第208話 レアボス戦! 『ビッグマッシュボンバー』!
〈毒茸の岩洞ダンジョン〉のレアボスは名称〈ビッグマッシュ〉。
その名のとおり非常に身体の大きいキノコである。おそらく7mクラスはある。
それに加え擬人化が進み手足がより発達。超巨大な肉切り包丁と超巨大ホプロン盾を装備しており、身体も紫色の毒々しい鎧に覆われていて攻撃力と防御力が非常に高いボスとなっている。
スピードは〈マザーマッシュ〉の時より少し速くなった程度だが、何しろその巨体だ。リーチがとにかく長いので〈ママ〉の時のように遠距離で回りこみながら一方的に倒すのは難しい。
盾で防御もしてくるしな。
加えての〈ユニークスキル〉、『マッシュ流・
要は自爆攻撃である。のめりこみ過ぎて逃げ遅れると自爆に巻き込まれて大きなダメージを食らうぞ。昔からゲームでは自爆攻撃は非常に威力の高い攻撃として定番だった。普通にタンクでも戦闘不能にまで持っていかれるので最大限の注意が必要だ。
ちなみに自爆した〈ビッグマッシュ〉はHPを減少させる程度で倒れることは無くピンピンしている。たまにHPが0になって本当に倒れてしまうこともあるが。
また〈ママ〉の時と同様〈チビ・マッシュ〉の眷属召喚や胞子攻撃もしてくる。
例の〈チビ・マッシュ〉に群がられ、〈ビッグマッシュ〉から目を離したら最後。肉切り包丁でズバンッとやられてしまうぞ。
正直、隙の無い構成だ。攻略法は正攻法くらいしかない。レアボスは大体が強力なボスなので正攻法くらいしか対処法がないんだ。
そんなことを
「つまり、いつも通りやればいいって事ね!」
「ま、ラナの言うとおりだ。でも今回はカルアがいるからな。カルアの動きにも少し合わせるようにしてくれ」
「まっかせてよ!」
今回は後衛のハンナではなく前衛のカルアが加わるので少し勝手が違うはずだ。
その辺も留意するよう皆に言い聞かせておく。
しかし、カルアは上手くイメージ出来ないようで首を傾げて聞いてきた。
「そんなに違う?」
「ああ。前衛4人ともなるとな。まあ今回は敵がアホみたいにデカイから大丈夫だと思うが、小さい敵だとスイッチという戦術が必要になってくる。上手く攻撃役を連携しないと衝突事故を起こすことがあるんだ」
「ん。じゃあ今日は思うように動いていいの?」
「他の人とぶつからないよう注意はするんだぞ?」
「ん。分かった」
ということで作戦タイムが終了。そのままボス部屋に突入した。
今日は測定最終日でダンジョンに挑む者はほぼいない。
レアボスである〈ビッグマッシュ〉は誰かに倒されることも無く、ちゃんとボス部屋に残っていた。
ただ一度ボス部屋から撤退するとHPが全回復してしまうため、先輩たちとの戦闘の傷は全て回復されている。
のっそりと巨大なキノコが起き上がり巨大肉切り包丁と赤く毒々しい巨大ホプロン盾を構えた。
ボス戦、スタートだ。
「マァーーアアーーー!」
「ちょっと、あれすごく大きいわ!」
「ああ、さすがはビッグなキノコだ」
〈ビッグマッシュ〉の立ち姿は迫力があった。思っていたより威圧的な大きさにラナが驚きの声を上げている。
しかしそんな中でもシエラはいつも通り、大きなカイトシールドを構えて前に出る。
カッコイイ。
「『挑発』! 『オーラポイント』!」
ヘイトを稼ぐシエラが連続で挑発スキルを放つ。
最近はメンバーの火力が上がってきて『挑発』だけだとすぐにタゲが持っていかれてしまうため、『オーラポイント』も追加で使うことにしたようだ。
距離の離れている今が攻撃のチャンス。まずはタンクがヘイトを稼いで足止めし、遠距離攻撃でダメージを稼ぐのだ。
「『聖魔の加護』! 『守護の加護』! 『聖光の耀剣』! 『聖光の宝樹』!」
ラナがどんどん魔法の回転率を上げ、魔法力と防御力上昇バフ、続いて上級攻撃魔法を放った。こっちもカッコイイ。
「俺も続くぜ! 『ライトニングバースト』! 『シャインライトニング』!」
「マァアアー! マァアアー!」
剣を振りシエラを攻撃していた〈ビッグマッシュ〉に魔法が次々と突き刺さっていく。
しかし、途中から盾で防がれダメージが思ったより伸びなくなった。
そう、〈ビッグマッシュ〉は〈ママ〉とは違い遠距離攻撃に対して防御してくるのである。〈ママ〉の無念が、あのホプロン盾を生み出したのかもしれない。ホプロン盾の色合いは〈ママ〉のキノコ傘と同じ柄なのだ。
当初のゲーム〈ダン活〉時代ではホプロン盾の裏側が見えず、もしかして〈ママ〉を盾として装備しているのでは、と囁かれたりもした。実際は普通の金属製だったようなので安心してほしい。
「マァアアー! マァアアー!」
おっと、今はボス戦の最中だった。集中しないと。
「胞子攻撃と眷属召喚が来るぞ! カルアとエステルは戻ってこい!」
〈ビッグマッシュ〉がシエラのタゲと俺たちの遠距離攻撃に気を取られている隙に、後ろへ回りこんでガンガン攻撃していたカルアとエステルに呼びかける。
「エステル、馬車を出せ!」
「! 了解しました!」
俺の意図を素早く理解したエステルが〈
〈乗り物〉系のアクセルスキルはボスには通用しない。ただし眷属には通用する。
ポコポコと生えてくる〈チビ・マッシュ〉、数は42体。すさまじい数だが今のエステルには通用しないな。
「行きます! 『アクセルドライブ』! 『ドライブターン』!」
「「「「マママ!?」」」」
「おお! いけいけエステル! 全部轢いちまえ!」
手加減無しのドライブスキルが炸裂、進路上にいた〈チビ・マッシュ〉が全部轢かれてエフェクトに消えていく。すげえ爽快感だ。気持ちいいな!
