第11話 ネタジョブ筆頭【筋肉戦士】その1




 SUPステータスアップポイント

 レベルが上がった時に貰えるポイントの事で、〈ダン活〉ではこれを使ってステータスビルドに振り分けが出来る仕様だった。


 【筋肉戦士】だと1レベル上がるごとにSUPステータスアップポイント23Pを獲得出来る。

 SUPステータスアップポイントは各ジョブごとに貰える数値が違う、【筋肉戦士】の23Pというのは下級職全ての職業の中でもトップにあたる。

 非常に優秀な数値だ。


 例えば【剣士】のSUPステータスアップポイントは12Pだ。これはステータスを合計で12上昇させることができるということ。差は歴然だな。


 さらに〈ダン活〉は各職業ジョブに必ず1つ〈ユニークスキル〉が搭載されていた。

 これはあまりの職業ジョブの多さからスキルの「かぶり」や「上位互換」「下位互換」「名前違うけど効果は同じ」などが大量にあったために、各職業ジョブに特色を出したいという開発者の涙ぐましい努力の結晶だ。


 そして【筋肉戦士】のユニークスキル『筋肉こそ最強。他は要らねぇ』は装備していないほどステータスが割合上昇する。装備が揃ってない初期ではかなり使える能力であるのは間違いないが…。マッチョの裸族は使いたくねぇ。


 ちなみにそれ以外にスキルをまったく持っていないので完全にステータス特化仕様だ。

 まあ、そのステータスに騙されて主力メンバーに加えたは良いが、後半にまったく使えなくなってチェンジされる筆頭でもあるのだが。


 長くなったが、そんなわけで先に進みたいなら【筋肉戦士】は獲得するのをやめた方が良い。

 だからこそ、何故あんなに歓声が上がるのか分からなかった。


 ……いや、待てよ? シエラはさっきなんて言った?


「ちょっと待て、さっきさらっと否定したけど、【筋肉戦士】は優良職って言ったか?」


「ええ」


「……だとするともしかして、他にもいる?」


「……その、人気職にあたるわ」


「嘘だろ?」


「私も聞いたことあります。昨日なんか〈筋肉は最強だ〉ギルドという人たちから【筋肉戦士】にならないかとお誘いもありました」


「そいつら今すぐ連れてこい、ぶっ潰してやる!」


「ふぇ、こ、断りましたから大丈夫ですよぉ」


 ハンナをムキムキのアマゾネスにしようとした輩がいると聞いて後でしばくと決める。


 いや違う。

 問題なのはこの世界、リアル〈ダン活〉では【筋肉戦士】が優良職と呼ばれている事だ。


「なあシエラ、一つ訊きたいんだが」


「何かしら?」


「上級ダンジョンって攻略されてるよな?」


 【筋肉戦士】が主力になれるのは中級までだった。

 たとえ【筋肉戦士】の上級職【鋼鉄筋戦士こうてつきんせんし】であっても上級ダンジョンになると状態異常攻撃や環境対策がやたら増えるためについていくのが困難になる。

 そして〈ダン活〉のダンジョンは最上級ダンジョンまであった。


 はたしてシエラの回答は。


「……上級下位までなら」


「! それは【鋼鉄筋戦士こうてつきんせんし】も?」


「ええ。攻略メンバーの一人だったみたいよ」


 マジかよ。

 信じたくねぇ。悪夢だなそりゃ。



 でもこれで分かった。


 【筋肉戦士】が優良職と言われているのも、それを疑問視していないのも納得がいった。


 ダンジョンの攻略が進んでないのもそのせいだろう絶対。


「はは、ハハハハハ!」


「ゼフィルス君?」


「ちょっと、どうしたのよ」


 ハンナは心配そうに、シエラは訝しげに見つめてくる。

 だが笑わずにはいられるだろうか?

 この世界、色々わかってないぞ。


 それはつまり〈ダン活〉を全然知らないということに他ならない。

 こんな面白い世界を、〈ダン活〉を、何も知らないだと?

 そいつはあんまりだ。実に勿体ない。


 俺の中に漠然とした目標みたいな物が出来たのはおそらくこの時だろう。

 今までリアル〈ダン活〉を楽しむことしか気にしていなかったが、目的が出来た。


 この世界の人に、教えてやる。

 この世界がいかに面白いかを。

 〈ダン活〉がどんな世界かを。


 もうちっぽけな攻略は終わりだ。


 今後は俺が、〈ダン活〉の全てを見せてやる。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る