第162話 レアボス戦! これが中級クラスのボス!
「ジガガガガ!」
「レアボスをツモったぞー!」
ボス2周目、2回目の〈レアモンの笛(ボス用)〉を使ったところ今回は見事にツモった。
足下まで伸びる白髪に歌舞伎顔、陰陽師のコスチュームを身に纏うからくり人形。
セグウェイに乗り、両手に
〈付喪の竹林ダンジョン〉のレアボス、〈陰陽次太郎〉だ。
まあ確率70%だからな。当然と言えば当然だ。
何故か〈竹割太郎〉がレアボスに向かってどうぞどうぞしている光景を幻視したが、きっと気のせいに違いない。
「作戦はさっき言ったとおりだ! 魔法の威力が高いから流れ弾には十分注意しろ! 特にハンナ! 転がってでも避けろ!」
「わかってるー」
ハンナは〈マホリタンR〉でステータスを入れ替える関係上、RESが初期値になってしまう。おそらく軽いの一発でも食らえば危険域にまでHPは削られてしまうだろう。できる限り防具は積んだが、正直ギリギリアウトかなぁと思う。
「ジジッジーーーー!」
「『オーラポイント』!」
動き出した〈陰陽次太郎〉にまずシエラがヘイトを稼ぐ。
『オーラポイント』は『ガードスタンス』の強化版。戦闘中の敵全てのヘイトをがっつり稼ぐスキルだ。
〈陰陽次太郎〉がシエラの方に向き直り、
「ジ、ジジガー!」
振るった先から3つのボール系魔法が放たれる。光属性の『トリプルライトボール』。中級低位の魔法だな。
「受けてみるわ」
先の作戦会議の時、中級クラスのボスの攻撃にシエラはスキル何も無しでどの程度のダメージを受けるのか、まず身をもって体験したいと言い出した。
ラナの『耐魔の加護』すら受けないというのだから徹底している。
まあ最初だけだからという条件でオーケーをだした。
そしてシエラが構えるカイトシールドに『トリプルライトボール』が多段ヒットする。
「……なるほど。確かに重いわね」
シエラはポツリと言ったつもりだろうがバッチリと聞こえた。
シエラの身体が若干後ろに下がったくらいには威力があったらしい。
しかしHPはほとんど削れてはいないみたいだけどな。やっぱりシエラは超硬い。
「シエラ、もう良いかしら?」
「はい、お待たせいたしましたラナ殿下」
「じゃあ行くわよ! 『獅子の加護』! 『耐魔の加護』!」
「よっし、追い詰めるぞ。エステル! ハンナは援護頼むな!」
「はい! お供します!」
「任せて!」
「シガァァ!」
俺とエステルが左右に分かれて駆け出した。
作戦は単純で文字通り壁に追い詰めるだけ。
〈陰陽次太郎〉はセグウェイに乗っているため移動スピードが速く、中々接近を許してくれない。近づけば遠ざかるようパターンが組まれているためだ。
だが、そのパターンを逆用し、
二人以上が協力すればさほど難しくないのでオススメの戦術だ。
問題は、追い詰めるまで相手の攻撃にさらされ続けること、それなりに耐える必要がある。
「ジガー!」
「回避! 無理に前に出ようとしなくていい。シエラ!」
「任せて。『カバーシールド』!」
〈陰陽次太郎〉から広範囲に光のボール系を放つ範囲攻撃魔法、『32連ライトボール』が放たれた。
俺たちは回避に集中し、後続への流れ弾はシエラがカバーする。ラナは当たってもRES値が
『カバーシールド』は素早い割り込みからの防御スキル。射線上へ素早くシエラが割り込んで防いだ。
回避しながら俺とエステルはさらに前進し、セグウェイに乗った〈陰陽次太郎〉もそれを嫌って下がっていく。
「ジジジジガガガガガァァァ!!」
また〈陰陽次太郎〉が
隙間がないため回避不能の全体攻撃だ! これは耐えるしかない。
「エステル、防御姿勢をとれ! ダウンだけは取られるな! 『ディフェンス』!」
「はい!」
「シエラ! 後衛を頼む!」
「『インダクションカバー』!」
『インダクションカバー』は範囲誘導防御。『カバーシールド』の上位ツリーで〈かばう〉系スキルの誘導型だ。全体攻撃などを自分に引き寄せて受けきり、味方への攻撃を防ぐ優秀なスキルである。そのかわりダメージ量は増えてしまうが、防御スキルなのである程度のダメージはカットできる。
『シャインウェイブ』はシエラの方へ急速に集められ、後衛まで届かなかった。さすがシエラ。最適なスキル選びだ!
