シャインライトニング』!」
ハンナが魔法攻撃系のアイテム〈炎光線の杖〉をダブルで使いドカンドカン撃ち込んだ。
ヤバい、あれカッコイイ! 俺も今度やらせて貰おう!
俺もハンナに続いて魔法攻撃で追撃する。
「ごめんなさい、不覚を取ったわ! よくもやってくれたわね! 『聖光の耀剣』! 『光の―――」
「ラナ! まずバフを頼む!」
「! ああもう! 『守護の加護』! 『聖魔の加護』! 『獅子の加護』!」
ラナが復帰するがいきなり攻撃し始めたので声を掛けてバフを掛けてもらう。
さっきのが尾を引いているな。大丈夫か?
「ジュガアアアアアッ!!」
「範囲攻撃だ! エステル近づくな!」
「はい!」
〈ダイ王〉の『尻尾回転』、自身を中心とした周囲範囲攻撃だが、エステルは冷静にその行動を見極めて距離を取っていた。良い集中力だ。尻尾が長いためかなり距離を空けなければ回避は出来ない。それがしっかり見えている。
俺は今のうちに装備していた〈天空の剣〉を仕舞い〈滅恐竜剣〉に換装する。
今から接近戦だ!
「『カウンターバースト』!」
「ジュガ!?」
シエラがタイミングを合わせて『カウンターバースト』を見事に決め〈ダイ王〉が大きくノックバックした。大チャンスだ! ここで逃す俺では無い。
「『ソニックソード』! 『ハヤブサストライク』!」
「ジュガアアアア!?」
ノックバックが終わる前にスピードのある攻撃を叩き込み、見事〈ダイ王〉がダウンした。
「総攻撃だ!! 『
「ナイスゼフィルス! 『聖光の宝樹』! 『光の刃』! 『光の柱』!」
「行きます! 『閃光一閃突き』! 『トリプルシュート』! 『プレシャススラスト』!『ロングスラスト』!」
「追加で行くよ! 〈炎光線の杖〉と〈炎光線の杖〉4本目!」
「『インパクトバッシュ』! 『挑発』! 『シールドスマイト』!」
「ジュガアアアア!」
俺たちの全力の総攻撃が突き刺さり〈ダイ王〉のHPをがっつり削る。
しかし、
「何よ! 全然ダメージ受けてないじゃない!」
「いや、ダメージは入っている。こいつのHPがかなり多いんだ」
ラナが〈ダイ王〉のHPを見てびっくりしたように声を上げる。
その通り、これまで初級ダンジョンのボスであれば総攻撃を決めれば目に見えてHPバーが削れるが、中級からはそもそもボスのHPがかなり増える。初級に慣れ
初級ボスと中級ボスではこういうところも全然違う。
「ジュガアアアア!」
ダウンが終わり、〈ダイ王〉が起き上がった。仕切り直しだな。
タゲはシエラに向いたままだ。ダウン中もシエラはヘイトを稼いでくれていたからな。
やはりシエラのタンクは硬く、〈ダイ王〉の攻撃を的確に受けていく。
しかし、やはり一回に受けるダメージはこれまでとは比べものにならないほど多い。
一撃でHPが50や100と減っていく光景は見ていてドキドキする。
「『大回復の祝福』! 『守護の加護』!」
「『鉄壁』!」
しかしラナの回復とシエラの防御が合わされば隙は無い。
【聖女】の〈ユニークスキル〉のおかげでじゃんじゃん回復するのでシエラは戦闘不能までHPを減らすことは無い。
エステルも堅実に攻撃し、たとえ『フライング・恐竜・キック』の予備動作をされても引っかかることは無かった。
戦闘は安定し、10分以上を掛けて少しずつボスのHPを削って行く。
そして、とうとう〈ダイ王〉のHPがレッドゾーンに入った。
ボスが怒りに包まれていき、攻撃力とスピードが1.5倍に上がる。
怒りモードだ。
「ジュガガガガガ!!!」
「ラナ! 攻撃はしなくていいからバフと回復に集中してくれ! シエラは防御スキルを中心に、カウンターや攻撃スキルは狙わなくていいぞ!」
「分かったわ!」
「了解よ!」
ボスが怒ったことで俺たちは防御の姿勢を取った。
中級最奥ボスの怒りモードは3分間継続する。
今まで隙あれば全員が攻撃していたが、ラナとシエラには回復とタンクに集中してもらう形だ。
「エステルも深追いはするな! 敵の動きは思っている以上に速いぞ! ハンナは遠距離からどんどん撃ってくれ!」
「了解致しました!」
「任せて!」
事故が怖いためエステルにはヒットアンドアウェイを意識してもらう。
本命はハンナだ。遠距離から安全に攻撃して勝ちたい。
俺も武器を〈天空の剣〉に換装し、魔法で遠距離を中心に攻撃する。
この対策でいける。俺はそう思っていた。
しかし、予想外なことが起きた。
「ジュガアアアア!」
「『城塞た――きゃあ!」
「シエラ!」
シエラの防御スキルが間に合わず、〈ダイ王〉のスキル攻撃が直撃したのだ。
ボスの動きの速さにシエラが対応出来なかった。
一気にシエラのHPが200近くも減り、大きくノックバックする。まずい!
