第41話 二の腕に『直感』! マリー先輩から無言の圧力
「まいど……」
「こちらこそありがとうだ。今回は無理言って悪かった。今度はミール貯めて買い物に来るよ」
『サブクエスト〈注文素材を納品せよ〉を達成しました』
寡黙な先輩に依頼の素材をきっかり納品し、さらに溢れた素材も多く買い取ってもらえた。
合計38万2千ミールになった。半分の19万1千ミールはハンナに山分けし、店を後にする。
次にマリー先輩の店に行き、再び手に入れてきた素材を、ハンナが使いたいと言った素材を抜いて全部渡す。
そして前回〈熱帯の森林ダンジョン〉素材で売れず余った素材を回収した。
査定額は、やはりボスモンスター素材がなかなかに良い金額になっている。212万ミールで買い取りとなった。
この世界ではボス周回と言えば一度入口に転移して入り直すしか無い。
故にボス素材は雑魚モンスターの素材よりかなり高めに取引されているんだ。
今回は初の100万ミール超えだ。日本円でも100万円の収入と同じである。
学生手帳に入金というところが少し味気ないが、やはり金額を見るとニヤけてしまうな!
「125万ミール……」
一方ハンナはその金額に呆然として見つめていた。
ハンナなら諸手を挙げて喜ぶんじゃないかと思っていたので意外だ。わりと貧乏な家庭で素材もカツカツの中育ったらしいハンナは、一日で100万ミールの収入を得て何を思っているのだろう。
「しゅごい…、お金…、しゅごい…。ふひぃ…」
おっとパンクした。少し慌ててハンナの身体を支える。
――ふよんっ。
二の腕付近に『直感』!
む! あれ? こいつ、わりと胸あるぞ!?
支えている腕に伝わる、何か柔らかい物が潰れる感触に驚愕した。
潰れるほど、ある、だとっ!?
「はっ!?」
瞬間、さらに『直感』が――、今度は危機的な感じがして慌てて振り向くと、表情が抜け落ちたマリー先輩と目が合った。
「…………」
「…………」
無言。
何かを訴えているような目がとても心臓に悪い。
やばい、目線が下に向かってしまいそうでとてもヤバい。
今視線を下げたら抹殺される!
とりあえずニコリと笑ってごまかす! 上手く笑えている気がしないのが辛い…。
「う…、ん。ゼフィルス君?」
「おお! ハンナ大丈夫だったか? 大丈夫だよな! 自分で立てるな、良し立て」
「ふえ? なに、なに、なにっ!?」
無言の圧力に苦しんでいたところにようやくハンナが戻ってきた。
ガシッと肩を掴んで無理矢理立たせてやる。
「ミール見たくらいで意識飛ばすなよ! 危うく俺が抹殺されるかもしれなかったんだぞ!」
「ふえぇぇ、なんのことぉぉ!?」
大きく揺さぶって言い聞かせた事でハンナが目を回したが、なんとか勢いでこの空気を変えることが出来た。
しかし、驚くばかりであの感触をあまり憶えてないのがとても悔しかった…。
「あ、マリー先輩、次の〈静水の地下ダンジョン〉が終わったら
「ええ! もう
「いや、クリアしたら
「ああ~。そか」
俺の目標を告げるとマリー先輩は露骨にがっかりした。
普通ならレベリングとかするので1年生はしばらく
そしたらもう用済み。次のステップに進むのは当然だ。
素材集めなんかも
さらにステップアップの理由の一つとしてギルドの立ち上げがある。
なんども話に登場しているギルドだが、今まではとある理由によりギルドを作ることが出来なかった。
ギルドを作成する条件は、
①リーダーが
以上である。
まあ、ハッキリ言って、全部未達成だ。
まず
というか、そっちはすぐにクリア出来そうだと思って放置していたというのが正しいか。
そして、もうすぐ
「メンバーは決めてるん?」
「いや、まったく。とりあえず1年生の知り合いとかあたる予定だ。最初は1年生で固めたいからな」
「あー、そか、上級生が出張ってきたらギルド乗っ取られるかもしれへんかんなぁ」
俺みたいな優良職が自分のギルドを立ち上げると、上級生が加入してくる場合がある。
当然、上級生の方がレベルは高いし、能力もあるのでリーダーをどっちが務めた方が良いか、という壁にぶち当たり、場合によっては最悪、ギルドが乗っ取られることもある。
これはある種のテクニックで、高位ランクのギルドが下部組織を手に入れる時なんかに使う手でもある。
自分の手駒をあえて下級生のギルドに送り込み、乗っ取ってギルドメンバーごと配下に加える、というやり方だな。
ちなみに学園側はあまりに人権を蔑ろにしている時以外は介入してこない。ほどほどなら学園も暗に認めているということだ。
ゲーム的にも、主人公であるプレイヤーが行動するまで学園は何もしないが基本だったしな。勝手に対処されるとイベントが潰れてしまう。
まあ、例外はある。やり過ぎと判断されれば当然学園も出張ってくるからな。たまに学園ニュースとかに報道されたりする。
マリー先輩にギルド作りを本格的に進める方針というのを伝え、今日はそのまま解散した。
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