エステルも馬車を操り、『ドライブターン』などを決めてどんどん〈チビ〉を倒していく。
そんな中、胞子攻撃によりボスに近づけなくなってしまったカルアが俺の下まで戻ってきた。
「ゼフィルス、指示頂戴」
「よし、エステルの取りこぼしを処理してくれ。『アピール』!」
「ヤー」
さすがに馬車で全ての〈チビ〉を倒すのは難しいので俺とカルアであぶれた奴の処理に回る。
そうして〈チビ〉が片付くと、胞子攻撃の収まったボスを狙った。
「『獅子の加護』! 『守護の加護』! 『聖光の耀剣』! 『聖光の宝樹』!」
ラナが遠距離から攻撃し、〈ビッグマッシュ〉がそれを防がんと盾を構えた。
後ろに回りこむチャンスだ。
俺とカルアは同時に後ろに回りこむと、がら空きの背中にスキルを叩き込む。
「『属性剣・火』! 『
「『フォースソニック』! 『鱗剝ぎ』! 『二刀山猫斬り』!」
「マァ!?」
〈ビッグマッシュ〉の体は鎧で守られているが、背中は一部鎧が無い部分がある。そこを狙うと少しダメージが上がるのだ。俺とカルアの攻撃が突き刺さり、良い感じにダメージを稼いだな。
「マァマァマァーアアーーー!!」
「『オーラポイント』! 『鉄壁』!」
「『回復の願い』!」
大きくダメージが入った〈ビッグマッシュ〉が大きく暴れだすもシエラの防御を崩すことは出来ない。『鉄壁』スキルは一定時間その場から動けなくなる代わりに被ダメージを大きく減少させるスキルだ。ステータスだけでもかなり高いシエラがこれを使うと、突破は本当に困難になる。
さらにラナの回復が合わさればシエラが崩されることはまず無いだろう。
ただ、3~4mを超える肉切り包丁を叩きつけられている光景を見ると、それとは別にどうしても気になってしまう。シエラはあんな包丁を何度も叩きつけられて大丈夫なのか?
「シエラ、その、大丈夫か!」
「ええ。少し攻撃が重いけれど、全然問題ないわ」
「そ、そうか。よし、今のうちにどんどんダメージを稼ぐぞ!」
大丈夫らしい。
ファンタジーだぜ。
その後も胞子攻撃を2度、眷属召喚を2度やられるも問題なく対処し、大きな事故が起こることも無く〈ビッグマッシュ〉のHPが10%を下回った。
「マママァァ、マッシュッ!!」
怒りモードに入った。
今から30秒間、攻撃の威力が1.5倍になる。
ガツンッと肉切り包丁を叩きつけられたシエラが少しよろめいた。あのシエラがよろめくだと!
「シエラ!」
「『鉄壁』! 大丈夫、いきなり衝撃が強くなって驚いただけよ。次からは受けきるわ」
そう応えたシエラの瞳が真剣さを増す。本気の本気といったところか、次の攻撃は受けきってやるという気合いを感じた。
しかし、シエラの覚悟と裏腹に肉切り包丁がくることは無かった。
その代わり、〈ビッグマッシュ〉の体が赤いエフェクトに包まれる。
レアボス特有の現象、〈ユニークスキル〉のモーションだ。
「まずい、『
「鉄壁の効果時間が切れるまで動けないわ。大丈夫、このまま受けきるから」
シエラはそう応えるが怒りモード中は威力1.5倍になる。
自爆攻撃はHPと引き換えに攻撃する特性上、元々威力がおかしいくらい高いのだ。しかもボスに近ければ近いほどダメージが上がる特性も持つ。
それがさらに1.5倍の威力で放たれる。『鉄壁』中のシエラとて危険だ。これは避けなくちゃダメなのだ。
怒りモード中の〈ユニークスキル〉を舐めてはいけない。
「エステル! 来てくれ!」
問答する時間が惜しいと俺はシエラの下にダッシュすると腕と腰を掴んだ。
「え、何、わ! きゃあ!」
そして有り余るSTR値を生かしてシエラをエステルの下に放り投げた。
近くまで来ていたエステルの馬車に無事シエラが着地する。
鉄壁中であっても投げ技で移動は可能だ。スキル無しではあるが、スライムだってスロー出来たんだ。シエラがスロー出来ない道理は無い。
「エステル! 頼む。『ソニックソード』!」
「は! 『オーバードライブ』!」
俺が『ソニックソード』で、エステルが『オーバードライブ』でボスから距離をとった直後、〈ビッグマッシュ〉が大爆発した。
「マァァァァァァァッシュ!!」
ドッカーン!
超高威力周囲攻撃、そして〈ビッグマッシュ〉の雄叫びが響き渡った。
きのこ雲的な煙が立ち上り、そしてその後には金色の宝箱が2つ残っていたのだった。
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