第143話 ボス戦! 太郎系ボス、雷オヤジモード!
「ビビビビビ!」
ボス部屋の中に入ると、中央付近で竹製セグウェイを走らせていた〈竹割太郎〉がこっちに振り向いた。
午後1時、休憩を終えてさあボス戦だと部屋に入ると、ゲーム画面上で見た覚えのある歌舞伎顔のからくり人形がイケイケな走行をしていた。
相変わらずからくり人形のくせに機械っぽい声(?)を出しているのはどういうことだと思う。
「いつでも行けます!」
〈マホリタンR〉を使ったハンナが燃えている。頼もしくなったなぁ。
「まずはヘイトを取るわ。『ガードスタンス』!」
「なるべく固まるな! 自由に動けるよう間を空けるように!」
シエラがヘイトを取りながら前へ進み、俺が全員に指示を出した。
固まると逃げ場が限られてしまい事故率が上がる。初心者はまず自由に動ける空間を確保するのが有効だ。
〈竹割太郎〉の突進はターゲット依存ではなくただの暴走なのでルートから上手く避けられれば
「ビビビビビ!」
〈竹割太郎〉が動く、真っ直ぐシエラに突進し、そのまま斧を振り下ろした。
「『ファイヤガード』『フリーズガード』!」
「『守護の加護』! 『生命の雨』!」
属性ダメージを20%カットするガード系のスキルを使ったシエラが盾で捌く。
同時にラナが防御力のバフを掛け、さらに継続回復魔法でタンクをさらに硬くする。
「攻撃開始! 動かれる前にどんどんダメージを蓄積させろ! 『
「バフを掛けるわ! 『獅子の加護』! 『聖魔の加護』!」
「はっ! 『ロングスラスト』! 『プレシャススラスト』! 『騎槍突撃』!」
「『ファイヤーボール』! 『フレアランス』! 『アイスランス』! 『ファイヤーボール』!」
「『光の刃』! 『光の柱』!」
「ビビビビィィィ!?」
〈竹割太郎〉の初動のアクションはほぼ決まっている。最初から暴走突進なんてしないのでまずはタンクで足止めし、総攻撃。これがセオリーだ。
生まれ変わったハンナの一撃がなかなか良い。ガッツンとHPを減らしていく。
ラナの攻撃よりかは威力こそ低いものの、そこは手数で勝負だ。『ファイヤーボール』は3秒でクールタイムを終えるぞ。
「『シールドスマイト』!」
「ビィィィィ!!」
「あぐぅ!」
「シエラ! 慣れないうちは無理に攻撃しなくていい! まず攻撃を捌く事だけを考えろ!」
「…分かったわ!」
総攻撃によりヘイトが分散してきたのを見計らい、シエラがヘイトを稼がんとする。
だが、ここで少し欲張りダメージを稼ぎに行ったのがまずかった。シエラが〈竹割太郎〉の反撃を食らって『シールドスマイト』が失敗した。
『シールドスマイト』は効果範囲が狭い代わりにダメージを稼ぐ事のできる優秀なスキルだが、盾で殴る関係上反撃を受けやすくなる。
たまにカウンターが手酷く決まりクリティカルダウンを取られる事もあるため使い処は慎重に見極める必要がある。
要は〈竹割太郎〉に『シールドスマイト』は不向きって事だ。
「『挑発』!」
シエラが改めてヘイトを稼ぎ直す。すると〈竹割太郎〉の挙動が変わった。
「ビビビビビ!!」
「! 突進攻撃だ。注意しろ!」
〈竹割太郎〉の十八番とも言える暴走突進。
部屋の中をブイブイ言わせて縦横無尽に走行するので足の遅いタンクではこれを止められない。シエラには厳しいアクションだ。
しかし、対策が無い事も無い。
「『ソニックソード』! 『ヘイトスラッシュ』!」
「ビビィ!?」
ブイーンと走行する〈竹割太郎〉が俺の付近を通過する際、素早い移動からの斬撃を行うスキル『ソニックソード』を走らせ、〈竹割太郎〉の側面から斬りかかった。
さらにその勢いを利用して『ヘイトスラッシュ』までヒットさせる。
何気に初登場の『ヘイトスラッシュ』。挑発の付いた攻撃なのでシエラの『シールドスマイト』と効果は同じなのだが、このタイミングで発動した事にはちょっとした意味がある。
「『アピール』!」
そのまま追加で挑発スキルを発動させると、タゲがシエラから俺に移った。
「ビビビ!」
「ここだぁ! 『ディフェンス』!」
「ビィ!?」
タゲが移った瞬間〈竹割太郎〉の斧が俺に迫るがこれは完全に予想通りの展開。
タイミングが分かっていたため盾を掲げて『ディフェンス』を発動、そこに命中する斧、そしてパァンと弾かれた。見事防御勝ちを
〈竹割太郎〉がノックバックで大きく仰け反る。逃がさないぜ!
