第144話 ボスの挙動がおかしいんだ、ぶっ壊してみよう




「お疲れ様~。シエラ、今の『カバーシールド』マジ神ってた。助かったぜ」


「お疲れ様。別にたいしたことじゃないわよ。タゲが移ってしまったのは私の責任でもあるのだし、カバーするのは当たり前よ」


 それを言うなら俺も〈竹割太郎〉のゲームではなかった挙動に気を取られ、ハンナに攻撃される隙を突かれた。今回は反省すべき点が多いボス戦だったな。


「あの、シエラさんありがとうございました」


「ハンナが無事で良かったわ」


「ああ、本当にな。まさか最後の最後にあんな挙動をしてくるとは思いもしてなくて、俺も反応が遅れた。ハンナを助けてくれたシエラにはマジ感謝だ」


「そういえば言っていた行動と違ったわね。あのセグウェイだったかしら、あれを攻撃すると転ぶと聞いていたけれど」


 ほんとそれな。まさかぶっ壊れるとは…。いや、ぶっ壊せって言ったの俺だけど。


 俺は先ほど壊れたセグウェイが転がっていた場所を見る。今は消えてしまっているが、竹製セグウェイが壊れるのも、〈竹割太郎〉がセグウェイを乗り捨てるのも、そしてからくり人形のくせにアスリート走りするのも俺は今回が初見しょけんだった。


 ゲームには無い行動。ゲームの時は何回攻撃してもセグウェイを壊せない仕様だったのに。リアルはこういう所も違うのか。すっごい驚いた。

 しかし、同時に楽しくもある。


 俺はゲーム〈ダン活〉のボスの挙動やスキルなど、全て見た事があった。

 初見というものはここ最近見た記憶が無い。

 セグウェイは何故壊れたのか、壊れた条件は? 壊れた後の〈竹割太郎〉のアクションはどう変化するのか? ダメージ量はどうだろうか? 暴走突撃はあるのか否か。


 もういろんな事が気になって気になってしょうが無い。

 俺の〈ダン活〉知識欲が、早く〈竹割太郎〉について全てを調べ尽くせと叫んでいた。

 クゥ~久しぶりの感覚だ。


「ゼフィルス君、なんでワクワクしているの?」


 おっと、俺が密かに胸を躍らせていたのをハンナに見抜かれた。

 さすが、一番付き合いが長いだけある。


「いやぁ、早く周回したくてなぁ!」


「今終わったばかりじゃないの。まずはドロップの回収でしょ?」


「おっとそうだったぜ。今回はなんだった?」


「〈木箱〉よ」


「次行ってみよー」


 〈木箱〉とシエラの口から出た途端脊髄反射でそう言った。

 ああ、なるほどね。だからハンナがここに居るのね。俺、理解。


 〈木箱〉はハズレ。装備が出たとしても何の付与効果も無いノーマル品なので売るの決定だ。

 レシピも出るが同様。つまり、良いところ無し!


 さっさと素材等全て回収し、次の周回に移ろうか!


 ちなみにだが、ボスドロップは基本5個で固定なのだが、今回は6個あった。

 初級下位ショッカーのボスの1つ〈アリゲータートカゲ〉も尻尾を切断するギミックをこなすとボスドロップが1つ増える。

 おそらく〈竹割太郎〉のセグウェイを破壊した事でドロップが増えたんだ、当然ゲーム時代には無かった事だ。

 マジか、ボスドロップ増えるのかよ! これは毎回セグウェイぶっ壊さなくちゃな!(竹割太郎「ビビッ!?」)


 何故か歌舞伎顔のからくり人形が怯えた顔をした気がしたが、きっと気のせいだろう。



 あと、もしこれで新しい破壊ギミックの存在が明らかになったなら、〈ダン活〉のボスを改めて見直す必要があるかもしれない。

 やべぇ。さらにワクワクしてきた。


 とりあえずは〈竹割太郎〉だ。もしかしたらもう一つ二つ破壊ギミックがあるかも知れない。だってからくり人形だし。壊すところとかたくさんありそうだしな!

 〈竹割太郎〉を至る所からボコボコにして破壊出来るところを探ってみよう!

 おっしゃ、燃えてきた! 楽しくなってきたぜぇ!(竹割太郎「ビビビッ!?」)




 その後の周回は俺が超やる気ということもあってむちゃくちゃはかどった。


 もう先ほどの失敗はしないとばかりにガンガン攻めていく。

 何しろ初手でセグウェイの破壊から入るからな。

 〈竹割太郎〉の挙動がゲーム時代とまったく違うので面白いのなんのって。


 ああ、俺の〈ダン活〉知識欲が満たされていく~~~。



「『勇者の剣ブレイブスラッシュ』!」


「ビリビリビィ……ィ…」


 周回は止まらず現在25回目。俺の『勇者の剣ブレイブスラッシュ』が〈竹割太郎〉のHPを0にする。

 この回数になると皆すっかり慣れたようでもう危ないシーンはほぼ無くなったな。


 俺の〈ダン活〉知識欲もだいぶ満たされた。

 そろそろ新しい動作は無さそうに思える。まだ分からないが。

 ここ10周ほどは新しい動作行動は見受けられない。そろそろ打ち止めか?


「あ、〈金箱〉! しかも2個!」


「何ぃ! 〈金箱〉が2個だと!?」


 ハンナのセリフに落ち込みかけていたテンションゲージが再びMAXになった。

 宝箱2倍は〈幸猫様〉の恩恵!

 たまにしか起こらないものだが、それがさらに〈金箱〉で起こるとは!


「ああ〈幸猫様〉ありがとうございます!」


 思わず祈らずにはいられない~。


「後で高いお肉買いに行かないとね!」


「もちろんだ! 美味いお肉をお供えしないとな!」


 ハンナもだいぶ分かってきたな。

 〈金箱〉は〈幸猫様〉の恩恵。

 祈りとお供えは基本! 良いドロップを願うのも基本だ!


 さぁ。今回、何気に初級上位ダンジョン初の〈金箱〉だ。


 何が入っているのかな?




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