第240話 セレスタンとぶらり体験授業の旅。
選択授業の体験をさせてもらいながら色々周り、気がついたらもうお昼だった。
昼飯の時間だな。〈ゲーム〉ではカットされていた貴重な時間だ。
リアルだと購買、学食、飲食店、お弁当の4択から選べる。
最近の俺はリアル〈ダン活〉を楽しみつくすべく、各メニューを順番に消化中だ。
卒業までに全部コンプリートしてみたい。ちょっと難しいかもしれないが。
何しろメニューが多いのだ。こんな所まで多くしなくても良いのにと思わなくも無い。
今日は学食の日だったが、場所的に飲食店のほうが近いのでセレスタンと2人で飲食店で食べることにした。今日のメニューはイタリアンだな。
「ゼフィルス様。受講の申し込みは本日18時までとなっていますが、お決まりになられましたか?」
「いやぁ、難しい。なんでこう魅力的な授業ばっかりなんだろうな。迷っちまってしょうがない。そういうセレスタンはどうだ?」
「僕ですか? 先週申し上げたとおりゼフィルス様の受講する授業に参加したく思っています」
「そうだったな。でも本当にいいのか? 俺にくっ付いていなくても別に良いんだぞ?」
「いいえ。僕は従者ですので」
セレスタンの意思は固いようだ。
まあ、好きでやっているらしいから別にいいか。嫌になったらやめさせればいいし。
でもそれは少し寂しいので嫌いにさせないよう気をつけておこう。仕事はなるべく嫌なものを避けるべきだというのが俺の持論だ。仕事が楽しければ最高だな。
とりあえず午前中で回りたい授業は回り終えたので、午後はシエラの言っていた芸術系を少し回ることにした。
〈ダン活〉の芸術といえばインテリア。
ゲーム時代、俺がほとんど見向きもしなかった分野である。
攻略にほとんど関係なかったからな。
しかし、ここはリアル世界。もしかしたらゲーム時代には見つけられなかった新しい何かが見つかるかもしれない。新しくギルド部屋やギルドハウスのインテリア魂に火がつくかもしれない。
そんなワクワクを胸に、〈芸術課〉の選択授業を体験した。
結果から言おう。俺には難しかった。
今まで芸術とは無縁に生きてきた俺が急に芸術に関心を示すことなんてできなかったんだ。
一応、絵などに関してもセレスタンから色々説明を受けた。掲示されたレプリカの絵を見て、この絵は何々の本の一シーンを描いた有名な作品であり、こう読むのです。とか言って絵を感性ではなく論理的に読み取る方法を教えてくれたりもした。
しかし、面白くはあったが楽しいというわけではなかったな。
というかセレスタンって芸術にも明るいのかよ、ってそっちのほうが気になったわ。
「やはり、今まで攻略に傾倒しすぎていた俺が今更
「そのようなことは無いと思いますが。僕の説明も7割方理解しておられたようですし」
「いや、絵を理解できる面白さというのも分かったけどな。要は向いていないんだ、俺に」
向き不向きの問題だ。RPGが好きな人もいれば、シミュレーションが好きな人もいる。つまりはそういうことだ。俺は攻略がメイン、〈エデン〉の内装は他のメンバーに任せよう。少し女子女子してしまわないか心配だ。最近ギルド部屋にぬいぐるみが増えてきているし。
「もう残り時間が少なくなってきましたね。次が最後になるでしょう。どちらに向かいますか?」
「そうだなぁ」
時間は14時半、思いのほか長くいたようだ。最後のコマが終わるのが15時なのでセレスタンの言うとおり次の体験授業がラストになるだろう。
また、ここから距離的に遠くの授業も受けられない。近場で探すしかないが…。
もうめぼしいものは回り終えてしまったのであまり食指が動かないものが多い。
考える俺にセレスタンがスッと〈
「この付近で行っている授業をピックアップしました。どうぞ」
「さすがセレスタンだな。サンキュー」
恐るべき従者だぜまったく。
というのは冗談で、ありがたく見させてもらう。
しかし、やはりこの近くで面白そうなものは無さそうだ。
「でしたらこれなんていかがですか?」
「上級ダンジョン考察授業か…。それに参加してもなぁ」
それは、未だ踏破したことの無い上級ダンジョンに関する授業だ。まだ未確認のものや未知のモンスターが多く
だけど俺、上級ダンジョンどころか最上級ダンジョンまで全部知っているし。
教わる側よりむしろ教える側に立っていると自負している。
―――ん? 今なんか閃きかけたぞ。なんだ?
今一瞬だけ、すごく楽しそうなことを思いつきそうな気がしたんだ。
なんだろうか、今の一考をもう一度よく思い出そう。
俺は全部知っている。教わる側より教える側……。そうか、これだ!
「セレスタン、予定変更だ。研究所に行くぞ!」
「は? 選択授業はどうするのですか?」
「もう決めたぞ! 俺の6コマは全部決まった。よって体験授業も終わりだ。それよりも重大なことを思いついたんだ。研究所に行くぞ」
「かしこまりました」
考えてみれば授業も終わりなのでセレスタンを連れて行く必要は無かったかもしれないが、まあいい。
俺たちはここから程近い研究所を訪ねることにしたのだった。
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