第163話 宝箱回! 大丈夫、今は運を貯めているだけだ
「お疲れー!!」
「お疲れ様! ねえ、今の凄く楽しかったわ!」
「ああ、それ完全に同意だわ。やっぱり敵が強いと燃えるよな!」
戦闘が終わって皆で集まるが、挨拶もそこそこにラナと今の戦闘の感想を言い合う。
〈陰陽次太郎〉を倒した。
初めて挑んだと思えないくらいスムーズに作戦通りに進み、見事作戦がハマった形での勝利だ。あれほど上手くいったのはこのメンバーだからだろう。
「シエラの防御も完璧だったよな。おかげで後衛を気にせずにやれて追い詰めてズドンだ。あそこから完璧に囲って閉じ込めたからな。超完璧な展開だった」
「なんか分かる気がするわ! なんというかこう、上手くいったーって感じがしたのよ!」
色々対策に対策を重ねなくちゃいけないくらい手強くって、でもそれがピタリと決まった瞬間は本当に気持ちいい。
一見全然危なげない勝利に見えたのは全員が対策通り動けたからだ。
本来なら逃げながらの移動砲台と化す〈陰陽次太郎〉は相当強力な敵である。
いつ包囲を抜けるかもしれないという緊張感、今までの初級ボスでは味わえない、こう手応えのある戦闘、緊張の連続からの開放感。
これだから強敵との戦闘は楽しいんだ。
「今回の〈陰陽次太郎〉は数多くの魔法を使ってくるから非常に厄介な強敵だった。完封する方法は無いし、ある程度ダメージを受ける覚悟で挑まなきゃいけないからスリリングでもある。そこが燃えるんだよな」
さすがレアボス。レアボスさすが!
〈ダン活〉のボスには大きく分けて〈ガチ枠〉と呼ばれるボスと、〈ネタ枠〉と呼ばれるボスがいた。
〈ネタ枠〉は〈クマアリクイ〉を始め、〈デブブゴース〉〈サボッテンダー〉〈竹割太郎〉〈マザーマッシュ〉など。見た目がネタだったり攻撃がネタだったりする奴ら。こいつらは多少苦戦はするものの所詮は〈ネタ枠〉。燃える展開にはほど遠い。
それに対し、〈ガチ枠〉ボスは強いし燃える。
そしてほとんどのレアボスはこの〈ガチ枠〉に分類されているため燃える展開になりやすい。〈ユニークスキル〉だって使ってくるしな。
ステータスも一段階上に上がってるから時に負けそうになったりして、そこでさらにのめり込むんだ。俺はレアボス全般が大好きだった。戦闘でもドロップでも良いとこだらけだし。
「ってそうだった。ドロップはどうだった?」
俺がここまで来た理由を思い出し辺りを確認してみると、すでにハンナを含む3人が宝箱の前にいた。
「ゼフィルス君、そろそろ開けようよー」
「早いな!? ラナ、すぐに行かないと開けられてしまうかも知れないぞ!」
「なんですって! そんなの許さないわよ!」
「開けないからさっさと来なさい」
「「はーい」」
はしゃぎまくっていた俺たちだったがシエラの一言に落ち着きを取り戻す。
しかし、
後で今回の戦闘の感想を聞いてみようと決める。
「今回は〈銀箱〉2個だったか~。〈幸猫様〉の恩恵は当たらず。残念」
レアボスに〈木箱〉は無いため、〈銀箱〉2個というのは最低保障のドロップである。
まあ〈銀箱〉も十分レアなのだが、やはり金箱の魔力にはあらがえない。〈金箱〉欲しい!
とはいえ今までの獲得履歴を思い出してみると致し方なしとも思う。
何しろ、今までレアボスと3戦して、
〈エンペラーゴブリン〉〈金箱〉2個。
〈バトルウルフ〉第二形態〈ビューティフォー現象〉。
〈エンペラーゴブリン〉〈金箱〉2個。
だったのだ。
さすがの〈幸猫様〉にも休息は必要だろう。
これ以上〈金箱〉が当たったら俺の運がどうなってしまうのかも分からない。
少し運を貯めておくとしよう。すぐ使う事になるかも知れないけど。
そしてドキドキの〈銀箱〉の中身は、〈光の護符〉と〈太郎の
〈光の護符〉は当たりだな! ハンナの〈火のお守り〉と同じ系統で『光属性威力上昇LV4』の効果があるアクセサリー装備だ。ラナに持たせれば戦力増強だ! 早速持たせる。
ちなみに〈太郎の
「はう。なんか、新しい装備って凄く良いんだけど!」
ラナが〈光の護符〉を持ちながら蕩けるような目をしてそう言った。
そうだよな! 新しい装備って凄く良いよな!
俺も新しく〈ナックルガード〉を装備した時なんか……。あれ? そういえば〈ナックルガード〉が無いんだけど!? 装備してないし! よくよく思い出してみればマリー先輩に〈デザインペイント変更〉を依頼してそのままだった事を思い出す。後で取りに行かないと!
「よっしレアボス周回だ! 次こそ良いのを当てるぞ!」
「「おー!」」
俺がそう叫ぶと、ラナとハンナが握りこぶしを上げて「おー」してくれた。
2人とも、ありがとよ。
「でも笛は残り一回しか使ってはいけないのでしょう? 当たればいいけど…」
シエラがそう心配するように言ってくる。笛が当たる確率は70%。最後の一回を使うにしては
しかし、問題ない。俺はスッと二本目の笛を取り出して言う。
「安心して欲しい、もう一本ある」
「なんでよ」
珍しくシエラからジト目のツッコミが入って俺はご満悦だ。
ここまで秘密にしていた甲斐があったというものだ。ふはは。
「何でも何もダブったんだよ。ちなみにこれもソロの時の物だから俺個人の私物な」
「いいけど。よくソロでレアボスに勝てるわね」
シエラがさっきまで〈陰陽次太郎〉がいた壁の方へ視線を向ける。
レアボスは超強力なモンスターが多い。生半可な実力ではパーティを組んでいたとしても全滅することもあるほどだ。それをソロとか、普通はあり得ない。凄まじいレベル差があるならともかく、俺はまだまだレベルが低いからな。
「ま、【勇者】だからな」
「その回答、なんだか懐かしいわね」
俺の応えにクスリと言った感じにシエラは微笑んだ。
うーん、普段クールなシエラがそんな感じに笑うとギャップ萌えだ。
その後、笛を吹いてから再度ボス部屋に突入した。
そこで待っていたのは、〈竹割太郎〉…。ハズレだ!
エステル先生! お願いします!
「ビビビ!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます