第8話 迷宮学園~入学式~
学園に到着した翌日、入学式が始まった。
ここ迷宮学園は、ジョブを獲得し、ジョブを学び、ジョブを使いこなすために通う、学び舎である。
そして、ここで学んだことを将来に生かし、取得したジョブと
しかし、すぐにジョブを獲得できるわけではない。
〈ダン活〉の
つまり、自分の取得したい
今後一生を左右するジョブ選択なので妥協は一切しない。
というより出来ない。
誰もがこのジョブ選択に一生を賭ける。
寄り道でもしたら他の
一度選択したら、あとは振り向かず一直線に進むのみだ。
さて、まず一般の学生がこの学園に入学して最初に行うことは、ジョブの発現条件を満たすことである。
期限は一ヶ月。その期間に共通授業は無く、すべてが選択授業となる。
一ヶ月を過ぎればジョブ毎の専攻クラスに再編成され学園生活が本格的にスタートされる仕組みだ。
生徒たちはこの一ヶ月、死に物狂いでなんとか良いジョブを取得しようと躍起になるのだ。
そんな仕組みが入学式の体育館で説明された。
壇上でそれを丁寧に説明してくれるのは、サンタと見間違えるほど白い髭をたっぷり伸ばした、がっちりとした体型のご老公。
この〈国立ダンジョン探索支援学園・本校〉の学園長だ。
俺が学生の頃は校長先生の話なんて右から左へスルートンネルだったが、不思議と〈ダン活〉の説明には耳を傾けてしまう。
それがすべて知っていることでさえなんか楽しい。
不思議だなぁ。
さて、入学式が終わりハンナと合流する。
「ゼフィルス君はどこの専攻にするか決めてるの?」
開口一番、ハンナが不安そうに切り出した。
「ああ。俺は〈ダンジョン
「そ、そうなんだ。…そうだよね」
「そういうハンナはどこ行くつもりだ?」
「私は〈ダンジョン
あー、なんとなくハンナが憂いている理由を察する。
「ああ、探索と生産じゃ校舎自体違うもんな。寮も男女別だし、そう気軽には会えなくなるな」
「…うん」
この迷宮学園は広い。
それはもうムチャンコ広い。
16歳になった若者が必ず通わなくてはいけないという法律の下、様々な場所でこういう機関があるのだが、その中でも本校がダントツでダンジョンの数が豊富で、学び舎の質も高く、優秀な卒業生を毎年輩出する国一番の学園と名高い。
当然人気が高く、ここを希望する若者は数多い。
自然と学び舎は大きくなり、収容人数2万人というマンモス校へ仕上がってしまった。
その弊害で、こうして専攻が違うと気軽に会えなくなってしまうことも多い。
同じ敷地内なのに。
「ま、会いに行こうと思えば会えるさ。それこそ、パーティでも組めばいい」
「え?」
俺の提案に心底意図が分からないという風に首をかしげるハンナ。
「錬金術課ってことは【錬金術師】のジョブ、目指してるんだろ?」
「え、うん」
「なら一緒にパーティ組んでダンジョン行けば良いだろ?」
「いや、え? でも私、生産職だよ?」
「生産職だってダンジョンに潜るだろ。別に普通のことだ」
「いやいや!? ダンジョンって危険がいっぱいなんだよ!? 戦闘能力が低い生産職じゃダンジョンなんて無理だよ!」
「まあ後半は無理だな。範囲攻撃でも食らえば防御しててもやられるし」
「でしょ!」
「だが、最初なら割と行ける」
「ほえ?」
何しろ最初はソロでも攻略が可能な難易度だからな。
俺がカバーすれば生産職だろうが余裕だろう。
というより【錬金術師】なら最初の頃は錬金素材回収のためにダンジョンに潜った方が良い。素材を買うにはお金が掛かるし自分で集めた方が効率も資金的にも都合が良い。
ダンジョンが怖いから行かないなんて言えるのは金持ちかスポンサーが付いている【錬金術師】くらいなものだろう。
ハンナはただの村娘なので自分の素材は自分で稼がないとな。
「ということでパーティ結成だ」
「何が? 何がということでなの!? 強引すぎるよゼフィルス君!?」
「じゃあハンナは俺とパーティ組むの嫌なのか?」
「うっ………。べ、別にいやと言うわけじゃ。ううっ、そ、その聞き方は少し卑怯だと思う」
「ハハハ、じゃあ異論は無いということで、よろしくな。ハンナ」
「うーん、なんか騙された気がするけど、よろしく。ゼフィルス君」
結構強引にだったが、無事パーティメンバーをゲット出来た。
やったぜ。【錬金術師】は今後も含めて絶対欲しかったんだ。
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