第146話 待ちに待った〈乗り物〉系。騎乗攻撃解禁か!




「マリー先輩! マリー先輩はいますか!」


「なんやなんや大きな声出して、珍しいなぁ兄さんがそんな声出す言うのはぁ」


「おお、マリー先輩! 話は奥で、至急〈幼若竜〉を使わせてくれ」


「なんや、また良い物が手に入ったんか。ええで、すぐ持ってくるわ」


 勝手知ったるで奥の部屋へ出向き、勢いよく〈空間収納鞄アイテムバッグ(容量:大)〉をひっくり返す。がしゃがしゃと素材が溢れてレシピが行方不明になった。


 そこに〈幼若竜〉を抱えたマリー先輩がやってくる。


「マリー先輩、少し待ってくれ、今探してる」


「こんなものを見せつけるためにうちを呼んだんかぁ……」


 その素材の山を見てマリー先輩が一瞬で遠い目をした。

 大丈夫。今はダンジョン週間中、時間ならたっぷりあるよ。

 というか売るために集めたわけではないので、この中でも売ってしまうのはほんの少しだ、安心してほしい。


「って兄さんこれってよく見たら〈怒りの竹割戦斧〉やん!? 何、また〈金箱〉をツモったんか!?」


 マリー先輩がデカイ戦斧を見て度肝を抜かれた声を出した。

 違う、そっちじゃない。俺はレシピを探しているんだ。


「ほへぇ。これ一個で2000万ミールが動くでぇ。今のBランクギルドに確か欲しがっていた人がいたはずやわぁ」


 2000万ミール? 俺が思っていた金額よりだいぶ高めだ。


 いや、そうか。

 ここ、リアル〈ダン活〉ではボス周回が認識されていない。

 故にダンジョンに潜り最奥のボスを倒したらそのまま帰還する。つまり一回しかボスドロップをゲットしていないのだ。〈上級転職チケット〉もそうだが確率的にかなり厳しいため、価値が高くなっているのだろう。


 俺たちも25周目でやっと〈金箱〉をツモったからな。

 この世界の住民なら25回ダンジョンにアタックしなければならない。一日1回と考えても取得するのに一ヶ月近く掛かる計算だ。しかも数種類の中から狙った一つを当てるなんて相当な超運の持ち主でなければ不可能だ。下手をすれば一年以上挑んで手に入らない可能性だってある。むしろ高い。


 今までは初級ドロップ品だったためゲームとさほど価値は変わらなかったようだが、〈怒りの竹割戦斧〉は中級クラスでも十分やっていける性能だ。


 基本的に中級までしか攻略されていないリアル〈ダン活〉では非常に価値が高くなっているのだろう。


 今後はこのようにゲームより装備の価値が高くなっていくのかもしれない。


 俺は心のメモ帳にしっかり書いておいた。



「あったぞ!」


 マリー先輩が〈幼若竜〉を持ってきて〈怒りの竹割戦斧〉を『解析』している間に俺はようやく目的の物をサルベージした。


「ん? レシピか! 何のレシピなんや?」


「聞いて驚き肝を取らせてくれマリー先輩。なんとこのレシピ、〈金箱〉産ドロップだ!」


「な、なんにゃてぇー!?」


 驚いて思わず猫になるマリー先輩に萌える。

 良いリアクションだぜマリー先輩!


「〈幼若竜〉を――」


「もう! それをはよう言ってや兄さん! 早速解読や!」


 目にも留まらぬ速さで俺が手に持つレシピをひったくるマリー先輩。速い! 俺がまったく見えなかっただと!?


 そして〈幼若竜〉を持ち早速『解読』を掛けるマリー先輩。

 なんか一連の動作手慣れてないだろうか? 生産職はこれが普通なのだろうか?


「『解読』完了したで!」


 俺の驚愕を他所にマリー先輩の仕事が速い。


 さて、気持ちを切り替えよう。

 〈幸猫様〉へのお願いのお時間だ。


 〈幸猫様〉〈幸猫様〉。どうか〈からくりのレシピ〉をお願いいたします!


「なんやこれ? 〈からくり馬車のレシピ〉?」


「大当たりだーーー!!」


 来た来た来たキターーーーー!


 マジでツモっちゃったよ〈からくり馬車のレシピ〉!

 さすが〈幸猫様〉! 〈幸猫様〉さすが!

 ありがとうございます〈幸猫様〉!


 まっさか本当に来るとは! これがあるから〈ダン活〉はやめられない!

 ヒャッホー!


「やば。兄さんが狂った!」


 そりゃあ狂うよ。クルクルよ!


 〈からくり馬車〉。

 エステルに用意しようと思っていた〈乗り物〉系装備だ。


 【騎士】系、【ナイト】系などは〈乗り物〉に乗れる技能がある。

 アクセサリーの装備枠を二つ使用することで、適性に合った〈乗り物〉に乗ることができるのだ。


 これにより移動速度や〈スキル〉の威力などが大きく上昇する。エステルの『騎槍突撃』などがそれにあたるな。あれは〈乗り物:騎獣〉限定だが。


 そして〈馬車〉というのは【ナイト】で何かに乗って戦うアタッカーの装備を指す。

 名前はなんか強そうではないように思えるが、実際使ってみると恐ろしく有用だ。


 まず騎乗。5人まで収容可能。

 もうこの時点でダンジョンでどれほど活躍するかが見えてくるな。

 ボスの部屋まで一直線に走行すれば最奥の到着もあっという間だ。

 これのためなのか、ダンジョンは必ず何か車両でも通れるような道幅になっている。


 さらに〈騎乗攻撃〉が解禁される。〈竹割太郎〉も使っていたあの突撃だな。

 アレでモンスターをき倒すことが可能なので、ダンジョンの道中もモンスターも止まらずに突撃して通り抜けることが可能だ。時間が大幅に短縮出来るぞ!


 デメリットはそうして倒したモンスターは経験値にもならないし、ドロップは置き去りになってしまう点だ。まあ無視すればいいのだが。そんなドロップよりボス周回の方が大事!


 他にも色々あるが、まとめるとエステルがようやくパワーアップ。ということだな!

 職業ジョブLV40まで待たせて悪かった。やっとエステルの出番が来たぞ!


 しかも〈金箱〉産の激レア装備だ!


 もうこれはアレだね。勝ったね!




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