第89話 新メンバー発表。これからの方針について。




「発表! 新メンバー【スターキャット】LV6のカルアだ」


「よろしく」


「…………」


 カルアをスカウトした翌日、ギルド〈エデン〉の部屋で重大な発表をすると、何故かジトっとした無言の圧力が返ってきた。


「あなた。昨日解散した後何をしていたのよ」


「私たちと同じパターンね。きっとゼフィルスがあれこれそれそれやったのよ」


「【スターキャット】、見事に高位職ですね。しかもLV6という数字、覚えがあります」


「あはは、まあゼフィルス君だから」


 シエラ以外、いやシエラも含めて分かったようにしみじみするメンバーたち。

 一方カルアはハテナマークだ。みんなの反応がよく分からなかった模様。


「とりあえず、私たちも自己紹介しましょ」


 こういう時進行役を買って出てくれるシエラには感謝だ。

 カルアも馴染めるよう是非仲間に加えてほしい。


 カルアの背中を押してみんなの方へ向かわすと、彼女たちで早速自己紹介を始めた。


 みんなに自己紹介される度ピコピコと動く猫耳がすごく良い。

 見るとハンナとエステルの視線も釘付けだ。

 うんうん、その気持ち、よく分かる。

 一度触ってみたい。言えば触らせてもらえるのかな?


「あの、その猫耳可愛いですね、少し触らせていただいても良いですか?」


 ハンナがった!

 なんか前にもあった気がする!

 物怖じせず言いたい事を言えるハンナ素敵!


「これは大事なもの。家族以外には触らせられない」


 カルアが猫耳を両手で持ってペタッとする。

 断られたハンナと期待していたエステルが残念そうだ。…俺もだ。


「ゼフィルスとはどこで知り合ったのよ?」


「ん。夕方C道歩いてたらぶつかった。パンツ見られた」


「ぶっ!?」


 まったく気づいてすら無さそうだったのに気づいてたのかよ!

 というか何故今それを暴露した! お詫びはしただろう?


「ちょっとゼフィルス、カルアに何したのよ!」


「ゼフィルス君?」


「こほん、大丈夫だ。ちゃんと謝罪したしお詫びに食事も奢った。その件に関しては清算が済んでいる」


 あ、そういえばカルアに食事を奢った理由、伝えていなかったっけ。

 これはお詫びだとちゃんと伝えておけばよかった。


「食事、二人でしたんだ?」


「ちゃ、ちゃんとお詫びとスカウトについて話し合うためだぞ? 他意は無い」


 俺にやましい事なんて無い! しかとくもまなこ見定みさだめた!

 だからハンナはその目をやめような?


「うん。ゼフィルスすごい。カレー6杯奢ってくれた」


「ずいぶん食べたのね。この身体のどこにそんなに入るのかしら?」


 シエラが心底不思議そうにカルアのお腹を見る。

 カレーは飲み物だという格言もある。たくさん入るように出来ているのだろう。多分。

 ちなみに俺は3杯でギブアップした。


「美味かったなあのカレー。またみんなで食いに行くか」


「ん。賛成」


 意図的かは知らないがカルアとシエラが話を逸らしてくれたので、さりげなく話に乗り込んで脱出する。ふう。


 カルアもパンツ暴露はどうかと思うが、そのおかげかみんなに受け入れられたようだ。何より(?)だな。



「さて、話は変わるがカルアも加わったし、今後は新しいメンバーをスカウトしていきたい」


 俺が真剣に話し始めると、真面目な話だと感じたのか全員が黙った。

 カルアもシエラに勧められて椅子に着席、聞く構えになる。


「ひとまず、ギルドはDランクを目指すとする。つまり中級中位のクリアだ。プラス、現在Fランクは最大人数が10人なので、同時進行でメンバーをスカウトしていきたい。ここまでで異論のある者は挙手してくれ」


「構わないわ。〈エデン〉はSランクを目指すギルドよ。出来るならどんどんランクアップしていくべきだわ」


「その通りだ。では異論は無いということで話を進めるぜ」


 全員の表情を確認しつつ、異論は無さそうなので次に移る。


「メンバーをスカウトするにあたり今までは俺が直接スカウトしてきたわけだが、さすがに知り合いはそう多くなくてな。誰か推薦したい人がいるとか希望はあるか?」


 もちろん、将来のSランクギルドにふさわしい人物、という意味でだ。

 俺は運良く〈姫職〉を始めとした戦闘職メンバーに恵まれたが、そんな幸運が長続きするはずも無く知り合いは多くない。こればっかりは〈幸猫様〉に頼んでもダメだ。〈幸猫様〉に叶えてもらえるのはダンジョンの中だけなのだから。


 かなり厳しい条件かもしれないが、いなければいないで貴族の令嬢とかを紹介してもらうつもりだ。〈姫職〉をバンバン増やそうぜというプランだな。


 しかし意外な事に、問いかけに真っ先に反応したのはラナだった。マジで?


「2人ほど心当りが居るわ」


「2人もかよ!」


 こいつは驚いた。

 もし採用となれば合計8人。規定数にあと少しだ。


「とは言っても私の従者なのだけどね」


「エステルみたいな、ってことか?」


「そうよ。エステルは護衛。他の従者はまた別の役割があるのだけど、ほら私って王女じゃない? 生半可な従者は付けられないっていうか、ね?」


 ね? じゃねぇし。

 しかし、言いたい事は分かった。確かにそりゃ期待が持てるな。


「ラナって王女だったの?」


「カルア知らなかったの!?」


 自分の事を知らない人はいないと思っている系王女様がカルアの発言にビビっていた。


「話の途中だからその話は後でな。それで、ギルドには入ってもらえるのか?」


「うん? まあね。私が頼めば入ってくれるはずよ。何しろ私の従者だもの!」


「オーケー。とりあえず面接したい。一度会わせてもらえるか?」


「いいわよ。話をしておくわ」




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