第215話 〈採集課〉学生【ファーマー】のモナ。
「あははは! そんなに驚くことないじゃんか」
「い、いや、驚きますよ! 【勇者】って言ったらぼくたちの時代の星じゃないですか! そんな雲の上の存在どころか天空の存在と話すなんて恐れ多いです!?」
ほう。【勇者】を天空の存在と例えるか。言い得て妙である。ちなみに俺のダンジョン装備は天空シリーズって言うんだぞ。
現在俺たち3人は〈
その途中に自己紹介したら、思いっきり良いリアクションだったので大笑いして今に到る。
どうやら【勇者】という存在は一般人の同級生にとって遙か彼方の存在という認識らしい。
おそらくハンナも昨日似たような扱いを受けたのだろう。その様子、ちょっと俺も見てみたかった。
「というか、何故〈採集課〉に来ていたのですか? 【勇者】と言えばもっとこう、高貴な者が通う授業とかに出席するものかと思っていました」
「それは思い違いだな。俺は
「な、なるほど。確かに
なんかよく分からないがごまかせてしまった。
素直な子なのだろう。とりあえず落ち着いたようなので自己紹介の続きをする。
「あと、こっちが俺の従者をしている【バトラー】のセレスタンだ」
「セレスタンと申します」
「それで、君は?」
「あ、どうもです。ぼくは【ファーマー】のモナって言います。よく間違われるのですが男です」
あ、気にしているらしい。まあ、声まで中性的だからなぁ。
「おう、よろしく。【ファーマー】って事は〈採集課〉か?」
〈ダン活〉の世界では全ての資源がダンジョン素材で賄われている。そのため〈ダン活〉の【ファーマー】は農夫ではなく採集系の職業に分類される。特に〈採取〉に特化しており、採取したドロップの品質上昇や量倍はもちろん、採取ポイントの回復が早まったり、採取ポイントを探知するスキルなどに優れている。また、戦闘職では採取出来ないレア素材が確保出来たり、【ファーマー】でないと採取出来ないポイントなんかもある。ちなみに中位職だ。
あと一応攻略専攻に分類されているため多少はモンスターと戦う
「はい。本当は戦闘職になりたかったのですが、ぼくは体格的にも性格的にも戦闘向きではなくて」
「だろうなぁ。それで〈
「そうです。罠外しの技能もあれば採取がより捗りますから」
〈
〈ダン活〉ではダメージ床の罠すら持ち帰ることが出来るので、モナはそういった採取系罠を狙っているらしい。
「ですが、ぼくは一昨日
ちなみに専属とはギルド間やパーティ間で結ばれる契約で、ギルドの加入とは別扱いになる。
これを結んでいると〈採集課〉の学生は定期的に契約したパーティに同行しダンジョンに付いていく事が出来る。〈採集課〉の学生の収入源であり、ステップアップの機会だ。
まあ専属を結べるのは優秀な学生に限られるが。
専属が結べなければ野良で学園側から
そのため〈採集課〉の学生は専属を作ることを第一の目標にするのだ。
「そうか。いいなぁモナ」
やる気と目標があってそれを目指して邁進するモナの姿は実に俺の心を刺激してくれる。
俺はこういう目標に向けて頑張っている人、頑張ろうと努力する人が好きだ。なんか手助けしたくなってくるし、報われてほしいと思う。
なので少しだけ手伝ってみようと思う。これも何かの縁だしな。
「そうだな専属はまだ無理だが、モナがこれからも頑張るなら俺の探索に少しくらい連れてってもいいぞ」
「本当ですか!?」
「おう。真面目に頑張るなら、だがな。いいよなセレスタン?」
「ええ。僕は構いません。ゼフィルス様のお好きにしてよろしいかと」
「わぁ! 頑張ります! ぼく凄く頑張りますから! よ、よろしくお願いします!」
俺が誘うとまた土下座する勢いでガバッと頭を下げるモナ。
とりあえずここは往来なので制する。
「ああ、ゲザらなくていいから。とりあえず連絡先のIDを教えてくれ」
「はい! …あ、あの〈学生手帳〉の使い方がまだよく分からなくて、教えてもらっても良いですか?」
「あははは! 前途多難だなぁ」
モナは〈採集課9組〉らしい。それだけ優秀な人物からは遠い位置に居る。
本当に自分なんかで良いのかと再三確認してきたが、うむと頷いておいた。
とりあえず1組に負けないくらい育て上げてやるから覚悟しておけ。
これで優秀な採取人ゲットだぜ。
あとは、伐採の【コリマー】、発掘の【炭鉱夫】、釣りの【フィッシャー】辺りとも契約したいなぁ。
あとでモナに紹介してもらおう。
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