第8話 僕じゃ駄目?

翌日。

いつも通りに学校に行くと部活を休んだということで佐和が心配して会いに来てくれた。


「萌・・・その昨日・・・日吉君と何かあったの?」

「なんで?」

「だって、萌が部活を休むなんて・・・」

「はは 私だって体調悪いときとかあるし部活だって休むよ。だから大丈夫だよ」

「ほんと?」


そう言いながら佐和が私の目を見てくる。

う、、、言わなきゃダメな感じかな。


「言わなきゃ駄目?」

「ダ~メ。友達でしょ?」


友達ならそっとしておいて欲しいところでもあるんだけどな。

そう思いながらも私は昨日の朝の出来事を佐和に話した。


「そういうわけで。告白する前にフラれちゃった」

「・・・ごめん。私が余計なこと言わなければ・・・」


辛そうな顔で佐和が私に謝ってきた。

いや別に佐和が悪いわけじゃないし。


「あ、佐和が気にすることじゃないよ。何となく予想は出来てたし、それにタイミングが今だっただけで雄二の気持ちを聞くことは出来たんだから」


昨日あれから考えたけど雄二は私の事を異性として見てくれていなかった。

そう言うことなんだよね。


「でも・・・」

「もういいの。この話は。だから佐和も私に遠慮しなくていいんだからね♪

 言ってたでしょ?雄二の事が好きになってきちゃったって」

「あ・・・」

「だからね。雄二と仲良くしてあげて。私応援するって言っちゃったし」

「・・・ありがとう。萌」


これでいいんだ。

雄二も佐和も大切な友達なんだし。



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そして放課後。

何だか暗い顔をしていた私を春姫と千歳がカラオケに誘ってくれた。

最初は佐和にも声は掛けたんだけど"私が居ると気まずいだろうから"と1人で先に帰ってしまった。

朝、色々と話はしたものの私に告白するよう発破をかけたことをやっぱり気にしているみたいなんだよね。

ほんと、気にしなくて大丈夫なのに。


川野辺駅前にあるカラオケ店は、何度かみんなで行ったことのある馴染みの店だ。正直歌はそんなに得意じゃないから、普段は聞いてる方が多いんだけど何だかむしゃくしゃしてたし、この日はたっぷり歌わせていただきましたよ。

ほんと、大声で歌ったせいか春姫や千歳に色々と愚痴を聞いてもらったせいか少し気持ちも楽になった気がした。


「じゃね春姫、千歳。今日はありがとね」

「うん。その・・・元気出してね」

「ありがとう♪大丈夫だよ。また明日ね!」


カラオケを終えた私達は川野辺駅で別れた。

春姫と千歳は川野地区に住んでいるので私と家の方角が違うんだ。


「さて、帰るかな」


普段は駅前からバスで帰るんだけど今日はのんびりと歩いて帰ることにした。

暗くなるにはまだ少し早い夕暮れ時。

何となく1人で歩きたい気分だったんだよね。

・・・でも1人で歩いていると何だか寂しい気分になる。

そんな事を思いながら俯いて歩いていると突然後ろから声を掛けられた。


「石橋!」

「え?・・・山里君?」


昨日に続き山里君だ。よく会うなぁ~。

今日はまぁ方角的に帰宅途中なんだろうね。

山里君は乗っていた自転車を降りて私の横を歩き出した。


「どうしたの?自転車に乗ってたのに?」

「あぁ~ その・・・今日も散歩か?」

「え?あ、まぁそんなとこかな」


そういえば昨日は散歩してたって言ったんだっけ。

嘘だったけど・・・


「そっか」


そう言ったまま私の横で自転車を押しながら歩く山里君。

会話が続かない。

なんなのさ一体。


「何か私に用事?」

「・・・まぁ用事と言えば用事かな」

「何それ」

「・・・その・・・石橋が日吉と別れたって聞いたんだけど」


何処情報よそれ・・・って噂になってるの?

そもそも付き合ってたわけじゃないみたいなんだけど。


「雄二とは・・・そのただの幼馴染でそもそも付き合ってたってわけじゃ」

「そうなのか?普通に仲が良さそうだったからてっきり付き合ってるのかと」

「ま まぁ周りからはそう見えてたみたいだけど、実際はただの幼馴染なだけだよ。いいでしょそれで。それとも山里君に何か関係あるの?」


何だか自分でいいながら辛いな。。。

本当にただの幼馴染の関係だったんだもんね。

つい口調が強くなってしまった。

それにしても、それが山里君に何か関係があるの?


「・・・気を悪くしたらゴメン。

 その・・・もしよかったらだけど、僕と付き合ってくれないか?」

「・・・へ?」

「だから、僕の彼女になって欲しい」

「山里君の?」

「あぁ 前から石橋さんの事が好きだったんだ。

 本当は中学の頃に何度か告白しようと思ったんだけど隣に日吉が居たし。

 あいつって人気あったし、てっきり2人は付き合ってのかと思ってて」


私が雄二と"ただの"幼馴染だって事に関係なくなかったんだ。


展開についていけてないぞ私。

山里君ってそんなに話したことなかったけど、見た目もカッコ良いし、周りに気遣いも出来るし、確か成績も良くて・・・女子の中でも人気ある方だったはず。

そんな人が私の事が好き?え?なんで?


「だ 駄目とかそう言うのじゃないけど・・・私・・・でいいの?

 山里君って普通にモテそうだけど・・・」

「石橋さんがいいんだ」

「そ そうなんだ・・・・」

「僕じゃ駄目?」


え~と・・・・・

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