第168話 第7アリーナで〈ギルドバトル〉実地教習中。
第7アリーナはこの学園が誇る7つの〈ギルドバトル〉専用ダンジョンの1つだ。
ちなみに前回〈ギルドバトル〉を観戦したのは第1アリーナ。
第1アリーナは最も大きく、そして第7アリーナは最も小規模のアリーナとなる。
ここは〈10人戦〉までしか出来ない小さいアリーナだ。
基本的に生産系ギルドの〈ギルドバトル〉なんかに使われるな。
そんな場所に3人の教員がいた。一人はフィリス先生、そして40代に差し掛かろうかという見た目の女性と男性の教員だ。お二人は数歩下がっており、フィリス先生が代表の様子。
待ち合わせの時間より早く着いたつもりだったが、少し待たせてしまったようだ。すぐに前に出て挨拶する。
「フィリス先生、おはようございます。〈エデン〉を代表して、今日はよろしくお願いします」
「おはようございます、皆さん。はい、今日はよろしくね」
フィリス先生がニコっと微笑み挨拶を返してくれる。そしてその目がメンバーの一人に止まった。
「あ、リカちゃんがいるわ」
「姉様。学園でちゃん付けはやめてください。あと今は試験です。私語は慎んでください」
「相変わらずお姉ちゃんに厳しいわね」
やはりというか、リカとフィリス先生は姉妹だったらしい。
見た目も似ているし、なんとなく雰囲気が似ていたから予想は付いていた。
「リカのお姉さん?」
「ああ。前に話したな。ここで教員をしている姉だ」
「びっくり」
「ふふ。知らない顔の学生もいる事だし、改めて自己紹介しましょうか。私はフィリス。フィリス先生と呼んでね?」
「フィリス先生…」
「はい。あなたのお名前は?」
「カルア。リカとコンビ組んでる」
「まあ!」
この中でフィリス先生と面識が無いのはカルアだけだったようで、なんだか話が弾んでいる。
「こほん。姉様」
さすがに自己紹介を通り越して世間話でもしそうな姉にリカが釘を刺した。
「あらら。カルアさん今度個人的にお話ししましょうね。その時はリカちゃんの事教えてね」
「ん。わかった」
「分からなくていいカルア」
さすが、コンビをずっと組んでいただけあって二人は仲が良いな。
ちょっと羨ましい。この試験が終わったら俺ももう少し仲を深めよう。
「では本日、ギルド〈エデン〉のEランク試験を担当してくださる先生方を紹介しますね。こちらはラダベナ先生とムカイ先生です。お二人とも〈ダンジョン攻略専攻・戦闘課〉の専任教師ですね」
「よろしくね、ボーイ
フィリス先生の紹介に後ろに控えた2人が挨拶してくれる。
ラダベナ先生が女性の教師で、ムカイ先生が男性教師。フィリス先生のしゃべり方からしてかなりベテランと思われる。
「ラダベナ先生とは、もしかして〈轟炎のラダベナ〉かしら?」
「知ってんのかシエラ?」
なんか中二っぽいワードに引かれて
「結構有名な先生なのだけど、あなたって妙に博識なのに常識的な事が欠如している時があるわね」
おおう。俺が知らないだけでこの世界ではかなり名高い方のようだ。
〈ダン活〉の知識も個人の武勇までは網羅しているわけではない。登場していない人物の事はさすがの俺でもさっぱりだ。
しかも、ゲーム〈ダン活〉と違ってダンジョン攻略が進んでいないリアル〈ダン活〉だとそこで活躍する名高い人物にも大きな齟齬が出ているらしく、未だに俺の知っているゲーム時代の登場人物とは会った事が無かったりする。もし会ったらサインとか欲しいのに。
ちなみに後で知ったのだが、あの中二ワードの2つ名は個人で大きな功績を残した者に与えられる勲章のようなものなのだそうだ。俺もいつか2つ名で呼ばれるんだろうか?
「あたしは今回補佐役さ。フィリス、次に進みな」
「はい。分かりました!」
おお、あのフィリス先生がたった一言でシャキッとした。
〈轟炎のラダベナ〉、できる。
ちなみにもう一人のムカイ先生についてはシエラも知らないそうだ。
ムカイ先生、できない。
その後、フィリス先生から授業を受けた。内容は前に話したとおり〈ギルドバトル〉についてのルールやシステム、基本戦術なんかを実地付きで教習する。
そして、
「ではやってみましょう。何事も身体が覚えなければ思った通り動けないわ」
とフィリス先生が告げると同時に会場の様子が一変する。
これは、〈
うーん。間近でフィールドが変わっていく様子は新鮮で面白いな。
どうやらムカイ先生がフィールドを操作しているらしい。
しばらく見守っていると、城の周りに防衛モンスターも配置され準備が完了した。
「今回は〈トレーニング〉だから全員参加で良いわよ。モンスターも小城のものは適正LVを5~10に、巨城は適正LV30くらいにしてあるから覚えておいてね」
フィリス先生の説明も終わり、〈トレーニング〉が開始された。
「よし、全員作戦会議! あつまれー」
突然の集合に〈エデン〉のメンバーは戸惑いつつ集まってきた。
簡単に組む相手を割り振る。
「前にも言ったが〈ギルドバトル〉中はツーマンセル以上で動くのが基本だ。まずはそれを簡単に割り振るぞ」
城を確保するには〈充電〉がいる。それを効率よく進めるためのツーマンセルだ。
コンビは、ハンナとシエラ、ラナとエステル、カルアとリカ、俺とセレスタンで分ける。
俺とセレスタンの組だけレベル差が凄い事になっているが、オールマイティの俺がフォローする形だな。セレスタンにもよく学んで欲しいし。
早速分かれて防衛モンスターに守られている小城を目指した。
「『ストレートパンチ』!」
「シャ!?」
セレスタンの腰の入った突きが決まりヘビ型モンスター〈スニーク〉が吹っ飛んでエフェクトになった。
「良いパンチだな。すげえ吹っ飛んだぞ」
「恐縮です」
【執事】系の高位職【バトラー】は【闘士】系のスキルを使う事が出来る。
つまり戦う執事なのだ、セレスタンは。
【バトラー】のバトは「バトル」のバトだ。じゃあラーは? ………知らん。が、きっと執事の何かを指す言葉に違いない。(全部違います)
さて、まだ【バトラー】のLVは低いが40まで上げれば色々出来る事が増える。
エステルの時みたいに道を示さなきゃいけないかもな。
他のメンバーの様子をチラリと見る。
ラナたち他の初期メンバーはLVが高い事もあって小城の防衛モンスターは相手にならないようだ。今はどれだけ早く小城から小城へ、タイムラグ無く進むやり方を練習しているみたいだな。リレーのバトン受け渡し練習みたいなものだろう。これが失敗すれば致命的にもなり得る事もあって4人とも練習に熱が入っている。俺も後で練習しよう。
カルアとリカはスピードの差に戸惑っているようだ。カルアは現時点ですでに〈エデン〉最速を誇るからな。リカが全然付いてこられなくて四苦八苦している。
そんな感じに練習を重ね、巨城を3つ落としたところで終了した。
全員でフィリス先生の前に戻ってくる。
「では、試験の本番を始めましょう。メンバーは、学生組は5人まで、教員組は3人で当たらせてもらうわね。ルールは先ほど教えたとおり。それに加えて〈先生側からの本拠地への攻撃を禁止する〉項目を追加。時間は30分間ね」
「はい。よろしくお願いします!」
次はとうとう〈ギルドバトル〉本番、の前に作戦会議だな。
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