第241話 ゼフィルス2度目の研究所訪問。最強育成論!
「やあやあやあ【勇者】くん! 久しぶりだな! 君のおかげで研究所は大賑わいだぞ!」
「ミストン所長久しぶりです。上手くいったようで何よりですよ」
研究所に入ると前と同じ部屋に即で通された。
待ち時間ゼロだ。
研究所職員全員が俺の顔を見た瞬間VIPでも扱うかのようにご丁寧に案内してくれた。むしろ案内役を争っていた。俺はこの研究所では中々の人気らしい。
というか、全員が俺の顔を覚えていることにびっくりだ。前来たのは1ヶ月近く前のことなのにな。
いきなりアポイントも取らず来てすまない、と告げると全員が首が取れるかというくらい横にブンブン振って。いつでもお越しくださいと声を揃えて言うのだ。ガチ度がヤバい。
そんなこんなあったが、無事前と同じ部屋に通され、ミストン所長とも対面することができた。
ちなみにセレスタンは俺の後ろに控えている。
「実はあれから王国中の研究者たちがここに押しかけてきてな。そりゃあもう大変だったんだ。国立研究所のお偉いさん方が頭下げて頼み込んできた時は肝が冷えたぞ」
「それだけミストン所長のしたことは素晴らしいということですよ」
「全部ゼフィルス氏の情報だがな! ガハハハ」
まずは世間話に興じる。
最近の研究所は前のくたびれた様子とは一変し、全てが活気づいているらしい。
ミストン所長も以前より男前に見えなくもない。目の下に隈ができているが。
その原因が俺の情報だというのだから鼻が高い。〈ダン活〉プレイヤーの知識の結晶は、リアル〈ダン活〉の世界を大きく彩り、導いたのだ。
ああ、この感動を〈ダン活〉プレイヤーたちと分かち合えないのがとても、非常に残念でならない。
「それで、今日はどうしたのだ? 前に言っていた〈エデン〉の歓待を受けてもらえるという話か?」
そういえば研究所総出で〈エデン〉を歓待したいと以前ミストン所長に言われていたな。
高位職ばかりのギルド〈エデン〉は研究所にとって
「その話は残念ですが断られましたよ、自分たちは歓待を受ける理由が無いとのことでした。それに今は他にたくさんの候補がいるでしょう?」
研究所が発表した氷山の一角。
学園が総力を上げて全1年生にそれを受けさせたところ、今年の高位職発現者は、約2,000人という今まで聞いたことも無い大記録を打ち立てることになった。
聞いた話では、おそらく先日のことが歴史の教科書に載るだろう、とのことだ。
それだけの高位職が居るのならわざわざ〈エデン〉に拘る必要は無い。
ミストン所長も、残念だなと言いながら身を引いた。
さて、そろそろ本題に入ろう。
「実は今日ここに来たのは新しい情報のリークのため、なんですよ」
俺がそう告げると、ミストン所長がピキリと固まった。
まるで恐れていたことが起きたみたいな反応だ。ほんの少ししてミストン所長が再起動を果たす。
「そうかぁ。いやすまんな。実にありがたい申し出だ。研究所にとってもこの王国にとってもゼフィルス氏の情報は未来を照らす明るい希望となるだろう。しかしな、実はぶっちゃけた話、今の研究所にそれを受け止められるだけのキャパシティが無い」
ミストン所長が珍しく真剣な表情で言う。つまりマジな顔だ。マジで余裕が無いのだろう。
「知っていますよ。だからこそ今の今まで新しい情報は持ってこなかったんですから」
研究所は今や
俺もそれを知っていたので第二弾のリークを今まで持ってこなかった。
しかし、このままではいけない。
俺は第一弾の情報として
そして第二弾として、ある程度の
取得は始まりで、そこからどう育てるのかが真の重要ポイントだ。
調べてみたところ、このリアル世界には〈育成論〉というのはあまり馴染みが無い。
自分で調べ、自分の好きなようにステを振っていくのが常識だった。
確かに、誰かの育成を参考にすることもある、むしろそのやり方が一般的だ。
誰だって失敗はしたくない。成功者を参考にするのはよくあること。
だが、育成をゲーム的に進めようという試みはまったくと言って良いほど存在していなかったのだ。ここはゲームの世界なのに。
俺が推す〈最強育成論〉は、まず上級職LV100の時にある最強の姿を決め、そこに向かってスケジュールを組んで進めていくという、ゲームではありふれたやり方だ。当然妥協も一切無い。
しかし、ここはリアルで、しかも対象が自分自身である。
一度振ったら戻せないというリスクの中、自分のステータスをゲーム風に育成することに大きく抵抗があるのだろう。それに上級職LV100なんて到達できるかも分からない。いや、ほぼ不可能だ。最上級ダンジョンが攻略すらされていないのだから。
よって、その
ほとんどの研究は高位職の発現条件の発見や、どんな行動が
俺はずっとそれにメスを入れたかった。
いくら高位職に就いていようと、下手なステ振りは身を滅ぼす。
ゲーム時代、その場その場でステ振りして、結果役に立たないザコキャラを多く生み出してしまった俺が言うのだ。間違いない。
ステ振りは計画的に。これ重要。
もう5月に入り、1年生たちの
本当なら今すぐ〈育成論〉を広めておきたいところなのだ、
しかし、研究所は念願の大望が叶い、今やその研究でてんやわんや。
とても新しい研究に手を出す余裕は無い。
さてどうしたものかと、ここ最近ずっと考えていた。
その答えがさっき閃いた。
―――研究所が使えないのなら、俺が直接教えたら良いじゃない、と。
前に研究所にリークしたのは情報を素早く広めるためだった。
なので別に研究所に拘る必要は無かったのだ。前例とは恐ろしい。
ということでミストン所長にご相談。
ここの研究所は、学園の授業内容を決めることもできるらしいからな。
「ミストン所長、俺を臨時講師にしてみる気はありませんか?」
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