「『ソニックソード』!」
「『回復の願い』! 『守護の加護』!」
「ジュガアアアア!」
「やらせるか! 『ディフェンス』!」
俺はすぐに素早い移動からの斬撃スキルを発動。これを俺は移動に使い一気にシエラの前に割り込もうとする。
ラナもすぐにシエラに回復を掛けた。
しかし、〈ダイ王〉が追撃の『岩蹴り』でシエラを狙わんとする。
『岩蹴り』はサッカーボールのごとく岩を蹴り飛ばして攻撃するスキル、ノックバック中のシエラがこれを受けたらダウンすること必至。しかし、ギリギリで俺はシエラとの間に割り込むことに成功し、防御スキル『ディフェンス』で攻撃を防ぐことに成功。
「ジュガアアアア!」
「まだまだ! 『ガードラッシュ』!」
さらに追撃の『
ぐは、威力高ぃ! 防御スキル使っているのに2撃でHP120も持って行かれたぞ!
こんちくしょーとばかりに3撃カウンターをお見舞いする。
とそこへ頼もしい声が響いた。
「ゼフィルス、スイッチして」
「おう、頼むシエラ!」
ノックバックから復帰したシエラだ。
俺は透かさず横に避け、〈ダイ王〉の相手をシエラと代わる。
「今度はミスしないわ。『鉄壁』!」
「ジュガ!? ジュガァァァァ!」
「『城塞盾』!」
「ジュガガ!?」
今度は遅れない完璧なタイミングで防御スキルを発動するシエラ。
あまりに完璧すぎて攻撃が相殺されたぞ。パリィ、防御勝ちだ!
「邪魔な尻尾は斬る! 『
「ジュガァァァッ!?」
防御勝ちの衝撃で運良く目の前に来た長い尻尾に向けて俺の〈ユニークスキル〉を放つと、これまた運良く蓄積していたダメージが限界を迎え、尻尾を切断することに成功する。
これで尻尾の長さは半分以下だ、尻尾攻撃の射程が大きく減少した。これにより、尻尾を警戒して大きく距離を取らなくてはいけなかったエステルが接近出来るようになる。
尻尾を切断された衝撃でビクンビクンしていた〈ダイ王〉にも総攻撃をお見舞いし、HPが残り僅かとなった。
「ジュガガガガ!」
起き上がった〈ダイ王〉が最後の抵抗とばかりに『尻尾大回転』の周囲範囲攻撃で一掃を目論むが、切断されてしまった尻尾では脅威にはならず、エステルが低い態勢から攻撃をくぐり抜け、〈ダイ王〉の懐に入りこんだ。
「エステル、最後だ、トドメを刺せ!」
「はああっ! 『閃光一閃突き』!」
「ジュガッ!? ギャ……ア……ァ……」
エステルの一撃が綺麗に決まり、〈ダイ王〉のHPが0となってエフェクトの海に沈んでいく。
後に残ったのは金に輝く宝箱が2つだった。
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