第9話 ジョブ測定とネタジョブ
〈ダン活〉を進める上で重要なジョブを早くもスカウト出来たことに俺が内心ガッツポーズをとっていると、ハンナが何かに気がついたように口を開いた。
「でも、ちゃんと【錬金術師】になれるか分からないよ? 選択授業に出たって必ず発現条件を満たせるわけじゃないみたいだし。才能に恵まれてなければ一生発現しない事もあるらしいし」
「ああ」
言われて確かそんな設定あったなと思い出す。
この世界では、膨大なジョブとその発現条件は全てが解明されているわけではない。故に今までの統計を元に授業を組んでいるに過ぎないため発現条件を満たすのは個人差がある。とかなんとか。
発現条件が具体的に分かっていないから無駄に一ヶ月も選択授業をして発現確率を高めているというわけだな。
ゲーム発売当初、ユーザーに手探りでジョブの発現条件を探ってほしい開発者が考えた粋な設定だったはずだ。
俺も他のユーザーたちものめり込んでジョブ条件を探らせてもらったものだ。某攻略掲示板が毎日賑わっていたっけ。楽しかったなぁ。
まあつまりはだ、俺が条件知っているのでなんの問題も無いということだな。
「安心しろ。【錬金術師】の条件はすでに満たしているから」
「どうしてそんな事分かるの?」
「だってハンナ、むっちゃスライム量産したじゃん」
「ほえ?」
【錬金術師】の発現条件は〈①『錬金』スキルを2000回発動。②同じ品を100個量産。③
スラリポやれば簡単に達成可能な条件なのでハンナはすでに条件を満たしているはずだ。
と話しているうちに次のイベント、ジョブ計測が始まるようだ。
学園の教師と思われる人たちが直径30cmほどの〈竜の像〉を持ち込んでいる。
アレにタッチしながら念を込めると現在自分が発現させたジョブが一覧になって現れるのだ。
入学した一年生は一度自分のジョブを確認し、希望のジョブが無ければ選択授業を受ける。
希望のジョブがあればその場で獲得し、一ヶ月授業免除だ。
一ヶ月授業免除とか素敵な響きだな!
とはいえ一生を左右する大事な決め事なので期限ギリギリまで決めない生徒が大半らしい。
「ちょうど良かった。ハンナ計測してみな。絶対【錬金術師】
「ええ? 私、確かに店でも『錬金』のお手伝いしていたけど授業受けてないからまだ【錬金術師】は発現してないと思うよ?」
「別に授業受けなければ
「そうだけど、【剣士】みたいな低位職と中位職の【錬金術師】だと難易度が桁違いだよぉ」
「いいから行けって。どうせやるんだからここで否定してもしかたないだろ」
そう言ってハンナを押して計測待ちの列に並んだ。
すでにすんごいたくさんの人が並んでいる。
計測竜は100体以上あるっぽいにも関わらず生徒数が多いので、これはなかなか時間が掛かりそうだ。
しばらくハンナとおしゃべりしながら時間を潰していると体育館にワッと歓声が鳴り響いた。
ちょうど隣の列の先頭からだ。
「なんだろう今の」
「こりゃ、誰かが当りを掴んだな」
「当り?」
当りとは所謂レアジョブの事である。
条件が特殊で達成しづらいうえに大抵強ジョブの高位職に分類されるため誰もが憧れる、栄光への道しるべ。
当れば生まれが平民だろうが、国に仕えることも、貴族になることだって出来るかもしれない誰もが羨む羨望のジョブ。
さて、今回は何が当ったのかな?
【剣士】の最上位職【大剣豪】か? それとも【神官】の最上位職【司祭】か? それとも【魔法使い】の最上位【大魔道士】か?
他にもつらつら候補が頭を掠める中、次に聞こえたのは俺のまったく予想だにしないジョブの名前だった。
「やったぞ! 【筋肉戦士】が出たぞぉぉーーーーっ!!!」
「【
驚きびっくらこいて思わず叫んでしまった。
前に居たハンナと後ろに並んでいた気品ある美少女がつられてビクッとする。
す、すまない。
しかし、仕方なかったんだ。マジで。
ていうかなんで【
俺の感覚からすると【
確かにステータスはぶっちぎりで高かったが、装備を付けないほど能力が上がる仕様とスキルがしょぼすぎて、後半には使い物にならなくなる残念職である。
また、装備を付けないので筋肉ムキムキのマッチョメンがほぼ裸族になって戦うビジュアルも地味に…、いやすごくキツかった。
しかしながら、公式ステータス部門ランキングでは堂々の一位に輝く実力はあった。同時に非公式ネタジョブランキングでも堂々一位であり二冠達成ジョブとしても名高い。
だから騒がれてるのか? いやいやそんなわけは無い。【筋肉戦士】はネタであってレアではない。
世界がリアルに成り、一生を左右する人生のパートナーをネタに走る奴など居るわけが―――。
「俺は【筋肉戦士】になるぞーーー!!」
「って居たーーー!!!?」
二度目の驚きびっくらにまた叫んだ。魂の叫びだった。
正気かよ!?
いやごめん。お二人さんすまなかったって。
ジトッとした目で無言の圧力を掛けてくるハンナからそっと顔を逸らすと、後ろに並んでいた気品ある美少女と目が合い。
「ねえ、さっきから騒がしいんだけど」
少し怒った口調で話しかけてきた。
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