第40話 廃鉱ダンジョンでボスを相手に掘りまくれ!




「え~いやこ~ら♪」


 ザッシュ! ザッシュ!


「さっさと出てこ~やよっと♪」


 ザッシュ! ザッシュ!



 リズム良く壁にピッケルを打ち立てる音が鳴る。

 現在〈石橋の廃坑ダンジョン〉9階層出口前にて最後の発掘ポイントで採掘中だ。


 なんとなく歌ってるのは気分だ。

 こんな場所でピッケル振るってると無性に音楽が欲しくなった。

 だれかBGMください。学園のスマホにはBGM機能が無いんです。





「結構集まったな」


「うん。ここ本当に廃坑なの? すっごい出るけど」


 ハンナが山のように積まれた素材を見て目を丸くしながら言った。


「そりゃ、ここはダンジョンだからな。枯れたとしても時間が経てば勝手に復活してるからいくらでも掘れるんだよ」


「それ廃坑じゃないんじゃ」


 ハンナが小さな事を気にしているが名前は開発陣が決めていたので俺は知らない。


 とりあえず、廃坑でも素材は掘れるんだ、なら他はどうでもいいだろ?


 とはいえ、今回大量に素材を採集できたのは、初級下位ショッカーで最近誰も掘らないからというのもあるが、採掘ポイントが優秀という理由もある。


 基本的に採集が目的なら一層目から掘って進んでいく。そして満足したら、バッグがいっぱいになったら帰る。モンスターとたくさん戦ってまで奥の採取ポイントを目指すやつはあまりいない。

 そのため、奥の採集ポイントはあまり手がつけられていない場合が多い。

 〈ダン活〉ではそんな設定のもと、奥のほうが採集の取得率が高かった。


 それはこの世界リアルでも同じらしい。



 ちなみに採集とは、モンスタードロップとは異なり、採集ポイントに対応したスキルを使って素材を得る事だ。

 〈石橋の廃坑ダンジョン〉なら採集ポイントで『発掘』スキルを使えば素材が取れるわけだ。


 雑魚モンスタードロップは依頼の規定値に届いているし、発掘も終わったため、最後はボスドロップだな。


 実は、ボスはすでに周回している。

 最初に最奥ここに着いたとき、まずボスに挑んだからだ。


 俺の現在MPは最大200。

 〈真魂のネックレス〉に付与されている『MP自動回復LV1』のおかげで、MPが15回復するのに20分ですむようになったのは大きく、一時間半の周回ですでに14回ボスを倒している。

 【勇者LV17】に上がったおかげでボスも一戦6分前後まで時間が短縮したのも大きい。


 そしてMPが切れた後はこうして9階層出口付近にある採集ポイントを『発掘』しつつMPが自然に回復するのを待つ。

 そうすれば、また効率よくボスドロップを集められるからな。


 時刻は16時を回ったところだ。そろそろ最後締めのボス周回に向かってもいい頃だろう。


「よし、これ詰め終わったらボス狩りに行くか」


「う、うん。うわぁ、思ったより大変そうだよこれ」


 まあ、掘れるだけ掘ったからな。

 規定分を遥かに超える量だ。こりゃミールは期待できるぜ。


 二人ですべてハンナの〈空間収納鞄アイテムバッグ(容量:大)〉に詰め込んでいく。

 空間収納鞄アイテムバッグ類は重さも変わらないため、発掘品のように重たいものでも難なく大量に持ち運べる。

 便利なもんだ。


 しばらくしてやっと詰め込み終わると10階層へ向かった。



 〈石橋の廃坑ダンジョン〉は洞窟型ダンジョンだ。

 名前のとおり、石橋のような地面の坑道が広がっている。

 中は動石ゴーレムなどが徘徊しているだけあって道幅はなかなかに広い。

 道路でいう四車線くらいはあるかもしれない。


 ボス部屋はそんな道の延長線上にあった。

 部屋というより道という印象の方が強い。

 境にある門が無ければ誰もボス部屋とは思わないだろう。


 そして中央に鎮座する〈石橋の廃坑ダンジョン〉のボス。

 名前は〈アーマーゴーレム〉。

 上半身がすべて鉄のプレートで覆われた体長2mほどの動石ゴーレムだ。

 昨日の〈クマアリクイ〉みたいなネタっぽい奴じゃなく、かなり普通な感じのボスだな。


「さーて、帰ってきました。ボス周回再開だ!」


「うん。ゼフィルス君がんばってねー」


 ちなみにハンナは救済場所セーフティエリアで見学だ。

 少し前に【錬金術師LV20】になったので、初級下位ショッカーではこれ以上LVが上がらなくなってしまったためだ。

 まあ『アピールLV5』分のMPを節約できるため文句は無い。


 この〈アーマーゴーレム〉は、見た目硬くて強そうに見えるけれど、弱点があってむちゃくちゃ弱いからソロでも余裕なんだ。



 ガシャンガシャンいいながら〈アーマーゴーレム〉が駆けてきたので、すり抜けながら脚を斬り付けると、バランスを崩してダイブぎみに倒れた。


 これが〈アーマーゴーレム〉の弱点。上半身が重過ぎるのに走るもんだから何かに脚をかけられるとすっ転ぶのだ。

 ゲーム時代は走り出した時にどこでもいいから攻撃すれば転んだが、リアルだと脚に攻撃しないと転んでくれないのが少しネックだ。

 最初少し手間取ったが、すり抜けながら斬るという技ができるようになってからはカモになったな。


 倒れた〈アーマーゴーレム〉を斬りつけ、起き上がったら距離をとって、走ってきたら転ばせてのループで後は作業だった。上半身が重いから起き上がるのに時間が掛かるため、その間ずっと通常攻撃出来るのがいいな。大体5ループくらいやると宝箱になるんだ。


 倒れたボスに、ザッシュ、ザッシュ! なんかここでも鉱山を掘っている気分にさせられる!


 こうして追加で6回ボス周回して、今日のダンジョン攻略を終える事にした。


 今回の宝箱は「木箱」18個、「銀箱」2個だった。銀箱率が辛い。今回はレアドロップも微妙だった。

 前回が良すぎたんだな。でも20ボス周回して当り無しは辛い。

 しかし「金箱」は全然来ないな。まあ確率自体がかなり低めなので次に期待したい。


 でもレベルは【勇者LV18】に上がったので良しとしよう。




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