第214話 まず〈採集課〉。自分の知識量が素晴らしい
〈国立ダンジョン探索支援学園・本校〉通称:迷宮学園。
ここに通う男子学生は基本的にプライドが高い。
〈ダン活〉の世界では16歳になると
つまり、どの学園に通うのか、というのも大事なステータスになってくるのだ。
迷宮学園本校卒業生、その肩書きだけでも一目置かれるのである。
この2万人の学生が在籍する迷宮学園・本校は非常に倍率が高い。
シーヤトナ王国でもダントツでダンジョンの数が豊富で、学び舎の質も高く、優秀な卒業生を毎年輩出する国一番の学園と名高い。本校に入学するには何かしらの才能か、コネのようなものが必要になってくる。
当然、そんな場所に入学出来た学生は増長する。俺は選ばれし子どもなのだと。子どもあるあるな勘違いだな。
まあ、そんな増長も大体は1ヶ月でへし折られる。測定とかで。
しかし、挫折を知らず調子に乗りまくってここまで来てしまった学生はプライドと鼻が高ーく育ってしまう傾向が強い。特に男子学生。
女子学生はそうでもないのだけどな。もしかしたら〈ダン活〉の特性上、女子の方が強力な
クラスの男女の割合も、女子19人、男子11人だったしな。
まあ、そんなこんなで自己紹介の悲劇(?)は起きてしまったのだった。
すまんなサターン君。上には上が居るって事で元気を出してくれ。
さて、色々とあったロングホームルームも終わって少々の休憩時間。
早速俺の席に近寄ってきたラナが言う。
「ゼフィルスよく言ったわ! 面白かったわよ」
王女がナチュラルに良い
ラナはそれだけ伝えるとエステルとシズの下へ去っていった。今の、多分俺を褒めてくれたんだよな? だから4人の同級生よ、強く生きてほしい。撃沈させたの俺だけど。
「ゼフィルス様、参りましょうか」
「ああ、できるだけ多くの場所を回りたいな」
セレスタンが席に迎えに来たので立ち上がる。これから選択授業の見学に向かうのだ。
ロングホームルームでも説明されたとおり、〈ダン活〉の授業には選択授業がある。
毎週金曜日は選択授業の日だ。全コマ自分の好きなように授業を組み、将来の夢へと邁進する。
そして今日は5月3日金曜日。上級生が受けている選択授業を自由に見学して良いとのことなので俺はセレスタンとできるだけ多くの授業を回るつもりだ。やはりリアル〈ダン活〉に来た以上、勉強も全力で楽しまなくてはいけない。
「まずどちらから回られますか?」
「戦闘課の校舎以外の近場からどんどん回ろう。実技、座学共に
「かしこまりました」
俺はセレスタンを連れて教室を出た。他のメンバーもそれぞれで行きたい場所があるとのことなので別行動だ。時間は有限だしな。俺の場合、多分今日中に回りきれないだろうし。
とりあえず戦闘課の校舎で行われている選択授業は普通のカリキュラムで習うだろうし後回しにする。
まず来たのは〈ダンジョン攻略専攻・採集課〉の校舎だった。
ここでは主に採集をメインとした授業を教えている。〈採集〉とは採取、伐採、発掘、釣り、エトセトラと、戦闘せずに持ち帰れる物全般の事を指す。
〈戦闘課〉でも特産の授業科目で色々と教えてくれるが、どちらかというとモンスタードロップがメインであり、採集で手に入れる素材や資源の類いはこの部門の方がより深く教えて貰える。採集出来るダンジョンとか、採集品がどのくらいの値になり何に使われ、どの地域に需要があるのかなどなど。
あと〈戦闘課〉とは関わり合いの深い課でもある。〈採集課〉の全学生は学園側から格安で〈『ゲスト』の腕輪〉を使わせてもらえるため〈戦闘課〉のパーティに付いてくる事がままあるのだ。逆に〈戦闘課〉がこの採集素材が欲しいと〈採集課〉に依頼することもある。
〈戦闘課〉が〈採集課〉をダンジョンの奥に連れていき、対価に〈採集課〉が採れた素材や資源の一部を提供する。将来的にも役立つ持ちつ持たれつの関係である。
そんな学科の選択授業を何個か見学してみたが、残念ながら、あまり手応えは無かった。
俺の〈ダン活〉知識が深すぎるせいで、それ全部存じています状態だったのだ。
自分の知識量が憎い。いや別に憎くない。素晴らしいと思っている。
残念ながらここでは俺の〈ダン活〉知識欲を刺激してはくれないようだ。場所を変えるとしよう。
次に近いのは〈ダンジョン攻略専攻・調査課〉だが、〈調査課〉はちょっと微妙。〈調査課〉は主に斥候職の集まり処、ダンジョンでの調査、異変などを主に調査したり、〈戦闘課〉とパーティを組んだ時に斥候役をしたりする課であるが、俺にとってはダンジョンは調査するまでも無いのでパスである。
となると次に近いのは〈
「じゃあ次は〈
「かしこまりました。ゼフィルス様は楽しそうですね」
「お、そうか? そうだろうな。セレスタンも楽しめ。無理に俺と一緒の授業に合わせる必要は無いぞ?」
「いえ、僕はあまり授業が楽しいとは思えませんので」
まあ、そういう意見もあるだろう。むしろ多いだろう。
そこで楽しいと思える授業を見つけるのが今回の選択授業なのだが、セレスタンは分かってないなぁ。まあ、セレスタンが興味を持つ授業が無いか、探してみるのも楽しいかもしれない。
「あ、あの、ちょっとよろしいでしょうか?」
「ん?」
セレスタンと雑談していると声を掛けてきた人物がいた。
振り返ってみると、ずいぶん小柄な男子学生が目にとまる。いや、男子学生か? 下は俺やセレスタンと同じズボンだが、顔立ちが小顔で若干女の子より、正直スカートの方がよく似合いそうな男子だった。ちょっと縮こまり気味で小動物っぽいイメージを抱く。
「今〈
なるほど。どうやら先ほどの会話を聞いて声を掛けてきたらしい。
ここに居るということは〈採集課〉の学生だろうか?
「あ、あの。どう、ですか?」
「ああ。いいぞ別に。セレスタンはどうだ?」
「構いませんよ。ゼフィルス様のお好きにどうぞ」
勇気を出して話しかけてきてくれたのだ。せっかくなので一緒に行くことにした。
しかしセレスタンの呼び方に彼(?)が一瞬でギョッとした顔になる。
「え、様って、あのもしかして御貴族様でいらっしゃいましたか!? ぼく無礼を!」
「ああ違う違う。俺は普通の村人出身だから貴族じゃないぞ。だから普通に話していいから」
土下座でもしそうな勢いだったので手で制する。うーん、ハンナもだったけど、御貴族様ってこういう反応が普通なのか?
「えっと、でも様って、あれ?」
「さ、時間は有限だからちゃっちゃと〈
「あ、ま、待ってください」
なんか混乱しているようなので無理矢理話題を前に向け歩き出すとわんこのように付いてきた。
こうして〈採集課〉で出会った学生とセレスタンと3人で〈
その途中の自己紹介で俺が【勇者】だと知り、彼(?)が悲鳴を上げて驚いたのはまた別の話。
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