「はぁ! 『
「ビィーー!?」
ノックバック中に大きなダメージを受けるとダウンする。
俺の『
「今だ! 総攻撃!」
「やぁ! 『ロングスラスト』! ―――!」
「ナイスよゼフィルス! 『光の刃』!」
俺の声に近くまで来ていたエステルがまず攻撃、続いて全員からの総攻撃が〈竹割太郎〉に突き刺さり大きなダメージが入った。
完全に暴走を止めた形だな。
暴走突進を止める対策の1つとして「ターゲットのスイッチ」という戦法がある。
それはつまりシエラが持っていたタゲが俺に移り変わること。
ゲームではターゲットが移るとシステムAIが行動パターンを変更する。この特性を上手く使うと、今のように近くに居たターゲットの俺を攻撃しようとしてくるのだ。
攻撃してくると分かっていたため後はもう今の流れの通り、通常攻撃なら『ディフェンス』の格好の餌食だ。タイミングが分かっているから
ゲーム〈ダン活〉時代のコンボテクニックの1つだったが、リアルでも無事使えたようだ。
「ビビビビ!」
「『挑発』! 『ガードスタンス』!」
ダウンから起き上がった〈竹割太郎〉はまだ俺をタゲにしていたのでシエラがヘイトを稼いでタゲを取った。
2つ使ったのは『挑発』だけではタゲが移らなかったためだ。ダウンを決めるとヘイトを多く稼いでしまう。
シエラのクールタイムが終わるまで少しスキルの使用を控えよう。ダメージを与えすぎるとまたタゲが移る気がする。
その後の展開も終始安定した展開を見せ、たとえ暴走突進をしたとしても誰も
「ビリビリビリ―――!!」
「来たぞ! 〈雷オヤジモード〉だ!」
「雷オヤジごとき、ここで葬ってみせます!」
エステルが気炎を吐く。
本当に過去に何があったのだろうか?
「セグウェイを狙え! ぶっ壊せ! 『
「『獅子の加護』! 『聖魔の加護』! 『光の刃』!」
「『ロングスラスト』!」
「『ファイヤーボール』! 『フレアランス』!」
全員の攻撃が竹製セグウェイに集中し、ボカンッ!
「ビビリー!?」
セグウェイが本当にぶっ壊れた!
ゲームでは無かったぞこんなギミック!?
竹製だし、リアルだと壊れちゃうのか!?
俺が新たな発見に手が止まっていると、さらに新たなるリアクションが。
〈竹割太郎〉がセグウェイを乗り捨て、アスリートのように走り出したのだ。
おまっ!? 走れるのか!?
驚愕に目を見開き動きが完全にストップしてしまう俺。
それがまずかった。〈竹割太郎〉の目指す先は、ハンナだった。
「ハンナ!」
セグウェイはハンナの最後の強力な『フレアランス』で破壊されたためヘイトを大きく稼いでしまったと思われる。完全にタゲがハンナに向いていた。まずい!
しかし、そこに頼りになるシエラが割り込んだ。
「『カバーシールド』!」
〈竹割太郎〉の突進に
「シエラ
「はぁ! 『騎槍突撃』!」
「今がチャンスだ! 総攻撃ぃ!」
シエラが作ってくれた大きな隙に全身全霊で攻撃する。
〈竹割太郎〉は全員からの滅多打ちにあい、そのまま起き上がる前にHPが0になって大きなエフェクトの海に沈んでいった。
一部危ないところもあったが、なんとか勝利。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます