第246話 〈ジュラ・レックス〉戦決着。尻尾を狙え!




 〈ダン活〉ではダウンという特殊状態異常がある。

 ダウンすると、起き上がるまでに数秒から十数秒の間、攻撃に無防備になる。さらに、ダウンを取られたキャラはヘイトに関係なく一定の確率でタゲを向けられてしまうため、そうなると戦闘不能に陥りやすい。ダウンは特殊状態異常なのでスキルや魔法で回復することができない。非常に危険な状態異常だ。


 そして今、その最も起こってほしくない状態が起こった。

 エステルが〈ジュラ・レックス〉の攻撃で吹っ飛ばされ、ダウンする。そして運の悪いことに〈ジュラ・レックス〉のタゲがエステルに置き換わった。

 まずい!

 パーティに動揺が走る。


「ラナ! 回復を! シエラ『カバー』! エステルの下へ行かせるな!」


「『大回復の祝福』! 『守護の加護』! 『天域の雨』!」


「『カバーシールド』! 『挑発』!」


 速攻で指示を出し、ラナが急ぎ大回復とバフを掛け、シエラがエステルと〈ジュラ・レックス〉との間に入って行く手を阻んだ。


「グギャラァァァ!」


「行かせるか! 『勇気ブレイブハート』! 『勇者の剣ブレイブスラッシュ』!『ライトニングバースト』!」


「『鉄壁』!」


 〈ジュラ・レックス〉はスキル『恐竜突進』で突破を図るが俺とシエラで全力で阻む。

 エステルのダウン状態が終わるまで、絶対にここは通さない!


 シエラが『恐竜突進』を受け止めると、俺は全力で攻撃する。クリティカルダウンを取るためだ。

 こちらがダウンしていても、相手もダウンさせてしまえば問題ない。


「『属性剣(雷)』! 『ハヤブサストライク』! 『ライトニングスラッシュ』!」


 しかし、運悪くクリティカルが出ない。元々クリティカルの発生する確率は低くそう簡単には出ない。


「! ゼフィルス何か来るわ!」


「くっ、範囲攻撃だ! 防御スキルで耐えろ! 『ガードラッシュ』!」


「グギャラァァァ!」


「『城塞盾』!」


 〈ジュラ・レックス〉が一瞬ためを作ったかと思うと、その場で一回転した。

 尻尾がラリアットのように迫るのを防御スキルでやり過ごす。


「グギャラァァァ!」


「くっ、次は『頭打あたまうち』だ!」


 徐々に〈ジュラ・レックス〉の攻撃の回転数が上がっていた。

 まさに、そこを通せとでも言うかのようだ。

 しかし、ここを通す気は無い!


「『ファイヤーボール』! 『フレアランス』! 『アイスランス』!」


「『回復の願い』! 『回復の祈り』!」


 側面に回りこんだハンナの攻撃も加わるが、〈ジュラ・レックス〉に怯む様子は無い。さすがにタフなボスだ。

 続いてラナの回復で俺とシエラのHPが全回復する。

 これでまだまだ耐えられるぞ。

 とその時〈ジュラ・レックス〉の挙動が変わる。


「すみませんでした。復帰します」


 エステルがダウンから戻ったようだ。良し。阻みきることができたようだ。

 しかしそのせいで〈ジュラ・レックス〉のタゲが俺に向いた。

 少し、攻撃しすぎたかもしれない。


「グギャララララ!」


「『オーラポイント』! 『挑発』!」


「『ソニックソード』!」


 すぐにシエラがヘイトを稼いでくれたおかげでタゲがシエラに変わり、俺は後ろに回りこんで斬りつけた。

 ラナとハンナ、エステルも攻撃に加わり、次第に戦闘が安定しだす。


 皆もだいぶ〈ジュラ・レックス〉の挙動に慣れてきたようだ。

 再び仕掛けてきた〈フライング・恐竜・キック〉も誰も引っかからずやり過ごし、そのままガンガンHPを削っていった。


「『聖魔の加護』! 『守護の加護』! 『聖光の耀剣』! 『光の刃』!」


「『フレアランス』! 『アイスランス』!」


「『ロングスラスト』! 『プレシャススラスト』!」


「『シャインライトニング』! 『ライトニングバースト』!」


「グギャララララ!?」


 〈ジュラ・レックス〉のHPが2割を下回った。

 すると、〈ジュラ・レックス〉が新たな挙動を見せた。


「! ボスが逃げるぞ! 絶対に逃がすな!」


「なによ、私から逃げられると思っているの!」


 徘徊型のボスはHPが一定以上減ると逃げてHPの回復を図る。

 〈ジュラ・レックス〉もHPがレッドゲージに迫り、こちらに背を向けて逃げ始めた。ちなみに足は引きずっていない。


「ギャラ、ギャラ、ギャララララ!」


「ええい、逃がすか! 全員、できるだけ足を狙え! スリップダウンを取るんだ! エステルは尻尾に全力攻撃!」


 俺はボスが逃げる動作に入った瞬間から装備を変更、〈天空の剣〉から〈滅恐竜剣〉に切り替える。俺の勇者魔法は今絶賛クールタイム中だからだ。物理ならこっちの方が火力が出る。

 俺も狙いは尻尾だ。こっちに背を向けているため簡単に捕捉できる。


「『トリプルシュート』! 『閃光一閃突き』!」


「『ハヤブサストライク』! 『ライトニングスラッシュ』! おっしゃ切れた!」


「グギャラァァァァァ!?」


 特定のボスモンスターは部位破壊や尻尾切断ギミックが存在する。

 今まで初級下位ショッカーのボス〈アリゲータートカゲ〉くらいしか尻尾切断ギミックは無かったが、実は〈ジュラ・レックス〉も尻尾を切断できるのだ。


 エステルと俺のスキルを大量に尻尾に浴び、あっという間に尻尾がちょん切れる。

 〈ジュラ・レックス〉は切断された衝撃により転げまわった。

 状態異常のダウンではないが、ビクンビクンしている今がチャンスだ!


「総攻撃だ! HPを削りきるぞ!」


「私に任せなさいよ! 『獅子の加護』! 『聖光の宝樹』! 『光の柱』!」


「ラナだけに良いかっこはさせん! 『勇者の剣ブレイブスラッシュ』! 『恐竜斬り』!」


「『姫騎士覚醒』!」


「「ああ!」」


 エステルが本気を出した!


 その後は争うように攻撃したことで〈ジュラ・レックス〉のHPが0になり、膨大なエフェクトの海に沈んで消えた。


 突発的徘徊型ボス、〈ジュラ・レックス〉戦。


 ――俺たちの勝利だ!




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