俺とエステルは追い詰め係なのでシエラより前に出ていたため『インダクションカバー』の範囲圏外だった、多少の攻撃を受けるが、それなりに防御力も高いので大したダメージにはならない。
「回復するわ! 『回復の願い』! 『天域の雨』!」
「援護するね! 『フレアランス』!」
ラナの『天域の雨』は中級魔法の全体継続回復だ。俺たちが受けたダメージも十数秒もすれば回復してしまうだろう。
ハンナの『フレアランス』が飛び、これを回避するために〈陰陽次太郎〉の攻撃が一旦止まる。
「エステル、行けるか」
「はい、問題ありません」
「よっし!」
先ほどの攻撃では多くのダメージを受けてしまったエステルだがダウンは取られずに済んだようだ。ダウンを取られるとタゲが変わる。この位置からだとフォローが届かないし、せっかく追い詰めているのに仕切りなおしになってしまう。
ラナから回復が届き、そのまま追い詰め戦術を再開。
その後いくつかの魔法攻撃にさらされつつも、ようやく壁に追い詰めることに成功した。
「ジジガ!?」
壁にバックで激突したことにより〈陰陽次太郎〉がスリップダウンする。ここが攻撃のチャンスだ!
「今だ! 魔法組、遠距離攻撃! 『ライトニングバースト』!」
「『聖光の耀剣』! 『光の刃』! 『聖光の宝樹』! 『光の柱』!」
「『ファイヤーボール』! 『フレアランス』! 『アイスランス』! 『ファイヤーボール』!」
「ジジガガ!?」
〈陰陽次太郎〉に魔法の雨が降り注ぎとうとう大きなダメージが入ったな。
「エステル、シエラ!」
「はい!」
「逃がさないわ。 『カバーシールド』!」
俺とエステルが左右から挟みこむ形で逃げ道を塞ぎ、正面にはシエラが素早い割り込みからの防御スキルを移動に使い、抑えた。シエラと後衛組も徐々に前進していたため、シエラもすぐに追いつくことが出来た形だ。〈陰陽次太郎〉がスリップダウンした瞬間からシエラは駆け足でダッシュしていたからな。無事囲い込むことに成功した。
こうなればもうこっちのものだ。
「ジジジ!?」
「『インダクションカバー』!」
苦し紛れの『シャインウェイブ』で全体攻撃を仕掛けてきた〈陰陽次太郎〉だったが、囲まれたら『シャインウェイブ』というのはゲーム時代から決められたパターンだ。故にシエラには囲ったら即『インダクションカバー』と言っておいた。予想通り全体攻撃がすべてシエラに向かっていき、〈陰陽次太郎〉が隙だらけになる。
「チャンス! 『
「『トリプルシュート』! 『閃光一閃突き』!」
「ジガァ!?」
【勇者】の第二の〈ユニークスキル〉『
「わ! シエラ回復するわ! 『大回復の祝福』!」
全体攻撃をすべて請け負ったシエラのHPが半分近く削られていた。それを見たラナがビックリして上級回復魔法で一気に回復させる。そっちも問題なさそうだ。
そこからはかなり一方的な展開だった。セグウェイの機動力が生かせず、近距離に追い込まれてしまった〈陰陽次太郎〉は厳しい戦闘を余儀なくされ、俺たちはボスを囲いから逃がさないよう、ある程度攻撃を受ける覚悟で押さえ込み、確実にダメージを与えていった。
〈陰陽次太郎〉が近接攻撃やノックバック攻撃、突進などを持っていないため、無理矢理押し通る事が出来ないからこその戦術だな。
そして、『
「! 〈ユニーク〉注意! 上から降ってくるぞ!」
脳裏に浮かぶのはゲーム時代の『太郎流・
「全員! 作戦通り動けーー!」
「ジガァァァ!!!」
〈陰陽次太郎〉の最後の必殺技にして奥の手。HPが危険域に突入したことにより怒りモードも加わって威力が上昇した一撃。これで俺たちの誰かがダウンでもしようものなら一気に戦線が崩され、下手をすれば全滅もありうる渾身の攻撃。
それが8本の巨大な斧となって〈陰陽次太郎〉を中心に扇状に降り注いだ。
しかし、この攻撃には弱点が存在する。
「『ソニックソード』!」
「『騎槍突撃』!」
「『マテリアルシールド』!」
俺とエステルは、素早い移動系スキルで緊急回避を図る。
『太郎流・
攻撃範囲が最初から分かっているからこそできる戦術だな。
〈陰陽次太郎〉が攻撃を放つため少し前へ出る。
そこへ
「ここだ! 『ハヤブサストライク』!」
「ジガガガガ!??」
ユニークスキルの硬直中はクリティカルが入りやすい。
そこに二回攻撃の『ハヤブサストライク』を打ち込んだことで見事にクリティカルを決めた。〈陰陽次太郎〉がクリティカルダウンする。チャンスだ!
「
俺の声に全員が強力な〈スキル〉〈魔法〉を叩き込み、
「ジ、ガガ……ガァ……」
ついにHPが0になった〈陰陽次太郎〉が膨大なエフェクトを発生させて沈んで消えたのだった。
さすが、中級クラスのボスは強かったぜ。
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