第11話 わたしで良ければ
山里君の突然の告白から1週間が過ぎた。
正直なんて返事したらいいのかよくわからない。
周りの友達に聞いても春姫や千歳が言っていた通りで、山里君って凄く評判も良くて悪く言ってる人が居ない。
私にも優しかったし、春姫や千歳も"OKしちゃいなよ"って言ってるけどさ。
いい人過ぎてほんと私でいいのって感じで・・・。
でも・・・あんまり引っ張るのも失礼だよね。
「どうしたの萌?急に黙り込んじゃって」
「あ、何でもない。ちょっと考え事」
「ふ~ん」
部活帰り、今日も佐和とラウムで軽食を食べている。
部活終わりはお腹が空くのですよ。
ちなみに佐和とは雄二の事もあってちょっとギクシャクもしたけど今は前みたいな関係に戻っていた。
佐和としては気まずいところもあったんだろうけど私が雄二との関係を割り切って、今まで通り"幼馴染"な関係で接する様にしたからだろうけどね。
正直色々と思うところはあったけど雄二が私に恋愛感情が無いってわかっても今までの関係がゼロになるわけじゃない。
異性として意識したことが無いって言われたときはショックだったし悲しかった。あの晩は正直泣いた。
でも・・・このまま疎遠になっちゃうのはもっと寂しいから。
だから雄二とも出来るだけ普通に接しているし、雄二も今迄みたいに話しかけてくれるようになってきた。
流石に朝2人で学校に行くのは気まずくてやめたけど。
「それより雄二とはその後どうなの?前にデート誘われてたでしょ?」
「え!?日吉君?う~ん。前より話をする様にはなったと思うけど、デートは・・・具体的な話は出てないなぁ」
「全く。。。折角自分から誘ったと思ったけど駄目じゃん」
「・・・多分部活とかで忙しいんだよ」
「そうかもだけどさ・・・でもさ、実際のところどうなの佐和は」
「わ わたし?」
「前に私に言ってたでしょ好きになって来たかもって」
「そ それは・・・言ったけどさ」
「もう私に遠慮すること無いんだよ?それに佐和が雄二の彼女なら私も安心だし」
「萌・・・うん。そうだね。今度デートの事聞いてみるよ」
「それが良いよ」
それにしても佐和はともかく、雄二だよね。
佐和にこんな気を遣わせるとか何考えてんだろ。
まぁ・・・私も人の事は言えないかもしれないけど。
「じゃね萌」
「うん。また明日!」
そんなことも思いつつ、いつの間にか結構遅い時間になってしまったので会計を済ませこの日は解散となりそれぞれの家路についた。
「バス・・・行ったばっかりか。しばらく待ちそうだなぁ~」
川野辺駅前のバス停で時刻表を見ると川北までのバスまでには30分近く間があった。下校時間はバスの本数も多いけどこの時間は本数も少ないのよね。
こういう時は家が近い佐和達川野中出身の人達が羨ましい。
「仕方ない。また歩くか」
そう思いバス通り沿いを歩き始める。
川野辺駅前の商店街を抜け国道沿いの道に出る。裏道を通れば近道にはなるけど街灯も少ないし夜は怖いしね。
車の行き交う中、歩道を1人歩いていると
「「あ!!」」
「石橋」
「山里君」
自転車に乗った山里君に声を掛けられた。
何だかこのシチュエーション多いな。
「どうしたのこんな遅い時間に」
「あ、部活の後に例の親戚の家に用事があって今帰りなんだ。
それより石橋は?」
「う うん。私は部活の後、佐和とご飯食べてて遅くなっちゃって」
「そっか。あ、あの良かったらだけどさ一緒に帰っていいかな?ほら夜だし物騒だろ?」
うわぁ~山里君優しい。
雄二だったら絶対こんなこと言わないよね。
「う うん。迷惑じゃなければ・・・お願いします」
「あぁじゃ行こうか。それ荷物自転車のかごに入れていいよ。重いでしょ」
「ありがとう♪」
そう言いながら山里君は私が持っていた鞄を自転車のかごに入れて私の横を歩き始めた。もちろん山里君が車道側。
小さな気配りが何だか嬉しい。
男の人にこういうことされるって初めてかも。
「「・・・・」」
何を話すでもなく2人で並んで歩道を歩く。
でも・・・嫌じゃないな。この感じ。
「ん?どうかした?」
「あ、な なんでもない」
ふと山里君の方を見ると目が合ってしまった。
あらためて見てもカッコいいし、目を合わせながら微笑んでくるとか反則でしょ。
何だか照れてしまって多分この時の私は顔を赤くしてたんじゃないかと思う。
「あ、私の家こっちなんだけど、確か山里君ってバス通り沿いだよね。ここで大丈夫だよ」
「そ そうか?じゃぁ・・・そのまた明日」
「うん。今日はありがとう」
「あ、 あのさ・・・この間の件。急がないから・・・待ってるからさ」
山里君・・・そうだよね・・・私も・・・一歩踏み出そう。
「あ あのさ山里君。わ 私で良ければ」
「え?」
「私で良ければ。お付き合いしてください!!」
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