第10話 シエラ
体育館でジョブ計測の途中にネタジョブに走った奴がいて思わず叫んじまったら、見るからに育ちの良さそうな美少女に話しかけられてしまった。
ちなみに多分怒ってる。
「いや、悪かった。余りにもありえなかったから、つい……」
「……はぁ。まあ、いいわ。入学で浮かれるのも少しは分かるから。でも、いきなり叫ばないでよ、びっくりするじゃない」
「いやあ、面目ない。気をつけるよ」
自分でも迷惑掛けたと思ったので素直に謝ると、美少女は少しだけしょうがないなみたいな空気を出して許してくれた。
なかなか懐の大きい奴である。
「? 何よ」
しかし改めて視るととんでもない美少女だというのが分かる。
美しくツヤきらめくブロンドの髪を腰まで伸ばしたストレートヘアに明るい青色の瞳がとても良い。
しぐさ一つ一つが気品にあふれている、しかし近づきがたい雰囲気は無くやや砕けた口調でしゃべりやすく感じた。
身長は平均くらいか。ハンナと比べるまでもない。なんというかモデル体型であった。
「こんな美少女お目にかかったことがなくてな。ちょっと見惚れてた」
「そう。よく言われるわ」
「そうだろうなぁ」
思わずキザったらしい言葉が出てしまったが、これだけ美少女だと褒められ慣れているんだろう。あまり動じた様子はない。
「ねえ、それよりさっき言っていたことだけど、ありえないって何がありえないの?」
「あ、それ私も気になってました」
美少女は美少女で気になることがあったのか例のアレについて聞いてくる、と今までこちらの様子だけ窺っていたハンナも食いついてきた。
「あら、あなたは?」
「あ、すみません割り込んでしまって。私はハンナといいます。〈ダンジョン生産専攻・錬金術課〉を目指しています。学園にはゼフィルス君と一緒に来ました」
「ゼフィルス?」
「俺の名前。〈ダンジョン
「よろしく。同じく〈ダンジョン
「シエラさんよろしくお願いしますね」
ハンナがきっかけになって互いに自己紹介をする。
俺は彼女のとあるシンボルを確認して伯爵家の娘である事を看破した。
〈ダン活〉では貴族などの「人種」はシンボルを持っている。
それを確認出来れば相手が貴族と分かる仕様だった。それはリアルになっても同じらしい。
しかしハンナは、多分気がついてないなこりゃ。
まあ、その方が仲良くなれるだろう。
向こうもそのつもりみたいだし。
しかし、戦闘課でタンク担当を目指しているとは、ちょっと意外だな。
これだけの美少女が戦闘課なんて…。いや、〈ダン活〉は割と可愛い女の子や美少女でも戦闘するゲームだったな。
なら、平常運転か。なんかリアルだと異常に見えるから不思議だぜ。
あとゲームの〈ダン活〉では見たことないキャラなんだよなぁ。シエラという名前にも聞き覚えはなかった。これだけ美少女なら絶対覚えがあるはずなんだけど。スカウトキャラなのかな?
「それで、先ほどの話だけど」
「あ、そうだった。ゼフィルス君が叫ぶって相当だよね。【筋肉戦士】だっけ? なんでありえないの?」
「ああ、俺にとって【筋肉戦士】になるのはよっぽどの物好きか変態だけって認識だったんだよ」
俺の発言にシエラが眉をひそめた。
「……優良職と聞いたのだけど…」
「そりゃあきらかな間違いだな。確かに
「ほえぇ…」
「……初耳だわ」
俺の説明に感心したようなハンナと難しい顔をするシエラが対照的だ。
というか俺の中では半ば常識となっていたりするんだが、逆に何故二人は知らないんだ?
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