第167話 いよいよ〈Eランク試験〉を受ける時、出発だ!




 〈Eランク試験〉。

 ギルドが初めてランクアップするために必要な試験だ。

 条件は、

 ①ギルドマスターの初級ダンジョンの全攻略。

 ②Fランクギルドであること。

 ③ギルドの人数が5人以上であること。

 ④戦闘職または生産職が3人以上在籍。

 ⑤在籍複数名が職業ジョブLV40以上。


 条件から読み取れる意味を要約すると、今までのFランクはギルドを作っただけの初級者で、本当のギルドはEランクから、ということだな。3段階目ツリーが出揃ってからが職業ジョブの本番、と捉えてもらって相違そういない。中級ダンジョンとは職業ジョブを使いこなせてようやく攻略出来るステージと、そういうことだ。


 そして試験の内容だが、アリーナでの〈ギルドバトル〉となる。


 〈ダン活〉ではランクアップする時、必ず〈ギルドバトル〉を行い、勝ったらランクアップする仕様だった。

 つまりは〈ギルドバトル〉も満足に出来なければ〈就活〉も出来ないよ、という意味だな。

 厳しい。


 〈ランク戦〉の〈ギルドバトル〉が行われるのはDランクからだが、実は〈ランク戦〉以外にも〈ギルドバトル〉を行う機会はある。それの解禁がEランクギルドからなので、こうしてEランク試験にも〈ギルドバトル〉が導入されているわけだ。


「〈ギルドバトル〉かぁ、なんだかドキドキするね」


 ハンナが前に見に行った〈ギルドバトル〉の光景を思い出したのか高揚させて言う。


「だな。俺も(こっちでは)初めてだ。楽しみだなぁ」


 〈ギルドバトル〉。

 大人数で戦う集団競技。

 〈ダン活〉のメインコンテンツ。


 この〈ギルドバトル〉の魅力にやられ、〈ダン活〉を続ける人も多い。

 俺もその中の1人だった。

 ダンジョンだけでも楽しいのだが、〈ギルドバトル〉もあって倍楽しい。〈ダン活〉があそこまで人気作品ヒット作になった理由だ。


 俺はハンナを連れて、ギルドに来ていた。

 中に入ると、ちゃんと通知していたため全員が集合していた。

 ハンナのように忘れられていたらどうしようかと思ったぜ。


「来たわねゼフィルス!」


「おはようございます。ゼフィルス殿」


 まず〈幸猫様〉の前に陣取ったラナが振り向き喜色満面で出迎えてくれる。

 続いてエステルも、言葉はいつも通りだが声色が心なしか高い気がする。


「おはよう。皆揃っているみたいだな」


「おはようございます。みなさん」


 ギルドメンバーは現在8人。俺とハンナを抜かした6人の視線が俺たちに向いたので片手を上げて挨拶する。

 ハンナも礼儀正しく手を揃えてのお辞儀だ。ロリっ子がこの動作をすると萌えるから不思議だ。


 その後、シエラ、セレスタン、カルア、リカの順に挨拶を交わし、早速本題を告げる。


「さて、皆にもギルドチャットで知らせているとおり、本日、ギルド〈エデン〉はEランクに上がるための試験を受ける」


「これで〈エデン〉もEランクね! エステル、お祝いには何を用意すればいいかしら?」


「そうですね、ラナ様が好きな果汁100%のリンゴジュースをご用意しましょう」


「良いわね!」


「良いわね、じゃない。気が早いぞ。まだEランク試験に参加すらしていない。というか話の途中だ」


「もう、分かってないわねゼフィルスは。こういうのは合格してからじゃ遅いのよ。合格する前に準備しておかないと皆準備に慌ててしまうわよ」


 それは実家王宮での話だろ?


 しかし、ラナの発言に疑問を持っているのはどうも俺とハンナとカルアだけらしい。

 セレスタンも含む貴族出身組には普通のことのようだ。

 カルアは分かっていないのか首をちょっとだけ傾げてハテナを浮かべている。


 なんという感覚の違い。

 まあ、いいか。


 話を続けよう。


「ギルドバトルの内容だが、今回は前に見た本格的なものじゃない。あくまで初めての人向けの試験だ。ちゃんと教員からの指導もある」


 実はこれもチュートリアルみたいなものだ。実力さえしっかり足りていればまず不合格になる事はない。ゲームではミスしそうになると教員が軌道修正してくれたからな。

 リアルだと多少違うようだが。


「参加人数は5人。まず教員から〈ギルドバトル〉のルールやシステム、基本戦術が教習きょうしゅうされる。その後にちゃんと身についているか、相手がいない状態での〈城取り〉を行い。最後に教員と〈城取り〉の模擬戦をして終了という流れだな」


 相手のいない〈城取り〉は別名:〈トレーニング〉と言われていて、城を防衛するモンスターのスピーディな撃破や効率的な巨城の取り方など、練習用としてミールを支払えば誰でも利用可能なシステムになっている。


「な、なかなかハードな試験ね。教員と模擬戦なんて私たち、負けちゃうじゃない」


「それがそうでもない」


 思ったよりガッツリした内容にラナが若干びびる。


 何故こんなにもガッチリした内容かと言うと、Dランクから始まる〈ランク戦〉はアリーナで行われ、外からも多くの企業や実業家を招く形になる。つまり観戦料を取るのだ。それなりに見れる内容が求められる。グダグダな内容だと、学園があれやこれやとなるらしい。

 学園にも色々あるのだ。

 とはいえ、それは学生にも言える事。ここで無様な結果を出せば企業からスカウトなんて来るはずも無い。故に学園も学生も本気で〈ギルドバトル〉に挑むのだ。


 その辺を掻い摘まんで説明する。


「というわけで、最初は学生に調子とやる気を出してもらうために良い感じに手加減してくれる。もしここで本気の教員がガツンと学生を倒してへし折ってしまってはお互い困るからな」


「な、なんか生々しい理由ね。でも理解したわ」


 俺の説明に納得したようでラナが少し顔を引きつらせつつも頷いた。


「それでゼフィルス、メンバーは決まっているのか?」


「ん。私たちもLV20まで届いた。2段目も解放されたし。役に立つ」


 リカが真剣に、カルアが眠たげな眼でそう聞いてくるが、


「残念だが二人はまだLVが足りないな。先ほども言ったがEランク試験はLV40からが基本。中級下位ダンジョンも入場制限は職業ジョブLV40だし、今回観戦だな」


「そうか。いや、了解した」


「ん、残念」


「セレスタンも悪いがな」


「いえ。僕はまだLV6から上がっておりません。どのみち皆さまの足手まといにしかなりません」


「ま、Eランクになれば全員職業ジョブLV40になるまで鍛える予定だから、それまでは悪いが我慢してくれ。出場メンバーは俺、ハンナ、ラナ、エステル、シエラの5人で行く」


「やった」


「わかったわ! いつものメンバーよね!」


「了解いたしました。皆さんの足を引っ張らないよう頑張ります」


「私も了解したわ。でも〈ギルドバトル〉は初めての経験だからちゃんと教えてよ?」


「おう、任せておけ」


 それからいくつか打ち合わせをした後、メンバー全員で第7アリーナに向う。

 今日はそこで、フィリス先生と待ち合わせだ。

 昨日のうちに〈エデン〉のEランク試験の手続きは済ませてある。


 じゃ、行こうか。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る